IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『SARTRAS、SARLIB、SARAH、頭の「SAR」は何の略なのか』[リッキー]

著作権の関連団体に「SAR」の三文字が頭についていることにお気づきでしょうか?

 

一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)

一般社団法人図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)

一般社団法人私的録音録画補償金管理協会(sarah)

 

CD DVD

 

一般社団法人とあるので、単純に英語表記にすると” general incorporated association”となりそうな気もするのですが、”SAR”です。”SAR”とは何の略なのでしょうか?

 

一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS、サートラス)は、

Society for the Administration of Remuneration for Public Transmission for School Lessons

 

一般社団法人図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB、サーリブ)は、

Society for Administration of Remuneration for Public Transmission by Libraries or Similar Facilities

 

一般社団法人私的録音録画補償金管理協会(SARAH、サーラ)は、

Society for the Administration of Remuneration for Audio Home Recording

 

です。

 

これらからわかるのは、”SAR”は、“Society for the Administration of Remuneration”の頭文字です。“Society for the Administration of Remuneration”を日本語訳すると、「報酬管理団体」であり、「一般社団法人」よりも「補償金等管理協会」「補償金管理協会」を強調して(?)訳したものだということがわかります。

 

著作権の勉強をすると、これらの横文字は平気で飛び交ってくるので、最初のうちは何のことを言っているのかがさっぱりわかりませんでした。ものすごい参入障壁に感じたものでした。ただ、慣れてくると、こういったアルファベットの文字列は楽でいいですね。

 

あと、かつては、SARVH(サーブ)という団体もありました。一般社団法人私的録画補償金管理協会と日本語にすると、あー、あれか、と思う人も多いと思います。CDとかDVDに課金されていたあれです。

 

SARVHは、“Society for Administration of Remuneration for Video Home Recording”の略です。そして、1999年(平成11年)に設立。2015年(平成27年)4月1日に解散していました・・・解散していた!?

 

SARVHの後継が、SARAHと言えましょう。CD、DVDのブルーレイディスク版です。

 

ところで、なんでこんな記事を書いているかと言いますと、著作権についてAIと壁打ちをしている際に、”SARLIB”の話になりました。その壁打ちの際に、“SURLIB”とタイポをしていたので、AIが「“SURLIB”ってなんですか?」と聞き返してきたので、「あれっ!?知らないの?」と意気揚々となったからです。

 

それで記事を書こうと思っていたら、“SURLIB”とタイポをしていることが判明。”SARLIB”とちゃんと書いていたら、AIもちゃんと壁打ちを続けられたのだろうなと、思いました。

 

それでも苦し紛れですが、”SARLIB”と“SURLIB”、”A”と”U”の一文字のタイポですが、普段ならこのタイポを補足して、「一般社団法人図書館等公衆送信補償金管理協会のことですね」、と答えてくれそうなところを、「“SURLIB”ってなんですか?」と聞き返してきたことは意外でした。

 

これで、みなさんも、「補償金等管理協会」「補償金管理協会」は、”SAR”という表記だということが印象に残ったでしょうか?

 

AIからの講評はこうでした。

「一般的な単語なら誤字を直せても、略称は似た別物がある可能性があるので、確認する方が正しい挙動ではあります。」

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

  • SARは“Society for the Administration of Remuneration”の略

 

  • かつてSARVH(私的録画補償金管理協会)という団体もあった

 

  • AIは一文字のタイポを補ってくれないこともある

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

今週は文化庁の指定団体について雑談するのはいかがでしょうか?

 

 

著作権の雑談『若いキャラしか作れないVRoidで、おじさんキャラを作る努力に創作性はあるか』[リッキー]

Vtuberを作ってみたくなりまして、2周か、3周遅れだと思いますが、

Vtuber作成


にチャレンジしました。

 

 

 

参考にさせていただいたのは、こちらのYouTube動画です。

 

youtu.be

 

こちらの動画の公開が2024年でしたので、そこから2年経っていますので、2周か、3周遅れだと書いたのですが、ほんとのところはどうなのでしょうか?

