IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

続・SNSで新規性喪失?! 注意点まとめ【MI】

こんにちは。MIです。

連日不安定な天気でモヤモヤしますね。。。息子も外でサッカーができず悶々としています。こんな時こそ家で勉強して欲しいところですが。。。

さて今回は、前回に引き続き「新規性喪失」について書き残したことを書いていきたいと思います。リスクの再確認ということで参考になればと思います。よろしくお願いいたします。

 

↓前回の記事はコチラ

discussiong1.hatenablog.com

 

 

<注意点1>「行為」ごとの申請が必要

「特許(意匠登録)を受ける権利を有する者の行為に起因」するものとして「新規性喪失の例外規定」の適用を受けるためには、原則として行為ごとに申請(証明書への記載)が必要になります。

例えば、以下のような場合、原則として全ての公開行為の特定(場所、URL、日付等)が必要になります(これが大変!)。

  • SNSで繰り返し公開した場合(同一アカウントであってもURLが異なれば)
  • いろんな場所(一店舗だけでなく;ウェブサイト含む)で販売した場合
  • 同一商品を複数の展示会に出展した場合

一方、以下のような場合には、先の行為(赤字)について申請していれば、後の行為(青字)についての申請が不要となることもあります。

 

【パターン1】手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ、かつ、手続を行った発明の公開行為と密接に関連する公開行為によって公開された発明

⇒(例) 権利者が同一の取引先へ同一の商品を複数回納品した場合における、初回の納品によって公開された発明と、2 回目以降の納品によって公開された発明


【パターン2】手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ、かつ、権利者又は権利者が公開を依頼した者のいずれでもない者によって公開された発明

⇒(例)権利者が商品を販売したことによって公開された発明と、その商品を入手した第三者がウェブサイトにその商品を掲載したことによって公開された発明 

 

(補足)従業員(バイトさん等;特許を受ける権利を有しない者)が公開した場合は?

この場合は、事情によって対応が異なります。特許(意匠登録)を受ける権利を有する者が公開(SNS投稿等)を依頼した場合は、申請が必要になるでしょう。一方、従業員が無断で勝手に公開した場合、「意に反する公開」として申請なしで新規性喪失の例外の適用が受けられる可能性があります。

 

<注意点2>例外規定のないor適用条件が厳しい国もある

例えば、中国や欧州では、新規性喪失の例外規定の適用条件が厳しく(特定の展示会に限定される等)、実質的に適用を受けられない場合があります。

これは、対象国の法制がそうなっているので仕方がないと言えばそうなんですが、事前の説明を忘れる(各国でも日本同様の例外規定の適用が受けられるという誤解を与える)と、お客さんによっては揉めることがあるので注意したいところです。


<注意点3>本当に「発明」が公開された?

安全側から見ると、「商品の写真を出願前に公開してしまったので、とりあえず新規性喪失の例外申請をしておくか」ともなり得ます。これは「意匠」のときは当てはまるかも知れませんが、「発明」の場合はそうとも言い切れません。「意匠」は見ればすぐ分かりますが、「発明」はそうではないからです。

例えば、写真に何かの薬(錠剤)が写っていたからと言って、その成分が分かるでしょうか?

というわけで、特に「発明」については、新規性が喪失するレベルの公開かを検討することも重要です。単に製品が映り込んだレベルなのか、製品を見るだけで発明のポイントが分かるのか、機能や使い方のレクチャーが併記されていないか、検討してみましょう。前の記事でも書きましたが、申請すること自体のリスクもあります。

 

おわりに

以上、2回にわたり「新規性喪失の例外」について考えてきました。

ホントに最近この話題についてお客さんに説明する機会が増えています。立場上、安全側(申請をする)でお話をすることが多いですが、そうするとどうしても申請費用が追加になるので、いい顔をされないことも多いです。。。

個人的には、こまめにお客さんのお話を聞きに行くことで、公開前や公開予定の発明を事前に把握することも有効かなと思っています。このご時世ですが、対面の打合せをあえて増やしています。

また、今回記事を書くにあたり特許庁の資料を参考にしましたが、是非SNS関連の事例も追加して欲しいと思います。中小企業の方には「学会発表」の事例よりもSNS関連の事例の方が身近です。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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