知財の世界に足を踏み入れたばかりの頃、先輩から「分割出願の時は、必ず上申書を添えるもんだ」と教わったことはありませんか?
実は「法律上の義務」ではなく、単なる「実務上のマナー」に過ぎないのです。
1. 「上申書」は必須ではない?
特許法第44条(出願の分割)を隅から隅まで読んでみてください。「上申書を提出しなければならない」なんて一言も書いてありません。

それなのに、なぜ多くの現場で「必須」のように扱われているのでしょうか。もしかて、私のところは違いますとかありますか??
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審査官への配慮: 「どこが変わったか」を説明して、審査のスピードアップを期待する。
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二重出願の誤解防止: 形式的な不備がないことをアピールする「予防線」。
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丁寧な仕事の可視化: クライアントへの「ちゃんとやってます」というポーズ。
しかし、一定規模の企業であれば、分割の理由は社内の「稟議書」にしっかり残っているはずです。法的に不要で、社内記録もあるなら、わざわざ公的な書面(上申書)として残す必要はない……そう考えるのが、実は条文に忠実なロジックなのです。
しかも社内文章と稟議書で齟齬があるということもゼロではありません。書けば書くほど、墓穴を掘るなんてこともあるかもしれません。
2. 驚きの事実:図面すら「必須」ではない
さらに面白いのが、出願時の「図面」の扱いです。 「特許出願には図面が付きもの」と思い込みがちです。先輩らか仕事を教えてもらう時や上司からもらう仕事で、拒絶理由の対応を経験するとします。技術分野によっては、図面がついていないほうが珍しいかもしれません。特許法第36条第2項にはこうあります。
「願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。」
ポイントは「必要な」という文言。 例えば、数式や反応式だけで発明が完全に説明できる化学やバイオの分野では、図面がなくても出願は受理されます。逆に、機械構造などは図面がないと「説明不足」で拒絶されますが、法律上の「添付書類」としては、あくまで「必要に応じて」という立ち位置なのです。
3. 「実務のバイアス」という悪影響
条文を後回しにして実務から入ると、こうした「慣習」を「絶対のルール」だと勘違いしてしまいます。
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ルールの固定化: 「こうしなければならない」という思い込みが、柔軟な戦略を妨げる。
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本質の喪失: 「なぜその書類が必要か」を条文(根拠)ではなく「マナー(感情)」で判断してしまう。
審査官は法と基準に基づいて公平に判断するプロです。「上申書がないから厳しく審査してやろう」なんてことはありません。
昨今、効率化が叫ばれていますが、こんなところも立派なムダ!と判断できる会社もあるかもしれませんね。効率化が好きな方は、こんなところを提案してはいかがでしょうか?
まとめに代えて本日の痒いところ
実務で覚えた「お作法」は、あくまで円滑なコミュニケーションのためのツール。 時には条文に立ち返ってみると、「実はやらなくてもいいこと」や「法律が本当に求めていること」が見えてきて、知財実務がもっと面白くなりますよ!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週も知財の雑談を楽しみましょう。
特許法の条文を読みましょう♪