おはようございます。
少し前の話になりますが、10/30にグッドデザイン特別賞(大賞など)の発表があったようです。
出典:商標登録5917118号より
「Gマーク」でおなじみです。
そういえば、知的財産の業界では「デザインは意匠で保護しよう!」と言われます。そこで今回は、このブログで初めて「意匠」について考えてみたいと思います。
意匠出願・登録しているグッドデザイン
まずは、今回グッドデザイン特別賞を受賞したものの中で、意匠出願・登録されているものはないか?金賞を受賞した「家庭用電動ミシン(株式会社アックスヤマザキ)」が意匠登録されていました。
意匠登録第1672969です。
出典:意匠登録第1672969号(登録日:2020/11/2)
大賞は意匠出願していない?!
ところで、今回の大賞デザインは意匠出願していないようです。
※2020/12/6時点でJ-Platpat意匠検索(出願人等)にて「WOTA株式会社」の意匠出願・登録は0件でした。
「大賞を取るようなデザインが意匠出願していないの?!」
これは、意匠制度で言う「デザイン」の意味と、グッドデザイン賞の言う「デザイン」の意味が、少し違っていることが原因の1つではないかと思います。ちょっと考えてみます。
「デザイン」の意味と気をつけたいこと
意匠制度の「デザイン」
意匠法では、保護対象となる「デザイン(意匠)」について以下のように定めています。
意匠法第2条第1項
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。・・・略・・・)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
要するに、「見た目」ということです。
グッドデザイン賞の「デザイン」
対して、グッドデザイン賞はその理念として、以下のテーマを掲げています。
グッドデザイン賞はデザインの優劣を競う制度ではなく、審査を通じて新たな「発見」をし、Gマークとともに社会と「共有」することで、次なる「創造」へ繋げていく仕組みです。グッドデザイン賞では常に我々が向き合うべき根源的なテーマとして5つの言葉を「グッドデザイン賞の理念」として掲げています。
人間(HUMANITY) もの・ことづくりを導く創発力
本質(HONESTY) 現代社会に対する洞察力
創造(INNOVATION) 未来を切り開く構想力
魅力(ESTHETICS) 豊かな生活文化を想起させる想像力
倫理(ETHICS) 社会・環境をかたちづくる思考力
要するに、「コンセプト」を重視しています。
弁理士として気をつけたいこと
実際に意匠の実務をしていて思うのは、私たち(弁理士)が言う「デザイン(≒見た目)」と、クライアント(デザイナー)が言う「デザイン(≒コンセプト)」との間に違いがあるために、上手く仕事が進まないことがあるということです。
『私たちは「見た目」の特徴を聞きたい VS クライアントは「コンセプト」を理解してほしい』とき、話が噛み合わなくなります。
特に、クライアントに「デザインを守る意匠権」という言葉が刺さらないときは要注意です。そのときクライアントは、まず「コンセプト」を理解して欲しいと思っているかもしれません。「コンセプトが視覚的に現れているところを一緒に探す」、「視覚的に認識されるコンセプトを守りましょう!」という姿勢が喜ばれることがあります。
おわりに
最後に、私が意識しているデザインに関する名言を紹介したいと思います。
デザインはビジネス面で、実用的かつ美しくなければならない。
しかし、何よりも、良いデザインというのは人々に報いるものでなければならない。by トーマス・J・ワトソン(IBM初代社長)
デザインとは単に「どう見えるか」や「どう感じるか」というものではない。デザインとは、どう機能するかだ。
by スティーブ・ジョブズ(Apple創業者)
デザインとは技能ではなく、物事の本質をつかむ感性と洞察力である。
by 原 研哉(日本のグラフィックデザイナー)
今回は少し漠然とした話になってしまいました。意匠は特許や商標と絡めて考えるのも面白いです。次回以降でそのあたりも書いてみたいと思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました!