こんにちは。関東が一番先に梅雨入りし、11日に九州も梅雨入りしたいみたいですね。13~15日あたりには中国・四国~東海地方が一斉に梅雨入りしそうなようです。
著作権等に関する契約は口頭による契約が多いようで、トラブルも絶えないようです。そこで、文化庁が素晴らしいシステムを公開してくれているので、その紹介をしたいと思います。詳しくはこちらへ
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/index.php
何といっても、インターフェースがとてもいいと思います。実際に使ってみましたが、入力欄に例示が示されていて、どんなことを入力すればいいのか、迷いなく契約書のひな形を作成することができる点にあると思います。
講演、上演会、原稿執筆等、契約の場面に合わせて、適切な契約書雛形が作成されるようになっています。例えば、イラスト作成の依頼を受けた場面に合わせて、著作権契約書の雛形を作成してみました。
よくあるのは、例えば、イラストの作成を依頼して、「作成者は、作成したイラストに関するすべての著作権を依頼者に譲渡する。」のような一文を入れて、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利についても、譲渡がなされるという誤解です。
「すべての著作権」と契約書に書いたのだから、当然、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利について譲渡がされると考えるのが素直な感じがします。
しかし、著作権法では、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利について譲渡する時には、これらの権利を譲渡することを明示しなければならないこととしています。
ですから、単純に「すべての著作権」と契約書に書いただけではだめなのです。
また、依頼者としては、例えば、翻訳の予定があるのであれば、翻訳権の譲渡について契約書に明記するのを忘れてはいけません。また、作成者(著作権者)としては、本当に譲渡していいのか熟考する必要があります。
また、著作者人格権の同一性保持権に関して、忘れがちなことがあります。それは、イラストなどの改変をするに当たり、著作者人格権を行使しないとの契約を結ぶことです。
依頼者としては、そのイラストの使用を想定している範囲で、サイズを変えたり、色調を変えたりする場合があることがあらかじめはっきりしているときには、サイズを変えたり、色調を変えたりすることについて著作者人格権を行使しないとの契約を作成者と結んでおくべきです。同一性保持権侵害で訴えられる可能性があります。
また、作成者としては、作成したイラストについてこの部分は変えられたくないとかこだわりの部分があるかと思います。依頼者の利用態様に照らし、許容できる範囲で著作者人格権を行使しないとの契約を結ぶようにするとよいでしょう。ただし、許容できない改変等についてはこのような契約を結ぶべきではありません。
契約書作成支援システムでは、これらの部分をフォローするように契約書の雛形を作成してくれます。しかし、雛形ですので、これで万能ということはありません。そのままでは、だいぶ薄い契約書になるので、不足分に関してはご自身で追加して頂くことが必要です。
翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利や著作者人格権の不行使についても、相手方との交渉でいろいろと条件が追加されると思います。より詳細な契約の中身については弁理士等の専門家に相談するとよいでしょう。
文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン
5月の下旬からパブリックコメントが募集されています。
https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/public_comment/93710701.html
コロナ渦で外出制限がされたこともあり、実演家等の方々は特に大変だったかと思います。そこに、あまり契約を書面で結ぶという慣習が少なかったのか、さらにご苦労があったようです。そのため、当ガイドライン案が示されています。
ここでも著作権に関する契約書の雛形が示されていますので参考になると思います。また、注釈に契約時に気を付けるポイントなどもコメントされていますので当ガイドライン案が大変参考になるかと思います。
さらなる情報源
こちらでコンテンツに関する多くの情報収集ができるものと思いますので、ご参考にしていただければと思います。
コンテンツ東京2022
まとめ
文化庁の著作権契約書作成支援システムと分化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインをメインに紹介しました。どちらも著作権法27条、28条に関する譲渡や著作者人格権の不行使等、契約実務で問題となりやすい部分を手当てした契約雛形を示しています。実務家の方々には、大変参考になると思いますので、ご活用頂きたいなと思います。