IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

特許『AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について』[リッキー]

令和5年度弁理士試験公告 によれば、令和5年10月21日(土)から令和5年10月23日(月)が口述試験日です。受験生のみなさん、最後のラストスパート頑張ってください!!!!!!

 

さて、先々週からパブリックコメントが開始されています。

 

AI時代における知的財産権に関する御意見の募集について|e-Govパブリック・コメント

 

この中に興味深い検討課題があります。

 

(検討課題Ⅱ) AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について

(1)AIを利用した発明の取扱いの在り方

(2)AIの利活用拡大を見据えた進歩性等の特許審査実務上の課題

 

 

(1)AIを利用した発明の取扱いの在り方

 

【前提】発明の創作過程における

①課題設定、

②解決手段候補選択、

③実効性評価

のいずれかに自然人が関与していれば、自然人による発明として特許権の付与対象とされている。

 

 

とあります。

 

生成AIをはじめとしたAI技術の進展を踏まえ、各過程においてどの程度自然人が関与していれば自然人の発明と認められるか改めて検討する必要。

 

とのことです。

 

各過程にどの程度と言われると難しいですよね。

 

各過程に10%ずつって言われても、課題設定の10%ってなんだろうと思ってしまいます。

 

解決手段候補選択の場合は、全体の10%に絞り込んだでしょうか?

 

だいぶ貢献度が大きい気がしてきますね。

 

50%だとまあまあ。

1%削った程度では、何もしていないに等しいだろうとか、そんな判断になるのでしょうか。

 

でも、その程度で何を感じるかは個人で異なりますから。

 

実効性評価は、全評価のうち10%に寄与したでしょうか?

 

程度問題にしない方がいいのかもしれませんね。

 

思い切って、生成AIを利用することを前提として、

 

課題設定と課題解決手段候補の1つを結び付けた

 

課題解決手段候補選択と実効性評価をセットで行ったら

 

自然人の関与した発明として特許権付与対象とするのです。

 

ハードル上げてどうするんだ!!ってことになりますが、程度問題にしないためには、①課題設定、②解決手段候補選択、③実効性評価のいずれかの組み合わせにしてはどうかという提案です。

 

競争社会ですから、生成AIを使いこなさないと生き残れないですよね。

 

(2)AIの利活用拡大を見据えた進歩性等の特許審査実務上の課題

 

進歩性等には、新規性、進歩性、産業上利用可能性が含まれていると思いつつ、

 

新規性は、実質同一の発明がないことですから、AIの利活用拡大を見据えたとしても、同じか同じでないかの判断に差は出ないのかなと思います。

 

産業上利用可能性も、AIの利活用拡大で産業上利用できない発明が量産されるかもしれないので、活躍の場はありそうですが。

 

産業上利用できない発明の特許権もっていてもね~って感じですよね。

 

産業上利用できないのだから誰も実施しないと考えて、特許権もっている意味あるのか疑わしくなります。

 

進歩性等とはありますが、やはり、問いたいのは、進歩性についてなのでしょう。

 

組み合わせることのできる先願が多くなるから進歩性のハードルが高くなり、特許を取得しにくくなるということを危惧しているのでしょうか。

 

それとも、AIの利活用拡大で進歩性を楽々クリアできるようになってしまうから、進歩性のハードルをもっと上げろということなのでしょうか。

 

これら2つについて検討したいと思います。

 

(A)進歩性のハードルが上がることを危惧する場合

 

AIの利活用拡大で組み合わせることのできる先願が多くなるから進歩性のハードルが高くなるのは確かかもしれません。

 

進歩性は、

 

技術分野が異なる

課題が異なる

作用効果が異なる

阻害要因がある

 

これらが進歩性を肯定する要素として働くと、いまの審査基準ではされています。

 

日本の今の審査では、構成が揃っていれば拒絶できるし、課題解決アプローチの手法で拒絶もできるし、おおよそEUの審査ではできない拒絶のやり方も許されているように思います。

 

一見、構成が揃っているように見えても、微小な差異を課題の違いから見出して進歩性を認めるとか

 

課題が異なる文献は組み合わせができないとか

 

ちょいと乱暴なことをいっていますが、今の審査を見直せば、AIの利用拡大が進んだとしても進歩性のハードルを下げられると思いますね。

 

(B)進歩性のハードルが下がることを危惧する場合

 

AIは人間が思いもつかないような組み合わせを見つけるのが得意と聞きます。

 

進歩性のハードルが下がるのを危惧して、進歩性のハードルを上げたいのであれば、

 

技術分野が異なっても進歩性を肯定する要素として加味しないとか

 

課題が異なっていても共通する構成要素があれば関連付けが可能として進歩性を肯定する要素として加味しなくてもいいですね。

 

ちょっと作用効果が異なっても、進歩性を肯定する要素として加味しないってのは困りものな気がしますのでここは譲らずに、

 

阻害要因があっても、AIと一緒に考えたからね、組み合わせ可能にしてしまおうってのもありなのかもしれません。

 

進歩性のハードルが上がることを危惧する場合も、進歩性のハードルが下がることを危惧する場合も、今の進歩性の判断要素を一部取捨選択すれば、調整できそうです。

 

進歩性のハードルを上げるのか下げるのかは、政策次第でしょうかね。

 

あと、進歩性の拒絶をするときに、組み合わせる分権の片方が周知技術だからという理由で進歩性なしと認定されることが多々ありますが、AIの利用拡大を見据えてそろそろやめた方がいいのではないかと思います。

 

進歩性のハードルが上がりすぎて、特許が取得できない国になってしまうかも・・・。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

発明の創作過程における①課題設定、②解決手段候補選択、③実効性評価のいずれかに自然人が関与していれば、自然人による発明として特許権の付与対象とされている。

 

編集後記

 

パブリックコメント募集中ですが、生成AI提供側にも動きがあるようですね。

 

Google、生成AIユーザーの著作権侵害の訴訟リスクを補償 - PC Watch (impress.co.jp)

 

ますます世界がダイナミックに動いている感じがします。

 

ダイナミックな動き

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

リッキー

 

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