IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

弁理士「特許事務所で働く私が、知財部の方にしてもらえると嬉しいこと」[KM]

私は特許事務所で働き始めて5年以上10年未満の中堅(?)弁理士なのですが、これまでに様々な企業の知財部の方と仕事をさせていただきました。今回は、それらの経験に基づいて、「知財部の方にしてもらえると嬉しいこと」についてお話させていただきます(企業から仕事を依頼される側であるクセに、自分本位な記事ではありますがご容赦ください)。

 

 1.事務所に期待しているアウトプットの形を明確にしてくださること

 まず初めに、「知財部の方にしてもらえると嬉しいこと」として挙げられるのが、この「事務所に期待しているアウトプットの形を明確にしてくださること」です。その理由は、知財部の方が私たち特許事務所に期待しているアウトプットの形は、その知財部の方ごとに異なっていると考えているからです。ざっくり言えば、「企業側から指示した以上のアウトプットをしてほしい」と思っている知財部の方と、「企業側から指示した以上のアウトプットは求めず指示した通りのアウトプットをしてほしい」と思っている知財部の方と、がいるということです。

 例えば、特許出願をする場合で説明すると、企業側から説明した発明に対して更に上位概念化などの提案を事務所側に常に求めるAさん(期待しているアウトプットの形が「提案型」)と、企業側から説明した発明に対してそのような上位概念化などの提案を事務所側に求めない(期待しているアウトプットの形が「従順型」)Bさんと、がいるということです。

 それでなぜ「事務所に期待しているアウトプットの形を明確にしてくださる」と嬉しいかというと、そうした意思表示を明確にしてくださった方とは、お互いにとって良い仕事ができたケースが多かったからです(あくまで主観です)。

シンプルな人間関係のイラスト(棒人間)

 例えば、これまでに、「こちらから発明の説明はしましたが、我々は知財の専門家ではないので、より良い特許になるように事務所側からもどんどん提案してください。」といったコメントや、「こちらから説明した発明を上位概念化することなく請求項を作ってくださいませんか。でないと、この発明が請求項にきちんと含まれているか上司が判断できないので」といったコメントをいただいたことがあり、そのときは、こちらも「提案型」か「従順型」のどちらで仕事をすれば良いか明確に判断できたため、その後の仕事の進み方もスムーズでした。

 まぁそもそもこの仕事は「提案型」であることが基本だと思っていますが、「従順型」を望まれる知財部の方もボチボチいらっしゃいます(ご本人が自覚してる場合と無自覚の場合とありますが)。ただ、「提案型」と「従順型」のどちらがいいですか?とはなかなか聞きにくいため、知財部の方からそのあたりを明確に示してくださるとありがたいです。はい、私のワガママです。

 

 2.発明者の方をうまく誘導してくださること

 2つ目に挙げられるのは、「発明者の方をうまく誘導してくださること」です。発明者の方が発明の内容を説明してくださっているとき、特許的に見て発明の肝である部分からあまり重要でない部分の方へ話のフォーカスが移ってしまうことがあります。このようなとき、一生懸命説明してくださっている発明者の方の話を遮るのは気が引けるのですが、そこで同席されている知財部の方が、発明の肝である部分へ話のフォーカスが戻るよう「発明者の方をうまく誘導してくださる」とたいへん助かります。これも私のワガママですね。困ったら自分で発明者の方を誘導すればいいんですから。

 

.感謝の言葉をくださること

 3つ目は、シンプルに「感謝の言葉をくださる」と嬉しいです。知財部の側で難しいと判断されていた案件を処理できたときや、期限の短い案件に対応したときに、書面や電話などで定型的ではない感謝の言葉をいただくと、「この知財部の方のために次回も頑張ろう。」と思います。少なくとも私は単純なのでそのように思います。

 

.雑談

 そして最後は、少々の「雑談」があると嬉しいです。仕事を通して分かる人となりもありますが、「雑談」を通して分かる人となりもあると思っているからです。企業側から依頼されて特許事務所がその依頼に応えた仕事をするという一連の流れがあり、その際に特許事務所がクオリティの高い仕事をすることによって初めて信頼関係が生まれます。その前提があったうえで、更に「雑談」を通してお互いの人となりを理解していた方がより良い仕事ができるのではないかと考えているため、私は少々の「雑談」がある方が嬉しいと感じます。令和生まれの現代っ子はそんなこと考えないかもしれませんが、令和より前に生まれた年寄りの私は、仕事を進めるにあたり、まだまだそうしたウェットな部分を捨てられません。

 

.まとめ

 以上、私にとっての「知財部の方にしてもらえると嬉しいこと」でした。この記事を書くために、自分にとっての「知財部の方にしてもらえると嬉しいこと」について振り返りましたが、同じように、知財部の方にとっての「特許事務所の人にしてもらえると嬉しいこと」もあるワケで、それをきちんと意識して仕事しなきゃと改めて思いました。2020年も残り1ヶ月、お客さんに喜ばれる仕事がしたいものです。