IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

弁理士「中小企業のお客さんと仕事をする際に求められる能力」[らるご~]

いよいよ3月に突入ですね。毎年この季節は多くの特許事務所が繁忙期かと思いますが、今年に限ってはどうなんでしょう…そういう私「らるご~(これまでの記事ではKMと名乗っていた者ですが、らるご~に改名しました。)」も特許事務所に勤務しています。特許事務所のお客さんには、大企業だけでなく中小企業のお客さんも沢山いらっしゃいます。そうした中小企業のお客さん達と、私はこれまでに多くの仕事をしてきました。中小企業では、大企業と比べて年間の出願件数がかなり少ない場合がほとんどです。そのため、出願1件ごとに賭ける想いは大企業のそれとは比較にならないほど強いこともよくあります。しかし大企業のお客さんと比べると、中小企業のお客さんの中には特許にあまり馴染みのない方が多いのも事実。そのため、そうした方々に合わせた仕事の仕方が私たち事務所サイドの人間には求められます。そこで、今回は「中小企業のお客さんと仕事をする際に求められる能力」について、自分なりの考えをお話させていただきます。 

 

1.提案された発明のどこに特許性があるのか見出す能力

中小企業のお客さんから提案される発明の中には、説明を一度聞いただけでは、どこに特許性(=特許が取れそうな可能性)があるのか分からないものがあります。そのような場合、発明者(もしくは知財部)の方に質問を重ねて発明の深堀をした上で情報(従来技術を含む)を整理し、その情報を基に提案された発明のどこに特許性があるのか見出す能力が求められます(必要であれば念入りな先行技術調査も実施します)。そして、提案された発明で特許を取るためにアピールすべき特徴について説明し、それに納得してもらったうえで出願を進めていきます。

砂金採りのイラスト

2.特許性を高めるために発明の特徴を輝かせる能力

お客さんが「この発明は、こういう特徴があるから特許性がある!」と熱い想いを持って説明されても、「正直この特徴のままだと特許取るのは難しそうだな。」と思うことがあります。このような場合、今のままでは特許を取れる可能性はあまり高くないことを一旦説明します。そしてその説明を聞いた上でそれでもお客さんがその特徴で特許を取りたいと言われた場合には、「その特徴をもう少しカスタマイズすること」を提案したり、「その特徴が従来技術に対してどれだけすごいか(異質な効果を有するか)を強調するために明細書の書き方を工夫したりすること」があります。このような対応をするために必要な能力が、特許性を高めるために発明の特徴を輝かせる能力です。

 

3.特許全般の質問に対して分かりやすく説明する能力

中小企業のお客さんの中には、これまで特許出願にあまり馴染みがなかったものの、これから勉強していこうという気概を持った方たちも沢山いらっしゃいます。そうした方たちは得てして多くの質問を事務所側に投げかけてきます。そのような質問に対してバリバリ専門用語だらけの回答をする人もいますが、そうした回答はたいへん分かりにくく、お客さんの特許に対する苦手意識を強めることにしかならないと私は考えます。そのため、お客さんの特許全般の質問に対して分かりやすく説明する能力も持っておくべきだと思います。具体的には、平易な言葉で説明したり、難しい内容を回答する場合にはひとつひとつ順を追って丁寧に説明したりすることができる能力と考えます。

説明が分からない人のイラスト(男性会社員)

4.話しやすい、相談しやすいと思ってもらう能力

中小企業のお客さんから新規に仕事を依頼してもらうため、もしくは、今後も継続して仕事を依頼してもらうためには、純粋な実務能力は当然に必要ですが、それと同時に話しやすい、相談しやすいと思ってもらう能力もあった方がいいと思います。「いつでもどんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。」と言ったとしても、お客さんはその言葉を発した人間を見てそれが本当かどうか察します。その言葉が本当であると思ってもらうために、日々のお客さんとのコミュニケーションひとつひとつを大事にしていかねばなりません(自戒を込めて)。 

 

5.まとめ

以上、私が思う「中小企業のお客さんと仕事をする際に求められる能力」でした。が、ここまで書いてきて、「これらの能力って別に中小企業のお客さんに限らず、そもそもお客さん全般に対して必要な能力なのでは?」と気付きました。また、いずれの能力にもベースとして、いわゆるコミュニケーション能力が要求されるとも思いました。特許業界で働くにしても、人と関わって仕事をする限りはコミュニケーション能力は求められるようですね。