IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権・特許「子ども達への知財教育のご紹介」【MI】

こんにちは、MIです。

寒い日が続きますね。コロナ禍もなかなか収拾がつかなさそうで、先日も息子が少し発熱したときは焦りました。知財業界は2月、3月はいわゆる繁忙期なんですが、いろんな方面からのストレスが辛いです。

さて、そんな中ですが今回は、最近見かけたニュースから「子どもに対する知財教育」について考えてみました。また、そのためのコンテンツや制度についてご紹介させていただきたいと思います。

 

 

きっかけになったニュース ~ネタバレサイト~

つい先日ですが「ネタバレサイト」の運営会社と経営者を書類送検する方針を固めたという記事がありました。

「ネタバレサイト」運営会社など書類送検へ 著作権法違反疑い | IT・ネット | NHKニュース

上記の記事では、被疑者は「悪いことだと知っていた」として容疑を認めているとのことですが、別の記事では「引用の範囲だと思った」とも言っているとのことでした。じゃあ「引用」と認められる要件を言ってみてください、、、と聞いてみたいところですが、おそらくただの言い訳なので、これ以上ツッコむのは野暮ですね。

そこで思ったのが、知財教育の大切さです。正直、著作権などは難しくて、一度聞いただけでは覚えられません。だからこそ子ども(小中高生)のうちから、繰り返し刷り込むのが大切ではないのかなと。(息子を犯罪者にしないためにも)

 

弁理士会が提供しているコンテンツや制度

ではどうやって子どもに知財教育をするか?そのネタは?

そこで弁理士会が提供しているコンテンツや制度を利用してみて欲しいと思います。弁理士会HPには下記のページがあり、そこで知財教育用のコンテンツがいくつか公開されています。これらは、教員の方は無料で利用(授業等での使用(上映や複製等))ができるとのことです。

学校関係者の方へ | 日本弁理士会

教員用教材/知的財産特別授業 | 日本弁理士会 (jpaa.or.jp)

「教員の方が授業で容易に使用できる知的財産学習教材をご用意いたしました。 すべて無料でご利用いただけますので、ぜひご活用ください。」

上記のコンテンツの一つである「パン職人レオ君の物語」は、私も利用したことがありますが、紙芝居形式でストーリーが進行するので、子ども達の食いつきも非常にいいです。

また、著作権については、弁理士会東海会が公開している以下の資料もなかなか分かりやすいと思います。

「著作物の利用」

classwork-01.pdf (jpaa-tokai.jp)

 

是非利用して欲しい「講師派遣」

とはいえ、なかなか上記コンテンツを見ただけで知財が分かるかというと難しいと思います。コンテンツを見せるだけでは退屈する子もいるでしょう。教員の方もどう説明したらいいのか不安だと思います。そこで利用して欲しいのが「講師派遣」です。講師が場の空気も読みながら説明するので、とても楽しく効率的に知財を学べると思います。

弁理士の講師派遣 | 日本弁理士会 (jpaa.or.jp)

弁理士会東海会などの各地域会でも教育機関(小学校、中学校、高校、大学など)に向けて「知的財産特別授業(講師派遣)」を行っています。是非一度試していただきたいと思います。

教育機関の皆様へ (知的財産特別授業)【日本弁理士会東海会】 (jpaa-tokai.jp)

 

おわりに

特に著作権について、SNS等のオンライン発信ツールが身近になった現在、子どもが「犯罪者」になってしまう可能性もあります。子ども達への知財教育について是非興味を持っていただけるとうれしいです。

  • 家庭学習の一環として「知財教育」を!
  • 学校の授業にも「知財教育」を!
  • 上記コンテンツの他、講師派遣制度を是非利用してください!

「講師派遣制度」は学校からの依頼だけでなく、PTA活動の一環としても利用できると思います。ネタに困ったとか新たなネタを探しているというPTA役員の方にもオススメです。

本日も、お読みいただきありがとうございました!