 

VRoidを使ってみました。

vroid.com

 

VRoidでは若いキャラクターが多く、中身はおじさんなのでなんだか気が引けてきました。むしろ、オジサンキャラなんて一人もありませんでした。世の中、オジサンは望まれていないことがよくわかります(笑)

 

そこで、ふと思ったことがあります。VRoidは、若いVtuberを作るソフトだから、これでオジサンキャラをつくろうと努力することには創作性が認められることがあるのではなかろうかと。

 

この仮説を持ちながら、Vtuber作成を始めました。

 

ただ、VRoidの使い方もよく分かりませんので、これはAIの力を借りながら進めていくことになります。オジサンキャラの作り方をAIに聞いてみました。

 

VRoidのプリセットは全体的に若いので、放っておくと20代のアバターができます。これは避けてください。経験に基づく読みを売りにするチャンネルで、見た目だけ若いのは損です。声とのギャップも出ます。

 

ただし、顔のパーツで年齢を作ろうとすると、たいてい失敗して疲れた顔になります。年齢感は顔ではなく、髪型・服・彩度で出すのが正解です。

 

髪は短めか、まとめた形。動きのある毛先を減らす

彩度を全体に落とす。鮮やかな色が減るだけで、一気に落ち着きます

目はやや小さめ、目尻を下げすぎない

眼鏡はそのまま推奨

 

 

ここの記述から、実は上述の仮説を持ったのです。

他にもオジサンキャラをつくるためのアドバイスを受けました。

 

  • 生え際をあげる
  • 眉を太く、目に寄せる
  • 目は小さめ、低めに
  • こうれい線を描く
  • あごを広く角ばらせる

 

なんか、悲しくなることも書いてありましたが、これらがオジサンらしさを出すとくちょうなのかと逆に、新鮮さがありました。人間は、これらの要素を瞬時に判別して、この人はオジサンらしいと判断しているのでしょうかね。

 

そして、100以上あるパラメータをいじくっていくのですが、これもまた何をどうしたらいいのか、さっぱりわかりませんので、AIに聞いてみました。その一部をご紹介します。

 

## 1. 形状スライダー(最優先・ここが本丸)

まずこれを全部上げます。細部調整より先。

| パラメータ | 値 |
|---|---|
| 顔の形状 (男性) | 1.000(設定済み) |
| 輪郭の形状 (男性) | 1.000 |
| 頭部の形状 (男性) | 1.000 |
| 眉の形状 (男性) | 1.000 |
| 鼻の形状 (男性) | 1.000 |
| 目の形状 (男性) | 0.800 |
| 口の形状 (男性) | 0.800 |

 

 

いわれた通りに、パラメータを入れていきます。ここの作業で思ったことは、先ほどのVRoidで若いキャラクターしかいない場でオジサンキャラを作る発想は、創作性がありそうだし、実際にキャラとして描かれれば、著作物性を主張できそうな気がしました。

 

AIに頼る前に、YouTube動画内を検索して、オジサンキャラの作り方の解説動画がないかと思い、探しました。オジサンはなかったのですが、かっこいいおじいさんキャラを作る解説動画はありました。あれも、みているだけで時間がかかりそうで、このおじいさんも創作性を認められるのではないかと思いました。

 

おそらく、権利範囲は認められてもデッドコピーを排除できるぐらいかとは思いましたが。

 

ところで、このパラメータを入れる作業。AIにいわれたままに、数値をいれるだけなので、創作性ゼロだなと思いながら作業していました。数値をいれるとわずかに何かが変わっているのですが、悲しいことに、とても素人にはその差が分かりませんでした。

 

さらに、途中の画像をAIに渡して、壁打ちしながら、進めていきました。例えば、こんな指示をうけがなら。

 

 

1. 前髪(これが最大)

9章の2〜4がまだ効いていません。額が完全に隠れています。 生え際が一切見えない状態は、それだけで若さの記号です。ここを直すだけで体感が一番動くので、他を触る前にここだけやってみてください。

 

 

 

