IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『映画の著作者以外の権利はどうなる?』[リッキー]

前回も映画の話題でしたが、

 

映画の著作物の著作者には、

小説、脚本、音楽その他の

著作物の著作者が除かれる

 

ということを書きました。

 

小説家、脚本家、音楽家らの

権利はどうなっちゃうの?

 

なんて考えられた方もあるかも

しれません。

 

これらについては下記の記載が

あります。

 

16条では、小説・脚本・音楽・美術等の著作物の著作権者(映画業界ではクラシカル・オーサーと呼ばれている)は、たとえ映画の著作物の「全体的形成に創作的に寄与した者」であっても、映画の著作者から除かれる。例えばある音楽がその映画の中心的テーマであっても、その音楽の著作者は映画の著作者とはならない。映画で用いられている音楽や美術は映画と別個の著作物であるために、その著作権者は当該音楽や美術の複製や放送等について著作権を行使できる。また、映画は原作の二次的著作物となり、クラシカル・オーサーは映画についての著作者とならなくとも、その映画について映画の著作者と同じ種類の権利を有するから(28条)、16条があってもクラシカル・オーサーは特に不利な立場に置かれることはない。むしろ事実上は、クラシカル・オーサーは映画の著作者となるよりも強い権限を持つことになるだろう。

 

著作権法 第3版」 中山信弘著 有斐閣 266頁~267頁

 

小説、脚本、音楽その他の

著作物の著作者は、

 

映画の著作者になれないと

なんだか、力が弱いよう

にも思えます。

 

ところが「著作権法 第3版」

には、『むしろ事実上は、

クラシカル・オーサーは

映画の著作者となるよりも

強い権限を持つことになるだろう。』

とあります。

 

どういうことなのかしら?

 

と思われる方もあるかも

しれません。

 

映画の著作権者は

あくまで、映画について

しか権利行使できません。

 

映画に使われている音楽が

映画の映像とは切り離されて

複製されたとしても、

 

映画の著作物の著作権

行使することができるかは

定かではありません。

 

ところが、切り離された

音楽の著作権者は、

 

映画の映像とは切り離されて

複製されたとしても、

 

音楽を複製されていることに

代わりはありませんから、

著作権が行使できます。

 

楽家

 

こう考えると、

映画の著作者にならずとも

よいような気がしてきますね。

 

また、二次的著作物の利用に

関する原著作者の権利をも、

音楽の著作権者は有すること

になります。

 

なので、Youtube等で

ファスト映画がばらまかれた

時期がありましたが、

 

ファスト映画に音楽が利用

されていれば、二次的著作物の

利用に関する原著作者の権利を

行使できるので、

 

複製権から翻訳、翻案権までの

権利だけでない、権利行使が

可能となります。

 

音楽の著作権だけあれば

いいじゃないか!

 

という気もしないでもない

ですが、

 

映像と音楽がくっついて

しまっていると、映像と音楽

の組み合わせに創作性が

あるかもしれません。

 

音楽単独で、創作性ない

ということがなったときには、

別の観点の創作性で、

権利行使ができることに

なりますから、

 

やはり、メリットがあると

考えていいのだと思います。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • 小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者は、映画の著作者になれなくても、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を有する

 

  • 映画の著作者は、映画に関してしか権利行使できないが、小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者は、映画から切り離されている著作物にも、当然に権利行使できる

 

  • 小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者は、事実上は、映画の著作者となるよりも強い権限を持つことになる

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう。

映画を題材に、映画の雑談はいかがでしょうか。

 

リッキー

 

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