こんにちは。
このご時世、おうち時間が長くなる中、先日マータさんがタイムリーに「ファスト映画」についての記事を書いてくれました。
そんなものがあったのか!とビックリする反面、不謹慎にも便利そうだなと思ってしまいました。自分的には、最新の映画を見るよりは、昔見た映画をちょっと思い出したいときに便利かなと。まだYouTubeで「ファスト映画」と検索すると出てきますね。。。
。。。とか思っていたら、息子(小5)が今話題の漫画「東京リベンジャーズ」のあらすじ動画を見ているではありませんか!これはいいのか??
ということで、今回は、ファスト映画やあらすじ動画について身近なネタを混ぜながら考えてみたいと思います!
ファスト映画の何が問題?
まず「ファスト映画」の何が問題(著作権侵害)なのか考えてみたいと思います。
「ファスト映画」を実際に見てみると、原作の映像が使われています。また、逮捕者の供述として、
「動画の素材となる映像はレンタルDVDから取り込んだ」
「コピーガードを外して映像を複製した」
とのこと。これらから以下の2点が考えられます。
- DVDに収録されている映像や音楽をコピーして、ネットにアップしたことにより、「複製権」&「公衆送信権」の侵害
- 「コピーガードを外して」複製したということで、「複製権」侵害
注意したいのは、「コピーガードを外して」の複製は、「私的使用のための複製の例外」となるので、たとえ私的な範囲であっても著作権侵害となることです。(DVDの複製(リッピング)の際は注意してください。)
著作権法30条1項2号(私的使用のための複製にならない場合)
技術的保護手段(※)の回避(・・・略・・・)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
※「技術的保護手段」はコピーガードのこと
堂々と流されている「古い映画」は?
たまに店内のモニターで古い映画が流されているのを見かけます。あれはいいのか?
結論から言うと、著作権の切れている映画であればOKになります。映画の著作物の存続期間は、公表の翌年の1月1日から起算して70年(未公表の場合は創作後70年)を経過するまでです。
でもよく見かける「ローマの休日」とかは1953年公開。。。まだ70年経っていないのでは?
これは、2004年1月1日に施行された法改正によって存続期間が50年から70年に延びたことによります。要するに、法改正の施行日(2004/1/1)よりも前に存続期間が終了したものには新しい期間が適用されないので、1953年に公表された「ローマの休日」や「シェーン」等は2003年12月31日に著作権が切れています。
これは「1953年問題」として知られているみたいなので、興味のある方は別途調べてみてください。
個人的には、こういった「古い映画(著作権の切れた映画)」の「ファスト映画」を作って欲しいなと思います(それじゃ再生数伸びない?)。
あらすじ動画は?
さて「あらすじ動画」です。これが以外と便利で、例えば、息子が読んでる漫画をちょっと見てしまいその後の展開が気になるときに、サッと見てしまっています。
ここでは「あらすじ動画」を、『漫画等のストーリーを、自分で要約したもの(あらすじ)を、話すor文字で表示する動画』として考えてみます。
ストーリー(アイデア)自体は著作物ではない
まず前提として、アイデアとしてのストーリー自体は著作物ではありません。著作権法上の著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)なので、あくまで、ストーリーを具体的に表現した文章や画像、映像などが著作物となります。
ちょっと違和感もありますが、例えば、「Aの裏切りによってBが死ぬ」というストーリーがあったとして、その場面の具体的な描写、AやBのセリフのやり取りや表情、カメラワークやコマ割り、等々の「表現」が著作物になるというイメージです。
要約の仕方によってはNGなことも
ストーリー自体は著作物ではないので、それを要約した「あらすじ」は著作権の保護対象ではないと考えられます。
注意したいのは、必要以上に詳細に原作部分を使ってしまうことや、新たな著作物(二次的著作物)を作ってしまうことでしょうか。
前者は、例えば、セリフを1,2個コピーするくらいならOKですが、まとまった部分を使ってしまうとその部分について著作権(複製権)侵害となる可能性があります。
後者は、例えば、漫画を詳細に文章のみで表現することで、二次的著作物(ここでは、小説)と言えるようなものを作ってしまうと、著作権(翻案権)侵害になる可能性があります。
翻案権侵害についてはWikipediaの記載も参考になります。
(上記サイトより引用)
「翻案の例としては、小説を映画化やゲーム化する行為、一話完結形式の漫画の連載において同一のキャラクターを用いて新たな続編を創作する行為などが挙げられる。」
「翻案権で問題となるのは、既存の著作物のアイデアを用いて新たな著作物を創造することとの区別(翻案権侵害にならない)である。翻案に当たるのは、あくまで著作物となる思想又は感情を創作的に表現した部分の表現上の本質的な特徴を直接感得できる場合だけであり、思想・感情・アイデア・事実・事件などが酷似していてもそれだけでは翻案には当たらない。」
後ろで流す映像(画像)や音楽に注意
「あらすじ動画」では、よく見ると後ろに原作関連の画像が表示されていたり、音楽が流れていたりします。もちろん、これらの画像や音楽には、原作(漫画)とは別に著作権があるので、利用に際しては注意が必要です。
「あらすじ動画」で表示されている画像をよく見ると、原作の絵ではない(動画の作成者が自分で描いた絵?)が表示されていることが多いのは、これを意識しているのかなと思います。
また、一部で「引用なら(出所を書けば)OK」と言うロジックも見かけますが、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」(著作権法32条)でなければダメなので、注意が必要です。
著作権侵害以外の問題点
以上お話ししてきたように、「あらすじ動画」については、著作権侵害にならないものが多いように思います。
しかし、著作権侵害にならなくても、一般不法行為(他人の権利や利益を侵害する行為)になる可能性が指摘されています。要するに、「あらすじ動画」を見ることで、原作は改めてお金払って買ったり見たりしなくてもいいとなれば、原作者(著作者)の利益を損ねる可能性があります。
また、同じく「ネタバレ」についても、マナーの問題もありますが、個人的には作品の価値を著しく損ねるもの(例えば、リメイク版の肝となる原作との違い部分についてのネタバレとか)は、著作権者の利益を損ねる可能性があるので、今後争いになる可能性があると思っています。
おわりに
まとめてみると、
- 原作の映像をそのまま使った「ファスト映画」は絶対NG!
- 「あらすじ動画」は画像や音楽の利用に気をつけて!
- 原作者(著作権者)の利益を侵害するような行為は止めよう!
というところでしょうか。
いろいろ気をつけることが多く、ややこしい著作権法ですが、その目的は「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」です。「文化の発展が阻害される=新しい・面白い作品が生まれなくなる」のは誰も望まないと思うので、自分たちもそのために行動したいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!