ただ、AIの指示はなにをどうしたら、この大切な前髪を上手く調整できるのかさっぱりわかりませんでした。結局は、もともとあるひな型から一つ選んで、髪の毛の束をひとつずつ選択して、短くしていくという作業を繰り返しました、かなり地道な作業でしたが、AIには、これならば、ほうれい線を描かなくても、十分にオジサンらしくなったとおほめの言葉をいただいて、VTuber作成を終えました。

 

もしかすると、YouTubeのどこかに転がっているかもしれません。見つけた方は、コメントください(笑)

 

このように、リッキーは、日常生活の中のどこで、創作性を発揮する機会があるのか常にアンテナを張りながら生活しています。また、気づきがありましたら、記事にしたいと思います。

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

  • 若いキャラのプリセットしかない場で、おじさんキャラを作ろうとする発想自体に創作性がありそう

 

  • AIに言われた数値を入れるだけの作業に、創作性はあるのか

 

  • オジサンキャラづくりに、最後に効いたのは、髪の束を一つずつ短くする地道な手作業だった

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう。

今週は、創作性について雑談するのはいかがでしょうか?おじさんキャラでもいいですけれども・・・。

 

著作権の雑談『著作権の本を読んでいたら、「制作」と「製作」の使い分けを学んでしまった』[リッキー]

公益社団法人著作権情報センター(CRIC)が発行する、『ライブイベント・ビジネスの著作権(第2版)』を読んでいます。

 

そこで、気になったことをご紹介したいと思います。

 

本書の中に『プロデューサー/主催者②』(150-151頁)と小見出しがありました。まさか、漢字の勉強をここでするとは・・・と思いました。目からうろこでした。

 

プロデューサー

 

映画の場合、著作権法でも個人の役職を“衣”のない「制作者」と記載し、製作費を負担して製作に最終責任を負う映画プロダクションなどを“衣”のある「製作者」と記載して両者を区別し、権利のうえでも違った取り扱いをしています。簡単にいえば、「制作者」は映画の著作者のひとりとなり、「製作者」は多くのケースで映画の著作権者となります。

 

今まで、“衣”のない「制」と“衣”のある「製」って、どう使い分けようかな?と文字を書くときに悩んでいました。ものづくりですと、『製造』ですから“衣”のある「製」の字をとりあえず、と見よう見まねで、漢字を使っていました・・・お恥ずかしい。

 

ただ、今回のこの学びにより、使い方がハッキリしました。

 

それで気になるのは、著作権法の条文はどうなっているのか??映画に代表的な条文を2つ挙げてみましょう。

 

 

 

(映画の著作物の著作者)

第十六条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。

 

「制作者」は映画の著作者のひとりとなることが読み取れそうです。

 

第二十九条 映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。

 

『その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、』とあるので、この約束はおそらくお金の場合が多いでしょう。製作費を負担して製作に最終責任を負う映画プロダクションなどを“衣”のある「製作」の文字が登場しています。

 

また、『映画の著作物の著作権は、・・・、当該映画製作者に帰属する。』とあるので、お金を出した人には映画の著作物の著作権が帰属することも読み取れ、「製作者」は多くのケースで映画の著作権者となることと一致します。

 

すごい!“衣”のない「制」と“衣”のある「製」ってこう使い分けるのですね。

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

  • “衣”のない「制作者」は映画の著作者のひとりになる

 

  • “衣”のある「製作者」は多くの場合、映画の著作権者になる

 

  • 条文でも書き分けられている

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

今週は、“衣”のない「制」と“衣”のある「製」の漢字の使い分けについて雑談するのはいかがでしょうか?知財人らしいですよね??

著作権の雑談『小学校の体育館で先生が操作していた4色の照明に、著作物性はあるのか』[リッキー]

公益社団法人著作権情報センター(CRIC)が発行する、『ライブイベント・ビジネスの著作権(第2版)』を読んでいます。

 

そこで、気になったことをご紹介したいと思います。

 

本書の中に『照明家-照明プランは著作物か?』(140-141頁)と小見出しがありました。

 

単にステージを最初から最後まで明るくする照明プランは、さすがに、著作物性が認められにくいかなという印象があります。

 

ふと、思い出すのが、幼稚園、小学生ですとか高校生でやった演劇です。(中学校はやった記憶がありません)

 

照明を操作する先生

 

たとえば、小学校ですと、体育館のステージで演劇をする時は、先生が体育館の横の高いい場所(バスケゴールの裏などの箇所)で、照明の器具を操作してくれていた覚えがあります。だいたいRGBに白を足した4色でしょうか?

