IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

特許「身近な特許(自分的に)」【MI】

前回に引き続き「趣味でドラムをやります」。前回、ペダルを売ってしまったので、また新しいのを買いました。TAMA(星野楽器)の「Speed Cobra」というやつです。

Speed Cobra 910 Twin Pedal HP910LWN | Drum Pedals | HARDWARE | PRODUCTS | TAMA Drums - TAMAドラム公式サイト

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(画像は上記webページの一部です。最終閲覧日;2020/8/26)

開封して説明書を見ていたら「US. PAT.・・・」との文字が。「さすが!しっかり特許取っている!」と感動したので、ひとつ紹介したいと思います。

 Speed Cobra 910 Twin Pedal HP910LWN | Drum Pedals | HARDWARE | PRODUCTS | TAMA Drums - TAMAドラム公式サイト

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(画像は上記webページの一部です。最終閲覧日;2020/8/26)

テキスト部分は以下の感じです。(太字化&下線は筆者追加)
Cobra Coil (US. PAT.NO.7408104)
コブラコイルは、踏み切る直前でフットボード裏側に触れる事で、踏み込みに影響を及ぼさずにフットボードの返りをアシストします。スプリング部は前後に移動可能で、当たり始める位置を微調整するとフットボードの返りの度合いを変更することができます。

確かに、このペダルにはフットボード(踏んづける板)の裏側にバネが仕込んであって、踏んだ後に元の位置に戻りやすいのが1つのセールスポイントになっています。その部分のことっぽい、、、

じゃあ、特許公報を詳しく見てみようか、、、と思ったんですが、「US. PAT.(米国特許)ってことは英語?!」。でも、調べたらちゃんと日本にも対応する特許がありまして一安心。特許第4459872号公報です。

特許第4459872号公報の【図1】

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おお、まさにコレだ!

特許請求の範囲(請求項)には、以下の記載がありました。(括弧内は筆者追記)
『前記第2付勢部材(上図中50、今回のバネ「Cobra Coil」)は、前記ベース(11)の前後方向(上図の左右方向)に沿ってスライド可能に、かつ前記ベース(11)の前後方向の位置を調節可能に装着され、・・・』

要は、単に「バネを付ける」だけではなく、「そのバネがスライドして位置調節できる」ということを含めて特許になっているんですね。それで跳ね返る力を調節できると。ドラムペダルのフットボード(上図の12)が斜めになっていることを利用したイイ特許です。

こんな感じで、身近な趣味の分野でもいろいろな特許があります。興味が湧いたら自身で確認してみるのも面白いですよ!

 

<余談その1>

今回ひとつ思ったのは、「なぜ書いてあるのがアメリカ特許の番号なんだ?」と。日本の特許もあるならその番号書いて欲しいなぁと思いました。その方が調べやすいし。楽器とかは「アメリカの方がカッコイイ!」ってイメージがあるのかな??

※特許は各国で独自に登録されて、番号が付けられます。繋がりのある特許は調べられるので、今回は「US. PAT.7408104」からたどっていって「特許第4459872号」を見つけました。ちなみにそれぞれ内容が異なる可能性もあります。「US. PAT.7408104」の内容はちゃんとその公報を見ないと分かりません(英語なので諦めました、、、)。

 

<余談その2>

特許というのは「請求項に書いてあることを全て含む製品に対して有効」というのが原則です。悪知恵が働く人(?!)はピンときたかもしれませんが、例えば、ペダルに「スライド不可能に」バネを付けるのは(少なくとも特許第4459872号の侵害に関しては)大丈夫ということになりそうです。

また、今回はTAMAさんのHPで、割と正確に特許の内容が宣伝されていました(「スプリング部は前後に移動可能で、・・・」と書いてあります)が、たまに大げさに(一部の構成に言及せずに)宣伝されることもあるので注意が必要です。例えば「バネ付けたこと自体が特許です!」のような感じです。ちゃんと公報を見れば分かるんですが。

そんな時は、「バネ付けたものはウチの特許だぜ!」「いやいや、ウチのバネはスライドできないからおたくの特許は侵害しないし!」・・・なんてやり取りが繰り広げられることになります。