IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

弁理士「弁理士試験合格後の進路~企業知財部に居続ける私の場合~」[YO]

「論文式筆記試験(必須科目)」がいよいよ明日となりました。受験される方、体調管理も忘れずに、最後の詰めを頑張ってください。

 

弁理士試験合格後の進路」シリーズですが、マータさん、KMさん、MIさんからバトンを引き継ぎ、最終回、YOの場合について書かせていただきます。

 

 

1.弁理士試験を受けたきっかけ

 

思い返してみると、大学院進学の時に弁理士試験を受けたきっかけがありました。

 

弁理士を知ったのは、大学受験浪人をしていた時でした。大手の某塾に通っており、某塾発行の進路の雑誌を見ていた時に、証明写真(5センチ×6センチ)を張るぐらいのスペースに幾つかの資格紹介がされていて、その中に弁理士がありました。法律と技術の専門家で、高い語学力も求められるとのことが淡々と記載されていたのですが、当時の私にとってはスーパーマンのように思えたことを今でも覚えています(社会に出て働いたこともなく、法律、技術、語学、どれをとっても使い物にならないレベルしかない浪人生からすれば、今から思えば、そうも見えるかなと思います)。

 

学部卒で就職しようと就職活動をしていたときに、上記のことがふと思い出されました。景気もよく内定をくれる企業もありましたが、本当に自分がやりたいことは何だろう、自分にとっての天職とはなんだろうと思い悩んでいました。それに、研究室での研究もいい結果がでてきて続けたい気持ちも残っているし・・・と悶々としていました。

 

スーパーマン弁理士)=天職と、私の頭の中で勝手につながりができ、そのとき進路が定まりました。就職活動をやめて、大学院進学へ進路を変更する。大学院で面白さが見えてきた研究も続けて、修士号を得て弁理士の論文(選択科目)の免除も狙う、そして、資格の学校とダブルスクールで大学院進学時点から弁理士試験の勉強を始めると、意気揚々となったのです。まっ、大学の期末試験と同じ要領でサクサクとやろうと(この考えが大いに甘かったのは言うまでもありませんが・・・)。

 

スーパーヒーローのイラスト

2.企業知財部に居続ける理由

 

 

当時通学していた大学には、知財の研究会があり、企業勤めのOB達と定期的に交流する機会がありました。そこでOBから、知財の仕事に就きたいなら、まずは企業知財部を目指せと言われたのです。知財業界が広く見渡せるから、その後の進路を変えてもいいんじゃないかと。なるほどと思い、それに従うことにしました。そして、企業知財部で勤め始め、居続けていますが、一応理由を持っているつもりです。

 

メーカーの知財部にいるので、休眠特許と呼ばれるものもたくさんある中、事業にとってどの特許権、特許出願が重要なのか理解して仕事をできるので、事業にどう活用されているのか知れるのも企業知財部に居続ける理由の一つかなと思います。

 

 

3.企業知財部に居るメリット

 ホワイト企業のイラスト

(1)情報源の多さ

 知的財産協会をはじめ、企業の所属する業界の業界団体から、知財に関する最新の情報が流れてきますし、各国の代理人からレクチャーも受けられます。量が多くてはっきりと言って、すべてを見ることはできないのですが、国ごとの特許法等の改正情報のレポートなど勉強になります。

 

(2)ワークライフバランス

 これは企業によりけりなんだと思いますが、特にメーカーの知財部は、間接部門になるので、忙しいという感じがしないです。言ってしまえば、ワークライフバランスがとりやすい。メーカーならば、研究・開発・設計・製造の部門が主力部門ですから、これらの部門に所属しているととても忙しいのではないかと思います。また、特許事務所ならば、特許明細書の作成、中間処理をしている方々が主力だと思うので、これらの業務をされる方々はとても忙しいと思います。

 

(3)安定

 すべての企業にあてはまることではないですが、コロナショックが起きても内部留保の多い企業に勤めている場合、不安が少ないのではないかと思います。

 

 

 

4.企業知財部に居るデメリット

 ブラック企業と労働基準監督官のイラスト

(1)分業化

 特許なら特許、意匠なら意匠、商標なら商標と、業務が細分化される企業もあると思います。そうなると、知財ミックスといったことがやりにくくなると思います。また、出願、中間処理、権利行使というように業務が細分化される企業もあると思います。得意分野に偏りがでてしまいます。特許事務所勤務でも、どの企業、どの個人から依頼を受けているかに左右されますが、商標の需要も大きいので、特許だけということにはなりにくそうです。

 

 

(2)仕事の意味を見失いやすい

 企業知財部は、メーカーであれば、間接部門にあたるので、主力部門と異なり、時に仕事の意味を見失い、仕事にやりがいを感じられない人も見受けられます。私はそんなこともないと思うのですが、訴訟やライセンス交渉に巻き込まれて、なんとかしなきゃ!って状態になると、会社への貢献も目に見えてわかると思うので、仕事の意味を見失い、仕事にやりがいを感じられないことはなくなると思います。ただ、訴訟やライセンス交渉は負荷が大きいので大変だと思います。落ち着いた状態がいいのか荒波の状態がいいのかは、個人の資質によるのかなと思います。

 

(3)ハードワークしたい人には不向きかも(?)

 企業によっては、休職後、復職のファーストステップとして知財部勤務を言い渡される企業もあるようで、ハードワークというイメージには遠いかもしれません。これも企業によりけりですが、ハードワークが可能な企業もあります。

 

 

5.まとめ

 企業知財部は、KMさんの指摘の通り、自由度低め&安定度高め、なのかもしれません。就職活動中の方にもお役に立てばと思います。

 

 「弁理士試験合格後の進路」シリーズいかがでしょうか。4者4様でしたね。最後まで読んでいただきありがとうございました!