 

とはいっても、光源が白で、RGBのフィルタが入って、白の場合はフィルタなしのような記憶です。

 

演劇の台本にはきっと、どこで、何色とか指示があったのだと思います。それが私のイメージできる照明プランです。

 

ちょっと4色程度ですと、単にステージを最初から最後まで明るくする照明プランよりはましだとしても、選択の幅などの考え方を持ち出すと、やはり著作物性があるのか?疑問が残ります。

 

これからのシーズンは、いろいろと照明が活躍する季節になりますね。特に、クリスマスシーズンなどは。そのクリスマスの電飾は、照明プランとは離れてしまうかもしれませんが、選択の幅などの考え方を持ち出すと、創作性が認められて、著作物になりやすいように思います。

 

クリスマスの照明

 

ただ、著作権のおよぶ権利範囲も、そのもののデッドコピーなどに狭くされそうな気がします。その会場に自生している木々に電飾を施した場合には、その木々のもともとの形状に基づいて電飾がなされそうですので、これだけの違いでも、デッドコピーとはいえないと反論が出てきそうだなと思います。

 

他にも、著作権界隈の弁理士の中には、音楽を得意としている弁理士がいます。その弁理士は、自身でもライブをして、照明担当の方にこんな風に照らしてとか、リハーサルの時に調整するのだそうです。そこに関して、著作物性があるかどうかという直感的な質問をすると、回答は、NOでした。

 

ご自身で指示する照明プランは、ありふれた範囲にとどまるという感想なのだそうです。

 

また、状況や器具によって毎回変わる照明を芸術性や著作物として認めるのは、ありふれた表現の範囲を超えるのが難しく現実的ではない、という見解の弁理士もいました。

 

やはり、本書にあるように、照明プランに著作物性を認めることに躊躇する人は、身の周りでも多そうな気がします。

 

なお、本書には、『それが表現としてあまりにも刹那的なものだからかもしれません』、とありました。

 

一方、照明プランに著作物性を認めることに肯定的な意見もあります。

 

舞台芸術の公演映像配信のための権利処理マニュアル

 

令和2年度文化庁委託事業「文化芸術収益力強化事業」/全国公立文化施設協会

 

https://www.zenkoubun.jp/publication/pdf/vd_manual.pdf

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

  • 単にステージを明るくするだけの照明プランは、著作物性が認められにくい

 

  • クリスマスの電飾は創作性が認められやすそうだが、権利範囲は狭くなりそう

 

  • 照明プランの著作物性に躊躇する人は、実務家の中にも多い

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

来週も知財の雑談を楽しみましょう♪

舞台照明について雑談するのはいかがでしょうか?

 

 

著作権の雑談『マイクラウドに音楽をアップロードするのは公衆送信なのに、なぜ私的複製で済むのか』[リッキー]

みなさん、クラウドストレージは使っていらっしゃるでしょうか?

 

クラウドストレージ

 

そのクラウドストレージに、他人のHPスクショなどを保存していたりしませんか?また、他人の音楽、他人の撮影した画像や動画もです。

 

著作権法の条文の頭から見ていくと、他人の音楽等をアップロードする行為は、公衆送信となります。もちろん、公表されていること前提です。

 

そういわれたら、そうだなと、思われた方もいるかもしれません。私もつい最近まで、そうだなと思っていました。でも、著作権法に反している感じはしませんでした。

 

それは、私的使用のための複製は、著作権の権利制限規定に該当するからです。

 

クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為が、私的使用のための複製に該当するとは、条文上、直ちに読むことはできませんでした。

 

おそらくそうなんだけれども・・・、と資料を探したらありました!!

