IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『タイプフェースと著作権』[リッキー]

前回は応用美術について

書かせていただきました。

 

応用美術については、

意匠権著作権との

棲み分けがあって、

 

一部の応用美術には、

純粋な美術作品と同様に

著作権が認められること

を書きました。

 

それでは、応用美術に

類するけれども、

 

意匠権著作権との

棲み分けがないもの

ってあるのでしょうか?

 

そう。あるのです。

 

タイプフェースです。

 

まずはタイプフェースの

定義を確認しましょう。

 

文字自体(文字の骨格、字体)は、情報伝達のための基本的なツールであって、特定人に独占させるべきではない。それに対してタイプフェースとは文字自体とは異なり、一定の設計思想に基づいて開発された印刷用の一連の文字の書体デザインを指し、文字フォントと呼ばれる。タイプフェースには美的な要素もあるが、一般的には実用的色彩が濃いために、これを著作権法上いかに扱うべきかという問題を巡り、長い間論争の種となっている。

 

著作権法 第3版」 中山信弘著 有斐閣 224ページ

 

Wordとかで選択できる

文字フォントと理解して

よさそうです。

 

著作権法では、

タイプフェースを保護

すべきでない

という根拠として、

 

文字は万人共通のもの

であり、独占を認める

べきはない

 

との考えがあることは、

よく知られたこと、

納得しやすいこと、

と思います。

 

ただ、中山信弘名誉教授は、

 

各タイプフェースには異なった特色があり、ある特定のタイプフェースに独占権を認めても、情報伝達のためには従来からある他のタイプフェースを利用すれば足りる。仮にタイプフェースに著作権を認めかつ権利の幅を広く解釈すると情報伝達の妨げとなる事態も考えられるが、タイプフェースは素手も存在する文字を土台に作るものであり美術の著作物と認められている『書』についてすらその保護範囲は狭く解釈されているので、仮にタイプフェースに著作物性を認めても、自ずと権利範囲を幅狭く解釈せざるを得ず、新規参入者に対しては大きな不都合は生じないであろう。議論すべきは、タイプフェースを著作権法で保護した場合に生ずる具体的弊害である。

著作権法 第3版」 中山信弘著 有斐閣 226ページ

 

と述べています。

 

『書』

 

タイプフェースを著作権法

保護した場合に生ずる具体的弊害

とは何があるのでしょうか?

 

言語の著作物は無形の存在であり、理論上は文字がなくとも伝達可能であるが、事実上は文字を媒介にしなければ伝達困難な場合が多く、言語表現は文字により伝達されることになる。そして他人の著作物が載っている文章を複写(有形的再製)すれば、タイプフェースも同時に複製されることになる。その複写の際、伝達ツールであるタイプフェースに著作権が付着していると、文章の著作権だけではなく、タイプフェースの著作権の処理も必要となるが、そのような処理は事実上困難である。その上、著作権法の適用を受けると同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が認められ、権利処理の困難性に拍車をかける。

著作権法 第3版」 中山信弘著 有斐閣 226ページ

 

とあります。

 

これは挙げられている

一例ですが、これは

考えなければならないし、

 

困難性の高いハードル

だなと思いました。

 

文章については、

言語の著作物で保護され、

 

タイプフェースについても

美術の著作物で保護され、

 

文章、タイプフェースともに、

同一性保持権、

氏名表示権、

が認められるとなると、

 

文章の複製について利用許諾を得て、

タイプフェースの複製について

利用許諾を得て、

 

インターネットで掲示するのであれば、

公衆送信権の利用許諾を得て、

 

文章の同一性保持は簡単だとしても、

タイプフェースは、おそらく、

文章ソフトに入っていないから、

画像として掲載するのかな?

と考えたり、

 

他の文字に置き換えると、改変に

なってしまって、

同一性を保持していない

事になりかねません。

 

改変の許諾を得る必要もある

かもしれません。

 

そして、氏名表示を著作者が

希望するのであれば、著作者の

氏名を表示しなければなりません。

 

そのような氏名表示の意思確認を

しなければなりません。

 

となると、少なくとも6つぐらい

何らかの許諾を得ていかなければ

ならず、

 

これは骨が折れそうです。

 

1つの契約書で、許諾を得れば、

なんてことないという方は、

頼もしいです!!

 

契約書も1回でまとまりにくそう

ですし、

 

すくなくとも6つの議論すること

があれば、なかなか収束させにくい

気がします。

 

著作権法での保護が馴染まない

というのも理解できます。

 

タイプフェースは著作権法での保護

に馴染まないというのは、最近では

ほぼコンセンサスがあるようです。

 

著者は、新規立法、

不正競争防止法・意匠法・不法行為

の活用等を模索すべきであろう

 

と締めくくっています。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • タイプフェースは、意匠法では保護されず、著作権法での保護も考えられるが、今のところ著作物性は否定されている

 

  • タイプフェースに著作物性を認めると、文章をコピーする際に、文章だけでなく、タイプフェースについても権利処理が必要となり、困難性を高める

 

  • タイプフェースは著作権法での保護に馴染まないというのは、最近ではほぼコンセンサスがあるようす

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう。

今週も著作権の雑談はいかがでしょうか?

 

リッキー

 

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