IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『著作権の譲渡か利用許諾か』[リッキー]

 

今回も著作権Q&Aを基に

書いてみたいと思います。

文化庁 | 著作権Q&A (bunka.go.jp)

 

以前、下記のQ&Aをご紹介しました。

 

Q:ある会社から委託を受けて漫画を書きましたが、その会社から著作権は共有にして欲しいといわれました。著作権を共有にした場合私の著作権はどうなるのですか。

A:権利を共有する場合、一つの著作権を会社とあなたが保有することになりますから、利用許諾などの著作権の行使は二者の合意に基づき行うことになり、また、あなたの著作権を他人に譲渡したり質権を設定する場合も、会社の合意が必要になります(第65条)。なお、第三者がその漫画を無断で利用したような場合は、あなただけで法的措置が可能です。

 

 

イラストレーターの方は、

制作委託の契約を結び、

イラストを描くことが多いと思います。

イラストレータ



依頼者が会社の場合、

質問にあるような著作権の共有というのは

珍しい気がします。

 

契約書は何度か往復して、

最終稿ができあがるのが通常ですが、

会社側から契約書が送られてきた

場合は、大抵、著作権の譲渡が

通常ではないかと思います。

 

今回は、著作権の譲渡をテーマに扱いたい

と思います。

 

なぜ、会社側は著作権の譲渡を求めるのか?

 

利用許諾とは何か知るとわかりやすいかも

しれません。

 

イラストの場合、チラシに複製されたり、

ホームページ上で利用されたり、すること

が考えられます。

 

利用許諾を得る場合は、

イラストを複製したい場合は複製権、

イラストをホームページ上に

表示したい場合は公衆送信権

についての利用許諾を得る必要があります。

 

さらに、

複製権の場合は、

何部分の許諾を得るのか、

 

公衆送信権の場合は、

どのくらい表示する期間を

得るのか、

を決めます。

 

ただ、事業やイベントの進み具合によっては、

もっとチラシをたくさん印刷したいとか、

もっと長い期間イラストをホームページ上に

表示したいとか、

追加でイラストを使いたくなるかもしれません。

 

そういったときに、改めて契約を結ぶのは

面倒なのかなと思います。

 

そうすると、複製権や公衆送信権等を譲渡

してもらっておくと、楽ですよね。

 

それが主な理由かなと思います。

 

著作権を共有にしたい時はどんなときか?

 

ひとつは、制作依頼を受けた人が

その分野の巨匠で、とてもじゃないが

譲渡してもらえる可能性はない・・・

弱気な時でしょうか。

 

他には著作権登録をしたい場合には

共有したい場面があるかもしれません。

 

著作権者であることを、明確にするために、

第一発行年月日等の登録を行うことが

あります。

 

この場合に、少なからず手数料がかかる

のですが、著作権を共有にしておけば、

そこらへんの手数料を折半できる可能性が

あるという感じでしょうか。

 

著作権を共有にすると、

利用許諾をする際や

質権を設定する際に、

共有者の合意が必要になり、

面倒です。

 

やっぱり、共有にしたい気持ちが理解できません(笑)

 

このQ&Aは、著作権を説明するために

用意された質問なのかもしれませんね。

 

著作権譲渡の際に気を付けておくこと

 

著作権は譲渡すると契約書で契約しただけでは、

譲渡されない権利があります。

 

それは、

翻案権と

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

です。

 

契約書では、

翻案権と

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利

を明確に譲渡すると記載していないと、

譲渡がなされません。

 

ですので、会社側は、翻案権の譲渡を求めてきます。

 

イラストのちょっと自社で手直ししたいなとか

そんな場面もあると思います。

 

その時に、翻案権の譲渡を受けていないと、

イラストに創作性のある改変をしてしまうと、

イラストレーターの翻案権を侵害してしまいます。

 

ですので、翻案権も譲渡を受けておきたいのです。

 

あと、著作者人格権も注意です。

 

著作者人格権は、人格権ですので、

イラストレーターから譲渡を受けることはできません。

 

この場合、会社側はどうするのでしょうか。

 

著作者人格権の不行使を契約書に盛り込んできます。

 

著作者人格権は、

公表権

氏名表示権

同一性保持権

を含みます。

 

会社側は、これらのうち同一性保持権を気にかけています。

 

同一性保持権は、著作者の意に反した改変をされない

権利です。

 

会社側は、イラストをちょっと自社で手直し

したいなと考えます。

 

その際に、同一性保持権を侵害しないように

したいのです。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • イラストの制作委託契約では、著作権の譲渡を求められることが多い

 

  • 著作権の譲渡と共に、翻案権、二次的著作物に関する原著作者の権利の譲渡も受け、著作者人格権の不行使の契約を得たいと考えている

 

編集後記

 

ブログを読んでいたときか、書籍を読んでいたときか

ふとある記載が目に入りました。

 

原稿の納品が遅れて、損害が発生した場合には、

その損害の全責任を負う。

 

という条文が契約書にあったそうです。

 

ですので、契約書をしっかり読みましょうと

いうことが書かれていたのですが、

契約書は、しれっと、ものすごく不利な条件を

書かれていることがあるので、しっかりと

読まなくてはならないですよね。

 

そういうことが書かれていたら、これでは

受託できないと、お返しするのがいいでしょう。

 

安易に契約を結ばないように気を付けていただき

たいと、私も思いました。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

 

知財への興味関心が薄い人でも、

著作権の雑談であれば、

楽しんでもらえるかなと思いますので、

著作権の雑談を楽しむのはいかがでしょうか?

 

リッキー