 

著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会

「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/41/pdf/shiryo_4_2.pdf

 

報告書によれば、クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為が、私的使用のための複製に該当するとの結論に至っている。また、法改正も現在のところ不要であるとの結論です。

 

しかし、どのような議論からそうなったのかは、気になるところです。そこで、この報告書が出る直前の、文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第10回)の報告書を見てみましょう。

 

小委員会 (第10回)の報告書

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hogoriyo/h26_10/pdf/shiryo_1.pdf

 

資料の中で、クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為は、『タイプ2のロッカー型クラウドサービス』に該当します。

 

以下、抜粋です。

 

 

2 現行著作権法との関係

(1)利用行為主体

タイプ2のロッカー型クラウドサービスにおける利用行為主体については,[1]当該ク

ラウドサービスを提供している事業者であるとする見解と[2]当該クラウドサービスを

利用している利用者であるとする見解が示された。

すなわち,権利者からは,タイプ2のロッカー型クラウドサービスは,事業者が営利活

動として利用者に複製の場を提供しているサービスであるという点に着目すれば,このよ

うなサービスは私的使用目的の複製の範囲を超えるものであり,[1]利用行為主体は事業者であると評価されるべきとの見解が示された。

他方,有識者からは,以下の意見等,タイプ2の枠内で行われる利用行為については,

基本的には,[2]利用行為主体は利用者であるとする意見が示された。

・ 事業者の利用行為主体性が認められるのは,①コンテンツを事業者が提供している,②機器を利用者が操作することにより自動的にコンテンツの複製が行われる,③複製に供する機器を事業者が提供している,という三つの要件を満たした場合であり,これをタイプ2のロッカー型クラウドサービスに当てはめると,①の要件が満たされないため,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの利用行為主体は利用者と解すべきである。

・ サーバーは普及して当たり前の技術になっており,普通の道具としてみるべきであり,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの利用行為主体は利用者であると解すべきである。

・ ロクラクⅡ事件判決の結論は,当該ケースについての利用行為主体の認定を行ったものであり,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの利用行為主体の判断には影響がないと解すべき。

(2)「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」(第30条第1項)該当性

ロッカー型クラウドサービスによる著作物の利用については,「個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」(第30条第1項)を超えるのではないか,という観点から,権利者から,第30条の立法趣旨は,閉鎖的な範囲内の零細な利用を許容するものであって外部の者を介入させる複製を認めないこととされている以上,仮に利用行為主体が利用者であったとしても,第30条第1項本文該当性が否定されるのではないかとの意見が示された。

しかしながら,有識者からは,第30条第1項本文の趣旨は,利用者自身以外の者が主体的に関与することを否定するものであり,外部の者が関与したからといって直ちに第30条第1項本文該当性は否定されるものではないとの意見が示された。

なお,タイプ2のロッカー型クラウドサービスに付加された共有機能を使って,利用者がコンテンツを個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内を超えて共有する場合は,私的使用目的の複製とはいえず,権利者の許諾を得ない限り著作権侵害となる。

報告書P.13-14

 

 

利用行為主体は誰かが議論されたということですね。利用行為主体が事業者だというには、下記の3要件を満たさなければならないとされています。

 

 

①コンテンツを事業者が提供している,

②機器を利用者が操作することにより自動的にコンテンツの複製が行われる,

③複製に供する機器を事業者が提供している,

 

 

 

利用者がコンテンツ提供している場合、①を満たさないということで、利用行為主体は事業者でなく、利用者であるということです。

 

他にもいろいろ言及ありますが、主要な部分はこんなところでしょうか。私的使用の権利制限も、タイプ2のロッカー型クラウドサービスでは、他人がサーバを用意してくれますが、それだけでは、利用者の主体性は即、否定されるわけではないようです。

 

 

