IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作『メタバース空間内で起こっている困った問題(3)』[リッキー]

パブリックコメントの添付資料に記載されている問題はまだまだあるのですが、ご紹介したいと思えるものは今回まででご紹介できそうです。

 

人物の写ったポスター



問題4

 

「イベント等をはじめとしたメタバース空間内での様々な活動では、音楽、映像、写真、キャラクターなどの著作物が数多く用いられていることが想定されるが、その利用の際には公衆送信権等の関係など、原則として許諾(ライセンス)を得る必要がある。」と問題提起されています。

 

例えば、インターネットを介して、音楽や画像を不特定多数の人に送信することを公衆送信といいます。

 

メタバース空間で公衆送信ってどういうこと?なんて思えて来ますね。

 

メタバース空間内自体が、公衆送信されたデータでできていますから、そこに音楽、映像、写真、キャラクターなどの著作物がある時点で、現実世界において、音楽、映像、写真、キャラクターなどの著作物のデータの公衆送信がなされていると思われます。

 

つまり、現実世界での著作物のデータの公衆送信が問題となされているのです。

 

データなしに、メタバース空間内自体にものが表示されることはないですから。

 

また、「メタバースビジネスの展開に当たり、ユーザーによる不正利用の防止や、権利処理の円滑化、メタバースの実情に即したライセンス契約等のための対応をどう進めていくかが課題となる。」と課題が明示されています。

 

著作権法に違反するとわかっていても、権利処理の方法が複雑で現実的でないと、やはり不正利用につながるのかなと思います。いけないことではあっても、人間は易きに流れやすいですから・・・。

 

そこで「簡素で一元的な権利処理」に期待する部分が多いようです。

 

脱線しますが、「簡素で一元的な権利処理」に関係する改正著作権法が5月17日の参議院本会議で可決・成立していますね。

 

問題5

 

「現実空間を3Dスキャン等して仮想空間化する際には、例えば、写り込んだ看板やポスターの中に、人物の肖像が取り込まれることがある。取り込まれた肖像について、肖像権、パブリシティ権との関係で問題が生じないか、どこまでのケースについて権利処理を必要とするのか等が、課題となる。」

 

肖像権は、法律上明文化された権利ではなく、裁判例で認められた権利であり、裁判例の多くは、自分の顔や全身の姿をみだりに撮影されたり、それらをみだりに公開されたりしない権利と解されています。

 

パブリシティ権も法律上明文化された権利ではなく、裁判例で認められた権利で、裁判例では、著名人の氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利と解されています。

 

確かに、3Dスキャンをすれば、人物の肖像が取り込まれることはあるでしょうし、その人物が著名人であれば、パブリシティ権も問題となりそうです。

 

ただ、肖像権侵害は著名人ほど社会的地位などが考慮されて認められにくい傾向にあると思われますし、パブリシティ権は著名人でなければまず生じないでしょう。

 

パブリシティ権に関する裁判例を見ていると、著名人でさえ、パブリシティ権を認められるのには壁があるように思います。

 

まあ、私の場合は、著名人でも何でもない一般人ですから、パブリシティ権よりは肖像権が認められやすいでしょうか?!

 

だいぶ、著作権から離れたところに来てしまいました。ただ、著作権がらみの事件と、肖像権、パブリシティ権は無縁ではないので、頭の片隅に入れておいていただくと、あるとき登場するかもしれません。

 

まとめ

 

パブリックコメントの資料を基に、3回にわたってメタバース空間内で起こっている困った問題をご紹介してきました。これからメタバースが普及すると、次から次へと問題が起こるでしょうから、どのようなことが課題として取り上げられるか見ものかなと思います。

 

これから興味を持って、ニュースを追っかけたいと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

リッキー