IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作『写真の著作物と公園の遊具と著作権』[リッキー]

 ふと思ってスマホでパシャリと写真を撮りました。そうです。あの判決を話題にしたいなと思います。

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タコの滑り台



1.写真の著作物

 

このブログでもMIさんがフリマアプリで商品を売買するのに、手元に商品があれば極力自分で撮影した写真を使うことを推奨していました。私も写真は自分で撮影したものを使うように心掛けています。

 

discussiong1.hatenablog.com

 

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それはなぜかというと、写真を撮るにはどのような構図にするのか、被写体にどのように光を当てるのか、カメラの設定値をどうするのか、どんなレンズを使うのか・・・と「選択の幅が広い」からです。この「選択の幅が広い」というのはキーワードでして、著作物の創作性を認定するうえでとても重要なのです。選択の幅が広い」と創作性が認められやす、選択の幅狭いと創作性を発揮しにくいからと認められにくい傾向にあります。

 

裏を返せば、「選択の幅が広い」と法上の著作物となり、著作権侵害をいえることになります。判例を読んでいると、写真の創作性が認められやすく思うのです。ただ、上記の写真は、ど真ん中にタコの滑り台をドンと写しているだけなので創作性なさそうですね。

 

さて、タコの滑り台の実物は写真の著作物に該当することはありませんが、著作権法に例示列挙されえいる著作物のどれに該当すると思いますか?

 

タコの滑り台が美術の著作物、建築の著作物に含まれると、原告は主張しています。

 

 

2.美術の著作物?

 

美術の著作物の典型例として、絵画、版画、彫刻が掲げられており、主として美術鑑賞を目的とする工芸品を指すものと解されています。タコの滑り台は、子供たちに遊びの場を提供するのが目的であるから、美術工芸品でないと判断されています。

 

また、応用美術であるかも争われています。タコの頭部を模した部分、タコの足を模した部分、空洞部分、に分けて検討されています。

 

タコの頭部を模した部分は、滑るスタート地点として滑り台の遊具としての利用と深く結びついていて、隠れん坊にも利用できます。タコの足を模した部分は、滑る部分として欠かせない部分です。そして、空洞部分は、やはり隠れん坊にも利用できます。これらの部分は、子供たちに遊びの場を提供する目的を離れて美術鑑賞を目的となる美的特性を備えた部分とはならないと判断され、美術の著作物としての保護を認められていません。

 

 

3.建築の著作物?

 

著作権法上、建築の定義は置かれていません。そのため、判決では、建築基準法を参考にしてタコの滑り台を建築物と認定しています。しかし、著作物か否かについては、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」か否か検討する必要があると言及しています。

 

建築図面、建築学、建築美術、建築音楽(?)・・・、一番関連がありそうなのは、建築美術ということなのでしょう。応用美術に類するとして、応用美術と同じ基準で判断がなされました。結果は、・・・建築の著作物としても保護を認められていません。

 

 

4.まとめ

 

タコの滑り台の判決について紹介しました。タコの滑り台は著作物ではないという判決でした。子供の遊んでいる遊具でこんな争いがあったのか!と著作権と生活が密接にかかわっているなと思えた判決でした。

また、今回は、写真の著作物、美術の著作物、建築の著作物が登場しましたが、著作物と判断する手法はまちまちでしたね。特に、建築の著作物ついては、建築○○の○○の部分についての著作物の判断基準が用いられていました。これからも著作物の判断基準を調べて行きたいなと思います。

 

5.(追記1)なぜ原告は被告を訴えたのか?

 

原告、被告共に、公園の遊具を企画、設計、製作、施工等をすることを事業としています。また、被告の代表者は、もともと原告に勤めていた過去があり、原告を退職して、被告を設立しています。

 

なんだか、理由が想像できそうですね。

 

 

6.(追記2)タコの滑り台が美術の著作物or建築の著作物だとしたら?

 

タコの滑り台が美術の著作物or建築の著作物だとしたら、私たちは、タコの滑り台で遊べなくなるのでしょうか?

 

そんなことはありませんね。屋外に恒常的に設置されている美術の著作物又は建築の著作物は、著作権に制限があります。タコの滑り台が美術の著作物だとしたら屋外に恒常的に設置されているので著作権制限の対象になりますし、建築の著作物だとしても著作権制限の対象になります。

 

著作権制限の対象にならないのは、

・彫刻を増製し、その増製物を譲渡すること

建築の著作物を建築により複製等すること

屋外の場所に恒常的に設置するために複製すること

専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製等すること

 

これら以外は、利用できることになっています。なので、タコの滑り台で遊んだり、タコの滑り台をスケッチしたり、タコの滑り台の写真を撮ったり、・・・おそらく私たちがやることのほとんどが著作権を侵害する行為にならないでしょう。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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リッキー