3 制度整備の必要性 以上のように,タイプ2の枠内で行われる利用行為については,基本的には,利用行為 主体は利用者であり,当該利用者が行う著作物の複製行為は,私的使用目的の複製(第30条第1項)であると整理することができ,権利者の許諾を得ることは特段不要23である との意見で一致した。 ただし,個々のサービスにおける利用行為主体の判断を含め,私的使用目的の複製と判 断されるか否かについては,当該サービスに含まれる全ての機能及び提供態様等を全体と してみた上で,個別の事案ごとの事実認定に基づいて総合的に判断されるものと解される。 タイプ2を対象とする制度の整備の必要性については,事業者から,例えばイギリスの ようにタイプ2のロッカー型クラウドサービスについて要件を限定した形で法改正を行う こと(詳細は17頁【参考】)については,そのような限定のもとで行われる複製は私的使 用目的の範囲内であると解されるため,この部分を限定的に立法する必要はないとの意見 や,仮にそのような限定的な立法を行うと,反対解釈により他のサービスの適法性が不明 確になるのではないかといった危惧が示された。また,権利者からは,私的使用目的の複 製の範囲内と整理されるタイプ2については,許諾の対象とはしないとの意見が示された。 さらに,有識者からは,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関 与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるというのが最高裁の立場である24ということを前提とすると,抽象 的に切り分けを行うことは難しく,特に今後どのような技術が進んでいくのかわからない 状況の中で,現時点で明文の規定を置くというのは,かえって様々な弊害も生み出しかね ないのではないか,という意見や,私的使用目的の複製の主体は事実認定の問題であり, 立法にはなじまないとの意見も示された。 以上の議論等を踏まえた結果,現時点においては,タイプ2において行われる複製等の 行為について,権利者の許諾が不要であることを明らかにするような制度整備(例えば, 権利制限規定を創設する等の法改正)を行う必要性は認められなかった。

 

報告書P.15

 

こちらにもある通り、原稿でも不備はなく、この後の技術の発達がどうなるか分からないから、不要な制限をかけないように法改正を急ぐ必要性はないとされています。

 

これで、私的使用の権利制限は今までと変わっていないのに、クラウドストレージに、他人の音楽等をアップロードする行為は今まで通り、私的使用の権利制限の範囲と考えても差し支えないことを確認できました。

 

これで私もなんとなく説明できるようになるかと思います。少なくとも、これら資料に立ち返ればいいことが分かりましたので、安心感が増しました。

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

  • クラウドに他人の音楽をアップロードする行為は、条文からは直ちに私的複製と読めない

 

  • 利用行為主体が事業者とされるのは3要件を満たす場合

 

  • 外部の者が関与しても、30条1項の該当性は直ちに否定されない

 

  • 30条1項の法改正は不要とされた

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう。

今週は私的使用について雑談するのはいかがでしょうか?新しい問題は起きていませんか?

 

 

特許の雑談『明確性要件をクリアしたら、今度は単一性違反で審査してもらえなくなった』[リッキー]

最近また審査の傾向が変わったかなと思うことがありました。

 

風向き

 

記載不備、特に、明確性要件違反がある場合でも、並行して、新規性、進歩性の審査をしてくれていたのは、一昔前のことになったなぁと思います。

 

ここ1,2年でしょうか、明確性要件違反がある場合は、並行して、新規性、進歩性の審査をしてくれなくなりました。明確性要件違反が解消してから、新規性、進歩性の審査をしてくれていたようでしたが、ほぼ特許査定がもらえた記憶しかありません。

 

なので、この場合も、明確性要件をクリアすれば、特許査定されるから、まあいいかと思っていました。

 

そうしたら、最近また、傾向が変わって来たなと思い始めました。

 

最初の拒絶理由では、明確性要件違反がある場合は、新規性、進歩性の審査をしてくれないのはこれまで通りです。そして、明確性要件をクリアすると、今度は、最後の拒絶理由通知が来るようになりました。拒絶理由は何か?『単一性違反』です。

 

強烈な違和感があるのは、明確性見てくれていた請求項を、今度は、単一性が無いから審査しないんですか!?どういう理屈??ということが起き始めました。

 

まあ、こんな審査をしていけませんとはどこにも書かれていないから、審査官の裁量権の範囲なのでしょう。

 

また、もともと、新規性、進歩性の審査をしていなかったから、初めての審査と変わりないよねというのが審査官の感覚なのかもしれません。これは、出願人や代理人とは、異なる感覚だと思います。

 

そして、面白いことに、ある件は、STFを明示して、請求項1と明確性要件違反のあった請求項とはSTFが違うから、単一性がないと判断されました。別件は、STFを明示せずに、請求項1と明確性要件違反のあった請求項とはSTFが違うから、単一性がないと判断されました。

 

ここで、明確性要件違反のあった請求項は、独立請求項にしています。ここに一因があるかもしれないとは思っています。

 

さて、別件は、STFを明示していないのに、単一性がないと判断はできるのでしょうか?

