みなさん、クラウドストレージは使っていらっしゃるでしょうか?

クラウドストレージ
そのクラウドストレージに、他人のHPスクショなどを保存していたりしませんか?また、他人の音楽、他人の撮影した画像や動画もです。
著作権法の条文の頭から見ていくと、他人の音楽等をアップロードする行為は、公衆送信となります。もちろん、公表されていること前提です。
そういわれたら、そうだなと、思われた方もいるかもしれません。私もつい最近まで、そうだなと思っていました。でも、著作権法に反している感じはしませんでした。
それは、私的使用のための複製は、著作権の権利制限規定に該当するからです。
クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為が、私的使用のための複製に該当するとは、条文上、直ちに読むことはできませんでした。
おそらくそうなんだけれども・・・、と資料を探したらありました!!
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会
「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/41/pdf/shiryo_4_2.pdf
報告書によれば、クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為が、私的使用のための複製に該当するとの結論に至っている。また、法改正も現在のところ不要であるとの結論です。
しかし、どのような議論からそうなったのかは、気になるところです。そこで、この報告書が出る直前の、文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第10回)の報告書を見てみましょう。
小委員会 (第10回)の報告書
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hogoriyo/h26_10/pdf/shiryo_1.pdf
資料の中で、クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為は、『タイプ2のロッカー型クラウドサービス』に該当します。
以下、抜粋です。
2 現行著作権法との関係
(1)利用行為主体
タイプ2のロッカー型クラウドサービスにおける利用行為主体については,[1]当該ク
ラウドサービスを提供している事業者であるとする見解と[2]当該クラウドサービスを
利用している利用者であるとする見解が示された。
すなわち,権利者からは,タイプ2のロッカー型クラウドサービスは,事業者が営利活
動として利用者に複製の場を提供しているサービスであるという点に着目すれば,このよ
うなサービスは私的使用目的の複製の範囲を超えるものであり,[1]利用行為主体は事業者であると評価されるべきとの見解が示された。
他方,有識者からは,以下の意見等,タイプ2の枠内で行われる利用行為については,
基本的には,[2]利用行為主体は利用者であるとする意見が示された。
・ 事業者の利用行為主体性が認められるのは,①コンテンツを事業者が提供している,②機器を利用者が操作することにより自動的にコンテンツの複製が行われる,③複製に供する機器を事業者が提供している,という三つの要件を満たした場合であり,これをタイプ2のロッカー型クラウドサービスに当てはめると,①の要件が満たされないため,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの利用行為主体は利用者と解すべきである。
・ サーバーは普及して当たり前の技術になっており,普通の道具としてみるべきであり,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの利用行為主体は利用者であると解すべきである。
・ ロクラクⅡ事件判決の結論は,当該ケースについての利用行為主体の認定を行ったものであり,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの利用行為主体の判断には影響がないと解すべき。
(2)「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」(第30条第1項)該当性
ロッカー型クラウドサービスによる著作物の利用については,「個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」(第30条第1項)を超えるのではないか,という観点から,権利者から,第30条の立法趣旨は,閉鎖的な範囲内の零細な利用を許容するものであって外部の者を介入させる複製を認めないこととされている以上,仮に利用行為主体が利用者であったとしても,第30条第1項本文該当性が否定されるのではないかとの意見が示された。
しかしながら,有識者からは,第30条第1項本文の趣旨は,利用者自身以外の者が主体的に関与することを否定するものであり,外部の者が関与したからといって直ちに第30条第1項本文該当性は否定されるものではないとの意見が示された。
なお,タイプ2のロッカー型クラウドサービスに付加された共有機能を使って,利用者がコンテンツを個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内を超えて共有する場合は,私的使用目的の複製とはいえず,権利者の許諾を得ない限り著作権侵害となる。
報告書P.13-14
利用行為主体は誰かが議論されたということですね。利用行為主体が事業者だというには、下記の3要件を満たさなければならないとされています。
①コンテンツを事業者が提供している,
②機器を利用者が操作することにより自動的にコンテンツの複製が行われる,
③複製に供する機器を事業者が提供している,
利用者がコンテンツ提供している場合、①を満たさないということで、利用行為主体は事業者でなく、利用者であるということです。
他にもいろいろ言及ありますが、主要な部分はこんなところでしょうか。私的使用の権利制限も、タイプ2のロッカー型クラウドサービスでは、他人がサーバを用意してくれますが、それだけでは、利用者の主体性は即、否定されるわけではないようです。
3 制度整備の必要性 以上のように,タイプ2の枠内で行われる利用行為については,基本的には,利用行為 主体は利用者であり,当該利用者が行う著作物の複製行為は,私的使用目的の複製(第30条第1項)であると整理することができ,権利者の許諾を得ることは特段不要23である との意見で一致した。 ただし,個々のサービスにおける利用行為主体の判断を含め,私的使用目的の複製と判 断されるか否かについては,当該サービスに含まれる全ての機能及び提供態様等を全体と してみた上で,個別の事案ごとの事実認定に基づいて総合的に判断されるものと解される。 タイプ2を対象とする制度の整備の必要性については,事業者から,例えばイギリスの ようにタイプ2のロッカー型クラウドサービスについて要件を限定した形で法改正を行う こと(詳細は17頁【参考】)については,そのような限定のもとで行われる複製は私的使 用目的の範囲内であると解されるため,この部分を限定的に立法する必要はないとの意見 や,仮にそのような限定的な立法を行うと,反対解釈により他のサービスの適法性が不明 確になるのではないかといった危惧が示された。また,権利者からは,私的使用目的の複 製の範囲内と整理されるタイプ2については,許諾の対象とはしないとの意見が示された。 さらに,有識者からは,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関 与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるというのが最高裁の立場である24ということを前提とすると,抽象 的に切り分けを行うことは難しく,特に今後どのような技術が進んでいくのかわからない 状況の中で,現時点で明文の規定を置くというのは,かえって様々な弊害も生み出しかね ないのではないか,という意見や,私的使用目的の複製の主体は事実認定の問題であり, 立法にはなじまないとの意見も示された。 以上の議論等を踏まえた結果,現時点においては,タイプ2において行われる複製等の 行為について,権利者の許諾が不要であることを明らかにするような制度整備(例えば, 権利制限規定を創設する等の法改正)を行う必要性は認められなかった。
報告書P.15
こちらにもある通り、原稿でも不備はなく、この後の技術の発達がどうなるか分からないから、不要な制限をかけないように法改正を急ぐ必要性はないとされています。
これで、私的使用の権利制限は今までと変わっていないのに、クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為は今まで通り、私的使用の権利制限の範囲と考えても差し支えないことを確認できました。
これで私もなんとなく説明できるようになるかと思います。少なくとも、これら資料に立ち返ればいいことが分かりましたので、安心感が増しました。
まとめに代えて本日の痒いところ
- クラウドに他人の音楽をアップロードする行為は、条文からは直ちに私的複製と読めない
- 利用行為主体が事業者とされるのは3要件を満たす場合
- 外部の者が関与しても、30条1項の該当性は直ちに否定されない
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週も知財の雑談を楽しみましょう。
今週は私的使用について雑談するのはいかがでしょうか?新しい問題は起きていませんか?