IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

弁理士「弁理士試験合格後の進路~3度の転職を振り返って~」【MI】

 おはようございます。

 いよいよ、弁理士試験最大の山場「論文式筆記試験」が一週間後に迫ってきました。受験される方、ラストスパート頑張ってください!

 ということで、短答式筆記試験の合格発表を機に始まったこの「弁理士試験合格後の進路」シリーズ。マータさん、KMさんからのバトンを引き継ぎ、私MIの場合について書かせていただきたいと思います。

簡単に私の職歴は以下のとおりです。

 新卒 :自動車部品メーカー(設計・開発部門)

 転職1:特許事務所A(弁理士資格取得

 転職2:企業知財

 転職3:特許事務所B(現在法人化)

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1.弁理士試験を受けたきっかけと1度目の転職

私が弁理士を目指した理由は、主に以下の3つです。

 理由1:特許でコンペに負けた※

 理由2:身近に税理士や社会保険労務士を目指す友人がいた

 理由3:将来、独立したいと思っていた

※「コンペ」とは、複数の部品メーカーに製品の仕様(性能や価格)を提出させた上で、調達先を決めることです。ある特許の存在下、代替技術が開発できず、受注を勝ち取れなかった経験をしました。非常に悔しかったことを今でも覚えています。

 私の場合、たまたま上記3つの理由が重なったという感じです(当時25歳くらい)。また、個人的には、理由2「ライバル(負けたくない友人)の存在」が意外と大きかったと思います。

 結果として、弁理士試験の勉強を本格化させると同時にメーカーから特許事務所へ転職、そこで弁理士資格を取得することができました。

 なお、弁理士は企業に勤務しながら取得する方が多い資格です。私は合格前に事務所に転職しました。「覚悟を決める」とか「勉強の効率を上げる」とかいう意味では効果があったと思います。が、今考えるとゾッとするところもあります(受からなかったら、、、)。

 

2.企業知財部への転職(2度目の転職)

 キッカケは一言、ある人に「企業の知財部いってみるのもいいんじゃない?」と言われたことです。これはまさに「目からウロコ」でした。というのも、「独立」を目指していた当時の自分の頭には「企業知財部に所属する」という考えがなかったからです。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ではないですが、ハッと感じるところがあり、特許事務所から企業知財部への転職を決意しました。

転職活動は以下の感じでした。

<分野について>

 特にこだわりはなく、いろいろ受けました。将来性考えて「医療系」とか「IT系」を受けましたが、落ちました。結果、縁もある自動車関係に落ち着きました。

<給料について>

 そこまで重視はしていませんでした。が、自分としては「弁理士」であることにこだわりがあったので、弁理士登録費用(¥15,000/月)は出して欲しいと交渉しました。

<転職活動自体>

 弁理士資格ありで比較的若かった(30代前半)こともあり、いろいろ引き合いはありました。弁理士資格が水戸黄門の印籠のようになることはありませんでしたが、支えにはなっていたと思います(メンタル的にも)。

 この後、再び特許事務所に戻ることとなるわけですが、この企業知財部での経験は私の中で非常に大きなものになっています。特に、企業の看板と予算の下、弁理士資格のおかげもあって、出願・権利化業務以外の重要な仕事[契約関係(共同出願契約、不実施補償契約など)、侵害関係(弁護士鑑定、社内外の関係者との調整など)]を優先的にやらせてもらえた点は大きかったです。

 

3.再び特許事務所へ(3度目の転職)

 再び特許事務所に転職したのは、昨今、様々な業界を始め弁理士業界でも問題になっている後継者不足(高齢化など、以下参照)がキッカケです。

日本弁理士会公表の会員分布状況より>

 時点:平均年齢:「会社勤務」割合:「同」数(全体)

 2012/3/31:49.04歳:19.8%:1812(9145)

 2018/3/31:50.67歳:22.8%:2550(11185)

 2020/9/30:51.78歳:24.2%:2812(11624)

 弁理士業界では、全体の弁理士数は増えているものの、高齢化や会社勤務の割合の増加が進んでいます。

<参考記事>

特許事務所の事業承継について | サムライマガジン

 弁理士会でも事業承継のための会員同士のマッチング事業に力を入れてきています。

 そんな中で1年ほど考えた結果、再び、企業知財部から特許事務所に転職することにしました。大きな事務所ではない(というか小さい事務所)ですが、特許出願・権利化業務の他、意匠・商標・調査・訴訟といろいろな案件に総合的に関われているのは自分的には合った環境かなと思っています。大きい事務所に比べると良くも悪くもシステマティックではない(と思います)ので、向き不向きはあると思います。

 

4.弁理士になってよかったこと

 先に、マータさん、KMさんもおっしゃられていたように、自分にとっては「弁理士という肩書きを名刺代わり」に、弁理士含め他の優秀な方々と関われる機会が増えたのが一番です。また、そもそも弁理士資格がなければ上記3度の転職をすることも難しかったと思います(1度目は合格前ですが、弁理士試験と関連しています)。その一つ一つで貴重な経験をすることができました。

 さらに、私は、弁理士会の委員会や会派の活動に割と積極的に参加する方で、それを通じて得られる経験も大きいです。最近はそういった活動の外でも、地元の学校や商工会で知財授業などを企画・実施していますが、なかなか弁理士以外でそういった活動をするのは難しいのではないでしょうか。

 

5.まとめ

 しかし、こうやって振り返ってみると、フラフラしていますね。。。そろそろ、腰を据えて今までお世話になった皆さんへの恩返しをしていきたいです。

 長くなってしまいましたが、私事にも関わらずここまで読んでいただきありがとうございました。では次週「弁理士試験合格後の進路」シリーズ最終回、YOさんよろしくお願いします!