IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『共同著作物のややこしい話』[リッキー]

 

今回も著作権Q&Aを基に

書いてみたいと思います。

文化庁 | 著作権Q&A (bunka.go.jp)

 

テーマは、共同著作物です。

 

共同著作物

共同



まず、共同著作物とは何でしょうか?

著作権法の第2条に定義があります。

 

二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。

 

人が二人以上いる時点でややこしく

なりそうな気配がしますよね(笑)

 

関係者が増えれば増えるほど、

問題が複雑しますから・・・。

 

さて、絵本は共同著作物でしょうか?

 

これだけでは答えにくいですよね。

 

子どもに絵本をよく読み聞かせ

をしているので、絵本を題材に

挙げてしまいますが・・・

 

絵本では文章を書く方と、

絵を描く方が別々の場合がありますよね。

 

作 ○○

絵 ■■

 

という感じで。

 

上記の場合は、

文章を書く方と、絵を描く方を

明確に分離できてますよね。

 

「その各人の寄与を分離して

個別的に利用することができる」

と考えられますので、

 

この場合の絵本は、共同著作物とは

呼べないと思います。

 

すこしややこしさを感じていただけ

ましたでしょうか?

 

ここからややこしい話を深堀して

いきたいと思います。

 

共同著作物のややこしい話

 

まずは、著作権Q&AにあるQ&Aを

見てみましょう。

 

Q:共同著作物の場合、利用許諾手続で注意すべきことはありますか。

A:著作権者が複数の場合、原則として、すべての著作権者から了解を得なければなりません。
通常の場合、著作者は同時に著作権者でもありますから、共同著作物についても、複数の著作者が著作権を共有しており、利用の許諾(著作権の行使)に当たっては、全員の合意が必要です(第65条第2項)。もっとも、著作権法では著作権を代表して行使する者を定めることができるとされていますから、代表者が定められているときは、利用者はその代表者と利用許諾の手続きを行えばよいことになります(第65条第4項)。

 

 

ちょっと、回答が長いですね。

 

共同著作物なので、著作権者が

複数います。

 

途中で、著作権を、共有者の

一人に譲渡してしまい、共同著作物の

著作権者を一人にまとめてしまうこと

はできるでしょう。

 

ここでは割愛ということでお願いします。

 

さて、2つの場合に場合分けができます。

 

  • 共同著作物の代表者がいる場合
  • 共同著作物の代表者がいない場合

 

共同著作物の代表者がいる場合は、

代表者に許諾を得ればOKです。

 

こちらは単純ですね。

 

共同著作物の代表者がいない場合は、

全員の合意が必要とありますから、

著作権者の全員から利用許諾を得る

必要があります。

 

著作権者が複数いるとそれだけで

手間がかかります。

 

すぐ連絡の取れる著作権者もあれば、

連絡が取れない著作権者もいるでしょう。

 

連絡が取れない著作権者がいると、

著作権者の全員から利用許諾を得られない

ので、あきらめる必要があるのでしょうか?

 

あきらめる必要はありません。

裁定制度が存在します。

 

裁定制度については、こちらの記事でも

触れていますので、ご興味あれば、

読んでいただけると嬉しいです。

 

 

discussiong1.hatenablog.com

 

 

裁定制度って、供託金を納めなければ

ならないのですが、これが高額なので、

もうちょっと使いやすい制度にならないか

声があがっているようです。

 

著作物の利用者のややこしい点を

みてきました。

 

実は、著作権者もややこしいのです。

 

著作権の共有者のややこしい話

 

著作権は、人格権と財産権に大別されます。

 

共同著作物の著作者人格権を行使しようとした

場合、著作者全員の合意がなければ、

行使できません。

 

合意形成をしようとしたときに、意見が分かれて

しまうとこれまた大変です。合意を得るために

信義則に反したことできないのです。

 

あと、共同著作物の著作者は、誰なの?

というのもややこしい話です。

 

著作権Q&Aには下記のようなQ&Aもあります。

 

Q:今連載中の漫画は、私と私の友人2人の合計3人でアイディアを出しながら共同で描いたものですが、この漫画の著作権は誰のものですか。

A:一般的に一つの著作権を3人で「共有」している形になると考えられます。
 複数の人が共同で一つの著作物を創作し、それぞれの人の創作活動が渾然一体になっていて、それぞれの人が寄与した部分を切り分けて別々に利用することができないものを「共同著作物」といい、創作に寄与した全員が著作者で、著作権は全員が共有します(第2条第1項第12号、第64条、第65条)。なお、アイディアは提供したが、実際の創作活動(この場合は漫画を描くこと)は行なわなかった人がいる場合には、その人は著作者にはなれません。

 

 

アイディアを出しただけの人は、

著作者になれないのです。

 

著作権法が、アイディアを保護する

法律でないことにも関係しますね。

 

ちょっと長くなってきましたね・・・。

もうひと踏ん張り、宜しくお願い致します。

 

下記のQ&Aにもあるのですが、

著作権を共有すると、都度、

著作権を共有する相手方の合意が

必要になります。

 

利用許諾する場合も然り、

質権を設定する場合も然り。

 

Q:ある会社から委託を受けて漫画を書きましたが、その会社から著作権は共有にして欲しいといわれました。著作権を共有にした場合私の著作権はどうなるのですか。

A:権利を共有する場合、一つの著作権を会社とあなたが保有することになりますから、利用許諾などの著作権の行使は二者の合意に基づき行うことになり、また、あなたの著作権を他人に譲渡したり質権を設定する場合も、会社の合意が必要になります(第65条)。なお、第三者がその漫画を無断で利用したような場合は、あなただけで法的措置が可能です。

 

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • 共同著作物は、複数の人が共同で一つの著作物を創作し、それぞれの人の創作活動が渾然一体になっていて、それぞれの人が寄与した部分を切り分けて別々に利用することができないもの

 

  • 共同著作物の利用許諾を得るときは、著作権者全員から許諾を得なければならない。代表者があれば、代表者から許諾を得ればよい。

 

  • 共同著作物の著作権の共有者も、ややこしく、共有者の合意が必要になる場合が増えます。

 

編集後記

 

動物や植物の図鑑を思い浮かべたときに、

多くの写真家の協力が必要なんだろうな

と思います。

 

おそらく図鑑の発刊元が、

著作権の権利処理をうまくやっている

のだとは思いますが、

写真家の人数も写真の枚数と同じに

なったら、大変だなと思います。

 

それに挿絵も入っていることもある

と思います。そうすると、

挿絵のイラストレーターも関わって

きます。

 

写真や文章が多いものとしては

新聞もありますが、新聞の場合は、

新聞社所属の記者やカメラマンが

執筆、撮影するので、職務著作として、

新聞社が著作権者になれますから、

ここらへんの問題はすくなそうな

気がします。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

 

知財への興味関心が薄い人でも、

著作権の雑談であれば、

楽しんでもらえるかなと思いますので、

著作権の雑談を楽しむのはいかがでしょうか?

 

リッキー



 

★★IP RIPは、Yuroocleさんに参加させて頂いております★★

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