 

上記のある件では、引例1と引例2を組み合わせて進歩性なしと判断されていました。なので、別の従属項を新請求項1に含める補正をしていましたが、STF認定された部分が、もともとの請求項1の部分ではなくて、新請求項1に追加した別の従属項でした。

 

そもそも、このSTFという存在自体が、まだまだ未知数なのですよね。。。新規性はあるけど、進歩性はない。その中間という認識なのです。わかったようで、わからない。

 

ある件では、もともとの請求項1が進歩性なしと審査されているわけですから、新規性はあるけど、進歩性はない。その中間であるはずの、STFは存在している。なので、もともとの請求項1全体がSTFと言えるはずなのですが、なぜか?、新請求項1に追加した別の従属項にSTFがあるらしい。

 

STFは、1つの構成要素とされるべきだという見解もあるかもしれません。ただ、もともとの請求項1に、引例1にも引例2にもない、引例1と引例2を組みあわせるときに必要な新たな構成を明示してしまうと、それはもう進歩性ありになってしまうかもしれません。

 

審査では、どうも、引例1と引例2を組みあわせたものを、2回目の拒絶理由では、あたかも1つの文献に記載されていたかのように扱う傾向があり、もともとの請求項1が新規性ないしであったかのような取り扱いをされることが散見されます。

 

ちょっと話は反れますが、よく、進歩性の判断で、容易の容易は容易なのか?という議論がなされます。2回目の拒絶理由で、もともとの請求項1が1つの文献に記載されていたかのように扱い、そこに引例3を組み合わせて、さらに進歩性なしと審査することをいいます。ここでは、もともとの請求項1が1つに記載されている架空の文献と引例3の組み合わせができるかだけが論じられます。

 

これと同じで、1回目の拒絶理由では、引例1と引例2を組みあわせてかろうじて請求項1の発明に論理付けできた割に、2回目の拒絶理由では、引例1と引例2を組みあわせがあたかも1つの文献に記載されていたかのように扱う、不当、見逃せません。

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

  • 明確性要件をクリアした後に、単一性違反で審査してもらえないことがある
  • STFを明示せずに、単一性がないと判断できるのか
  • 1回目は引例1と引例2の組み合わせだったのに、2回目では1つの文献のように扱われる

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

今週はSTF・単一性違反について雑談するのはいかがでしょうか?

商標の雑談『JAPAN TEA SHIZUOKA、2件の商標出願を見比べたら市町村名の有無に意味があった』[リッキー]  

みなさんは、お茶が好きでしょうか?

お茶が有名な県はどこでしょうか?

 

お茶

 

静岡県は、その一つにあげられると思います。

 

その静岡県で、佐藤可士和氏の絡むプロジェクトがあります。背景には、2024年に荒茶の生産量が首位から陥落したという危機感があるようです。

 

www.pref.shizuoka.jp

 

 

今後、多くの皆様にご活用いただけるよう、商標登録をはじめ、使用ルールの整備及び貸出準備を進めております。

早ければ今年の秋頃を予定しており、準備が整い次第、当ホームページ等でお知らせいたします。

 

との記載があります。お茶農家の方は、この商標登録出願が登録されたら、使用ルールに従い、使えるようになるのですね。

 

私が伴走している起業家がいますが、有機農家です。お茶畑もあります。これを使う意思はあるのかな?なんて思います。今度、聞いてみようと思います。

 

さて、J-PlatPatで調べてみました。

 

 J-PlatPatより

 

なんと、2つの商標登録出願があります。そして、静岡県(JAPAN TEA SHIZUOKA)出願が2026/3/11で、2026/4/14にニュースリリースされています。つまり、出願が先で発表が後です。おそらく、便乗出願を恐れて先に出願したのと、1ヶ月おいているのはその間に邪魔な商標登録出願がないか確認をしてから、満を持してのニュースリリースかと思われます。用意周到とはこのことをいうのですね。

