IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

知財『AI時代における知的財産権』[リッキー]

 

先週からパブリックコメントが開始されています。

 

AI時代における知的財産権に関する御意見の募集について|e-Govパブリック・コメント

 

(検討課題Ⅰ)生成AIと知財をめぐる懸念・リスクへの対応等について

(1)著作権との関係

(2)著作権以外の知財との関係

(3)技術による対応

(4)収益還元の在り方

(5)その他個別課題

(ⅰ)学習用データセットとしてのデジタルアーカイブ整備に関する課題整理

(ⅱ)ディープフェイクについての知財法の観点からの課題整理

(6)社会への発信等の在り方

(検討課題Ⅱ) AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について

(1)AIを利用した発明の取扱いの在り方

(2)AIの利活用拡大を見据えた進歩性等の特許審査実務上の課題

 

 

これらについて、パブリックコメントが募集されています。

 

AI時代における知的財産権

 

フォーマットがありますので、ご意見提出される方は、フォーマット違反になってご意見が無駄になることが無いようご注意ください。

 

いずれも、(A)意見と、(B)理由・根拠事実をセットで記載する必要があります。

 

著作権との関係

 

現在の著作権法では、AIが機械学習のために他人の著作物を学習することは、原則、著作権を侵害しないことになっています。

 

著作権者の利益を不当に害することとなる場合、この限りでない」との制限がついていますので、どんな場合も、機械学習可能であると考えるべきではありません。

 

商業的な著作物に関しては、AIサービス事業者が機械学習させることをやめるべきでしょう。

 

例えば、商業出版物やCMなどを学習してくるのは問題がありそうです。

 

さて、AIでは、学習段階、生成段階、利用段階と3つの段階ありますが、学習段階については、すでに著作権法での保護と利用のバランスが図られていることになります。

 

AIサービス事業者とAIサービス利用者との両者が著作権を侵害しにくいように制度設計が必要になります。

 

では、ここも権利制限規定で制限してしまおうというのは安直かなと思います。

 

生成段階については、AIサービス事業者もいろいろと試験研究ができますので、類似する著作物ができないようにニューラルネットワークを構築できないものかと思います。

 

利用段階はどうでしょうか。

 

利用段階については、AIサービス事業者に学習データセットを開示させるのも手かと思いましたが、AIサービス事業者の負荷が大きくなると嫌われそうに思います。

 

おそらくAIについては、学習データセットだけで、差がつくのではなく、構築されているニューラルネットワーク自体でも差が出ますので、学習データセットがばれてしまうと競争力が落ちることはあるかもしれませんので、競争力がなくなるようなことにはならないかなと思います。

 

著作権侵害の一番怖いところは、産業財産権と比較して、逮捕者が出やすい所かと思います。この点に関しては、AI生成物に対してまで利用者が逮捕のリスクにさらされるのは、妥当とは思えません。やはり、金銭的な解決で終わりにしてほしいなと思います。

 

収益還元の在り方

 

じゃあ、お金を集めてどうするのか?分配するのか?

 

となりますが、分配するのは、手間暇かかりますし、正確に分配できるとは限りません。

 

では、お金を集めるのもやめるのかと言われると、著作権者としては、それは許容できないでしょう。でも、AIサービス事業者は、喜んで分配の作業を引き受けるとは考え難いです。

 

ところで、ハードウエアを買ってきて独自のAI開発する場合について話を聞くと、やはり、学習データセット作りには手を焼くと聞きます。

 

そうすると、ある規格化された学習データセットというのは、いまでもニーズがあるのではないかと思います。

 

その学習データセット自体に価値が出てくると思いますし、どのようなデータが入っているのかは、わからないわけがないので、著作権者からの請求に応じて学習データセットの販売者が著作権使用料を支払うのはどうかと思います。

 

もちろん、学習データセット著作権使用料を上乗せしておいて、販売者はそこから支払いをします。

 

おそらくですが、著作権者はいちいち販売者に請求するのが面倒ですから、きっと請求代行業者というのがでてくるのでしょう。

 

請求代行業者は販売者をどうやって特定するのか?

 

学習データセットの販売を登録制度にして、販売者を特定することしか思いつきません。

 

登録しない販売者をどう取り締まるのか?という疑問も出てきますが、ここに関しては、既存の登録制度がいくつもありますので、さほど難しいことではないのかなと思います。

 

少しまとめをすると、既存のAIサービス時御者とAIサービス利用者とに手間暇をかけさせることは、反対されるでしょう。

 

でも、今後、派生するであろう事業者にある程度の負荷を強いることは、許容されるような気がします。

 

なぜか?

 

それは、あまりにも面倒すぎると、そのような事業を始めようとする人がいないから。

 

でも、そのような事業を始めようとする人がいないと、計画倒れになってしまって、これまた大問題になりかねません。

 

既存のAIサービス事業者やAIサービス利用者に影響がなく、計画倒れにならない、いいとこ取りの方法はないのでしょうか?

 

これは条件がありますが、そのひとつは「保険」でしょう。

 

保険の大前提は、発生する確率は低いのだけれども、発生すると巨額のお金が必要になるということです。

 

AI生成物を利用してどのくらいの著作権侵害訴訟が提起されるのか次第なのかもしれません。

 

もし、発生する確率が低ければ、AIサービス利用料の一部に、それこそCD、ブルーレイディスクなどのような課金をしておき、それを保険の原資としてプールしておきます。

 

著作権侵害訴訟で、AI生成物が著作権侵害をしているのであれば、プールから保険金の支払いをすることで、裁判を終わらせるといったことも可能かもしれません。

 

裁判を起こすのは手間暇かかるので、調停で、ということもありかもしれません。

 

まとめ

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • AI時代における知的財産権についてパブリックコメントが募集されています。
  • 情報解析については、著作権法30条の4により、原則として著作権者の許諾なく、著作物の利用が可能です。
  • クリエイターの懸念の払拭、AIサービス事業者やAIサービス利用者の侵害リスクを最小化できるようにすることが肝要です。

 

編集後記

 

技術での対応も意見募集されています。また、例として挙げられているのには、

 

AIが生成したコンテンツを利用者が識別できる仕組み(例:電子透かし)

フィルタリング(例:類似判定)

自動収集プログラムを拒絶する仕組み

 

などが挙げられています。

 

私は他の手段を思いつくことはできませんでした。

 

秋の読書もいいですが、意見の提出もどうでしょうか!?

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

 

リッキー

 

 

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