IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『生成AIの賛否~こんな意見があります~』[リッキー]

 

口述試験の受験者の皆様、口述試験お疲れ様でした!!!あとは、果報は寝て待てですね。

 

弁理士の合格同期の中には、受験地、プリンスパークタワー東京の名称を見ると、冷や汗が出てきてしまう人もいます。

 

10年過ぎた今でも待合室の雰囲気などもよく覚えているのですが、よほど印象に強く残っているみたいです。

 

さて、パブリックコメントの募集が始まってから2週間以上過ぎました。

 

どのような意見が出ているかをリアルタイムに見ることはできないのですが、ちょうど文化審議会が10月16日に開催されました。

 

そこの資料には、パブリックコメントとドンピシャな発言もなされたと思われます。

 

有識者として、新聞社、情報通信機構、うめ・小沢高広氏が文化審議会で発表をしています。

 

発表

新聞社の発表

 

生成AIの著作物無断学習は「利益侵害」、新聞協会が著作権法の改正訴え…文化審議会小委 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 

新聞社は、30条の4を嫌っているようです。

 

法改正を示唆していました。

 

新聞社の主張は、生成AIが新聞記事等を学習して、操作者の質問に答えてしまうので、利益を不当に害されているというものでした。

 

それって、30条の4の但し書きに該当するので、裁判でもしたら?って思うのですが、法改正を求めてきています。

 

これって、裁判するのが面倒だから、制度を変えてくださいってお願いなのかもしれませんね。

 

条文に問題があるわけではないので、そういう要望は通りにくいのかなと思います。

 

AIによる「学習」を著作権者が拒否できる、もしくは、利用時には許諾を得る仕組みの整備が必要

 

これは、著作権法の目的である、利用と保護のバランスに欠けるのではないでしょうか。

 

そもそも事実を記載しただけでは、創作性はありませんし、そのような記載を保護するとなると、一般の生活に支障をきたしますので、バランスが悪いと言わねばなりません。

 

 

情報通信機構の発表

 

著作権侵害チェックツールについての技術的課題が挙げられています。

 

技術課題1つ目

 

レーベンシュタイン距離というのがあるそうです。2つの文字列がどのくらい異なっているかの距離の一種のようです。

 

これには閾値を与えなければならないようで、この数値をどれくらいにするのかが技術的課題の一つだそうです。

 

技術課題2つ目

 

単語の置換と挿入とで重みを変える必要があるかというのも技術課題だそうです。

 

技術課題3つ目

 

レーベンシュタイン距離をどの単位で計算するのかという技術課題だそうです。文単位なのか?どうなのかですね。

 

その他技術課題

 

同義語の置換への対応、翻案への対応が困難というのもあります。

 

そもそも創作性のある文章が生成されたかどうかを判断するのは難しいかなと思います。

 

前提として、創作性ありとして、著作権侵害しないように対処するのですかね?

 

現在でも、創作性は審査されるわけではないですし、裁判になって裁判所の判決が出てみなければわからないことが多々あります。

 

うめ・小沢高広氏の発表

 

漫画家さんって、こんなふうにChatGPT使っていらっしゃるのねというのが垣間見ることができて、とても面白い資料でした。

 

93954701_03.pdf (bunka.go.jp)

 

プロンプトの書き方も、へぇ~と思わされるものがあり、大変に興味深かったです。

 

私も同じものをそのまま入れて試してみたくなりました。

 

さて、どのようなご感想をお持ちなのかというと、

 

学習されることに対する忌避感はないそうです。

 

それよりも生成AIを使うメリットを魅力に思われているそうです。

 

紙+電子コミックの市場は、人手不足なようで、少しでも生成AIで人手不足を補いたいという意図なのでしょうか。

 

また、漫画作成の基本は、生成AIが登場しても変わることなく、些末な部分に生成AIが登場するだけのようです。

 

漫画家さんは、ネームの作成に一番頭を悩ませていて、絵の部分ではないようです。

 

数少ない懸念すべき可能性は「他人の作品と意図せず偶然一致してしまう」場合を挙げられていましたが、

 

これについては、相対的権利である著作権が予定するところであります。

 

これの懸念を払しょくするには、依拠性の証明が必要になりますが、

 

プロンプトを保存しておき、立証できるようにしておくことでしょうか。

 

氏も挙げられていますが、類似画像の検索を漫画家さんがするのも手かもしれません。

 

AIは、画像検索が得意ですから、AIがAIを見張るといいのかもしれません。

 

また、依拠性の対策としては、プロンプトのみならず、生成環境も保存しておく

 

ことも挙げられていました。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • 生成AIに関して法律改正を求める声もある

 

  • 著作権侵害チェックツールについて、いくつかの技術課題が存在数する

 

  • 漫画家さんはどちらかというと生成AIに寛大な感じ

 

編集後記

 

生成AIが生成した文章は要約なのか、文化審議会で質問がされたようです。

 

「新聞協会、法制度小委員会で著作権法改正の訴え」「ラノベ利用実態調査で電子のほうが高い利用率に」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #591(2023年10月15日~21日) | HON.jp News Blog

 

要約の場合は、一定の権利制限がありますので、30条の4但し書きのみならず、47条の5も関連性がありそうです。

 

個人的には、生成AIの文章生成はここでも、権利制限の範囲にあるかなと思いました。

 

実際には裁判をしないと、結論はわからないのですが・・・。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

 

リッキー

 

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