 

標章違い

 

さて標章の違いを見比べてみると面白いことが見つかります。

 

1つ目の商標登録出願は、「JAPAN'S LEADING TEA REGION」「茶」「静岡」「JAPAN TEA SHIZUOKA」「100% SHIZUOKA FIRST FLUSH & CRAFTED」に加えて、FUJI FUJINOMIYA NUMAZU SHIMIZU RYOGOCHI... と市町村名が延々と並んでいます。

 

2つ目の商標登録出願は、「JAPAN'S LEADING TEA REGION」「茶」「静岡」「JAPAN TEA SHIZUOKA」の文字までで止まっています。

 

2つ標章の違いは、「100% SHIZUOKA FIRST FLUSH & CRAFTED」に加えて、FUJI FUJINOMIYA NUMAZU SHIMIZU RYOGOCHI... と市町村名が延々と並んでいるかいないか。これらの文字の多さで、識別力には大きな差が出ます。

 

これ、沖縄のお土産Tシャツも同じ理屈だったのです。沖縄のお土産Tシャツでいまでも見かけるのか分かりませんが、PUMAに模したシーサーのTシャツがあったと思います。これも、文字数が少ないと、識別力がないと拒絶されていたのですが、さすがに文字の面積がシーサーの図形よりも多くなってくると、識別力ありと特許庁も認めざるを得なかったかもしれません。

 

discussiong1.hatenablog.com

 

 

このように、文字を多くすると、識別力が挙がります。一方、商標権侵害をされたからと訴えたい時は、その文字があるせいで、非類似の判断をされる可能性があります。文字を足すと、識別力が上がるので、商標権侵害を認められにくくなる傾向があります。

 

指定商品役務の違い

 

さて、まだまだ、気になるところがあります。それは、指定商品役務です。

 

1つ目の商標登録出願(市町村名あり)は、指定商品役務に、3・5・16・18・20・21・24・25・29・30・32・33・35・41類が指定されています。

 

2つ目の商標登録出願(市町村名なし)は、指定商品役務に、29・30・35・43類が指定されています。

 

29・30・35類は両方で指定されています。この違いは何でしょうか?主に、29類は食品、30類は菓子、35類は小売です。43類は、2つ目の商標登録出願だけで、宿泊施設です。

 

検討してみますと、1つ目の商標登録出願(市町村名あり)は、識別力が相対的に高いので、数多くの指定商品役務が指定されています。一方、2つ目の商標登録出願(市町村名なし)は、識別力が相対的に低いので、1つ目の商標登録出願(市町村名あり)の中でも、指定商品役務の中で、識別力が出そうなものをチャレンジしている感じがあります。

 

そして、2つ目の商標登録出願(市町村名なし)の43類は、飲食物でないので、はるかに登録の可能性が高いと踏んでいるようにも見えます。

 

さらに、35類で食品全般(酒類・食肉・水産物・野菜果実・菓子パン・米穀・牛乳・清涼飲料・茶コーヒーココア・加工食料品)の小売が追加され、30類で菓子の名前が細かく列挙されています。例えば、菓子・かき氷・大福・どら焼き・もなか・ようかん・洋菓子・チョコレート・カステラ・クッキー・サブレ・シュークリーム・ドーナツ・バウムクーヘン・パウンドケーキ・フィナンシェ・マドレーヌ・アイスクリーム・パフェ・プリン・ラスク・ワッフル。どれもお茶と合いそうですが、産地限定でなくてもいい気がします。

 

ここら辺もうまくバランスを取っているのでしょうかね。

 

指定商品役務をみると、次のアクションプランが想像できます。ただ、どのように使われるか?実際に見ないと、ただの妄想なのですが、その妄想が楽しいのですよね。

 

まとめに代えて本日の痒いところ

 

 

  • 静岡県は、出願してから1ヶ月おいて発表している

 

  • 文字を足すと識別力は上がるが、権利行使はしにくくなる

 

  • 指定商品役務を見ると、次のアクションプランが想像できる

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

どんなお茶が好きか雑談するのもいいですね。