IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

意匠の雑談『グッドデザイン賞2023』[リッキー]

ちょっと前の話になりますが、グッドデザイン賞の発表が2023年10月5日(木)にありました。

 

IPRIPでも2021年にグッドデザイン賞について記事を書かせていただいています。

 

 

discussiong1.hatenablog.com

 

 

その時は、グッドデザイン賞という名称から、弁理士がいうデザインは「意匠」のことであり、デザイナーのいうデザインは「コンセプト」ことであり、この相違に気づかないと仕事がうまく進まないということに言及しています。

 

グッドデザイン賞と一口に言っても、

 

  • グッドデザイン大賞
  • グッドデザイン金賞
  • グッドフォーカスデザイン賞[新ビジネスデザイン]
  • グッドフォーカスデザイン賞[技術・承継デザイン]
  • グッドフォーカスデザイン賞[地域社会デザイン]
  • グッドフォーカスデザイン賞[防災・復興デザイン]

 

と細分化されています。

 

個人的にいいなと思ったデザインを、グッドフォーカスデザイン賞の中から3つ挙げたいと思います。

 

オーガニック肥料

 

GOOD DESIGN AWARD (g-mark.org)

 

受賞対象の詳細には下記のような記載があります。

 

「土の薬膳」は、九州大学の研究に基づいた廃棄される有機物から生まれた安全で高性能なバイオ肥料です。この製造法を活用し、地域の廃棄物をブレンドして高性能なオーガニック肥料に転換し、土壌を改善する仕組みが「地消地産コンポスト」。地域で消費された原料(=地消)でその土地の土壌を再生(=地産)させます。有機JAS認証取得済。

 

地産地消と聞くと、食物のことばかり思い浮かべてしまいます。

 

地域の廃棄物を使用して肥料にし、土壌を改善してしまうコンセプトがとてもユニークだと思いました。

 

地産地消というのはこの場合間違いで、「地消地産」というのが正解なのですね。

 

受賞企業は、株式会社金澤バイオ研究所でして、J-Platpatで検索してみると、特許出願が1件だけ検索結果としてヒットします。

 

特開2022-087743

 

防護服の特許出願で、オーガニック肥料とは関係がありませんでした。

 

今回のオーガニック肥料のような場合、特許、実案、意匠、商標を駆使して、このコンセプトを保護することはできないのかと考えてみました。

 

特許、実案、意匠、商標いずれも、コンセプトを保護対象とするものではないので、コンセプト自身を保護することはできません。

 

しかし、コンセプトから派生する商品を保護することは可能です。

 

肥料にしては、パッケージがコーヒーのパッケージのようにだいぶオシャレな感じがします。

 

誤飲しないように気を付けますが、意匠、商標の出番がありそうです。

 

また、パッケージのデザインであれば、著作権も威力を発揮します。

 

「元祖」や「純正」との標章を商標で保護することは難しいですが、著作権景品表示法を駆使すると、商標では保護できない部分まで保護を行きとどけられる可能性があります。

 

 

おトク指定便

配達



ECサービス (g-mark.org)

 

受賞対象の詳細には下記のような記載があります。

 

ユーザーの利便性を高めながら物流の多面的な社会課題の解決を目的としたデザイン。 「Yahoo!ショッピング」において、余裕のある配送日を選ぶとポイントが付与される機能を提供し、ユーザーはお得に、ストアは特日における出荷作業の分散化、配送業者は業務負荷軽減につながる三方よしな解決方法を実現。

 

ECサイトで注文すると、なるべく早く届けようとしてくれて、そういうときが多いから大変助かります。

 

ただ、3割ぐらいはあまり急いでないこともあり、翌日とかに配達してもらわなくていいんだけど、ドライバーさんも不足して大変だと聞くのにと思います。

 

そんな痒いところに手が届くサービスが登場していたことを、グッドデザイン賞で初めて知りました。

 

しかも、余裕のある配送日を選ぶと、ポイントがもらえるとは!!

 

私自身の創造を超えるサービスが考えられていて、感激でした!!

 

受賞者は、LINEヤフー株式会社です。

 

JPlatpatの検索では、まだ、LINEヤフー株式会社で検索しても名義変更が完了していないようです(2023年10月28日現在)。

 

ただ、おびただしい件数がヒットします。

 

特許4998件、意匠362件、商標678件

 

特開2018-195206

 

この出願では、個別に発送される複数の商品を、配達日が同じになるようにまとめると報酬が貰えるシステムについて記載されています。

 

これから公開されるのでしょうかね?

 

どのような出願がされているのか確認してみたいです。

 

モバイルバッテリー

モバイルバッテリー



モバイルバッテリー (g-mark.org)

 

受賞対象の詳細には下記のような記載があります。

 

本製品は世界初のリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載したPD出力対応のバッテリーです。特徴は釘を刺しても発火しない安全な電池を採用することで、火災事故を防ぎます。また電池の正極部材にコバルトを使用しない環境負荷の低い製品です。

 

ごみの分別でも、火災事故が起きるからとリチウムイオン電池をしっかり分別するように念押しされています。

 

釘を刺しても発火しない安全な電池というのは、とてもいいコンセプトだと思います。

 

ごみの分別がテキトーでもいいからという意味ではないですよ。

 

人間のエラーがあったとしても、より安全な方向に向かうからです。

 

また、コバルトという金属は、個人的に大好きな金属ではあるのですが、人権問題の温床にもあるのです。

 

コバルトの需要が大きいから、人権問題(この場合は、児童労働)をないがしろにして採掘が進められてしまうので、人権問題の温床となる物については需要が減り、大人だけがはたらく健全さがもどってほしいと思います。

 

受賞者は、エレコム株式会社なので、J-Platpatで調べるのが億劫になります。

 

しっかりした企業ですから、件数が多く出てしまうのが確実なので・・・。

 

やはり、特許173件、意匠1219件、商標390件と膨大な件数が検索結果として表示されました。

 

意匠登録1709554

 

がありますが、グッドデザイン賞のモバイルバッテリーとの関連性は定かではありません。

 

ご紹介した3つとも、SDGsとの結びつきが強いと感じています。

 

また、他のグッドデザイン賞の受賞対象も大変に魅力的なので、まだの方は是非ご覧になってみてください。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

 

  • オーガニック肥料、オトク指定便は、デザインのみならずそのコンセプトに、ユニークさ、納得感があった。

 

  • モバイルバッテリーは、人権問題への対処というコンセプトが良かった。

 

編集後記

 

古くなったハンドタオルを縫って雑巾にしたいなと思い、ミシンの購入を検討していたところ、グッドデザイン賞の素敵なミシンを発見しました。

 

家庭用電動ミシン (g-mark.org)

 

こちらはコンセプトではなく、意匠に魅力を感じました。

 

なんというか、重厚感。手回しのハンドルごっつい感じがなんとも男らしさを演出しているのか、黒いボディーも素敵です。

 

手回しのハンドルの付いているアームというか、根元の部分の太さ加減も男らしい感じがします。

 

ただ、これで雑巾縫いたいだけでは、ちょっと手を出せない感じがしています。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今週も知財の雑談を楽しみましょう!

 

 

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