特許「特許非公開制度(秘密特許)の導入」[らるご~]

2022年も本ブログをよろしくお願いします。特許事務所勤務のらるご~です。私事ですが、今月から繁忙期に入って毎週締め切りに追われております。しばらくはこの状態が続きそうですが、体調崩さないように頑張っていきます。

 

閑話休題

先日、以下の記事が挙がっていました。ただいま、特許非公開制度(秘密特許)の導入が検討されているようです。

www.jiji.com

この制度は、軍事転用の可能性が高い技術(量子暗号、原子力等)に関する特許出願について、2段階の審査を経て、場合によっては、その技術内容が非公開に指定される制度のようです。現段階の案では、1段階目は特許庁により非公開とするかどうか検討されたのち、2段階目で新設組織(内閣府と防衛相を中心に構成された組織)により機微技術(=軍事転用の高い可能性が高い技術)であると判断されると、その技術内容は、非公開となるとのこと。実際に日本での秘密特許はどのようなものになるのか未だ確定していませんが、アメリカの場合は、特許出願時に秘密命令が発行→特許出願は秘密状態に維持→その間に審査は行われますが、特許の発行は秘密状態の解除後に行われます。

 

また、以下の記事にあるように、

news.yahoo.co.jp

特許出願人が非公開に指定された技術内容を漏洩すると、罰則が課せられるそうです。非公開にされた代償として、特許出願人が得るはずであったライセンス料は、国が補償するそうですが、どの程度ちゃんと保障してくれるのか不安が残りますね。

 

この特許非公開制度(秘密特許)は、世界70ヶ国中51ヶ国で既に導入されている制度です。同制度は、日本でも以前に存在していたのですが、敗戦を理由に昭和23年に廃止されて以来、これまで再度の制度導入は実現していませんでした。

なぜ今その制度の再導入が検討されているのか。ひょっとしたら、ようやく(?)日本にも国際感覚が醸成されてきたためかもしれません。でも本当のところは、どうも安全保障分野での情報収集を活発化させている中国への懸念があるようです。世界地図のイラスト

実際にこの制度が導入されて、どの程度の頻度で運用されるかは予測不能です。運用の頻度という観点では、以下の記事にあるように、「公共の利益のための通常実施権(特許法第93条)」も、特許庁曰く過去に1度だけ裁定請求されたものの却下されており、今回の久々の裁定請求がどうなるのか注目されていますよね。

www.asahi.com

以上、特許非公開制度の導入(&裁定通常実施権)についてでした。この制度が導入されると、例えば、発明者も意図していなかった軍事転用が判断されて、その特許出願が秘密命令で非公開になることにより、発明者が予期していなかった不利益を被る場合も出てくるでしょう。なお、アメリカでは、秘密命令によって特許が付与されなかった場合、もしくは、その発明が実施できなかった場合は、損害賠償を請求できるよう法整備されています。発明を実施(公開)したい発明者と、発明を非公開にしたいお国側と、の間で、攻防が繰り広げられることも将来あるかもしれませんね。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!

「Chromeの便利な拡張機能」【マータ】

みなさま、こんにちは。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plainhttps://twitter.com/b8L18UnY7nPd5NC

 

皆様は普段、ウェブブラウザは何をお使いでしょうか?
私は、Google Chromeを使用することが多いです。

Chromeは日本でもっとも使用されているブラウザのようなので、お使いの方も多いのではないでしょうか。https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220106-2242636/

 

本日は、私がパソコンで色々な記事、論文、特許などを読むときに個人的に便利だなと感じているChrome拡張機能について2つご紹介させて頂きたいと思います。

Chromeに機能を追加するプログラムファイル、Chrome ウェブストアで無料で入手可能

 

Read Aloud (読み上げ)
Webページの文章を音声(読み上げ)で聞きたいなーと思う時はないでしょうか?そういう時、私はRead Aloud という拡張機能を使っています。

 

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使い方は、Webページを開いてRead Aloud のアイコンをクリックするだけです。下記のように文章を順番に読み上げてくれます。

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参考:J Plat Pat , 特許4183742の読み上げ画面

 

読み上げスピードなども調節できるので、手ぶらで色々作業しながらWebページの内容を把握するのに便利です。スマホでも使えるので、例えば電車内では目で文章を読んで、下車後は続きをイヤホンで聞くとかもアリだと思います。

また、自分が書いたブログなどの内容チェックにも使えると思います。読み上げの音声で確認してみると、目では気づかなかった間違いとか誤字脱字を発見することがあります。

 

②ImTranslator (機械翻訳)
外国語で書かれたページを読むとき、Chromeには「日本語に翻訳」という機能が最初からついているので(下図)、ページ全体を日本語に機械翻訳することができます。この機能は、ざっくりと全体の内容を知りたい時に便利ですよね。 

 

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ただ場合によっては、全体を英文で読みたいんだけど、所々必要なとこだけ日本語訳を確認したいときがあると思います。そういう時、私はImTranslator という拡張機能を使っています。

例えば、ウェブページ中の下記のような英文だけを翻訳したい場合、

 

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Natureの記事より引用 https://www.nature.com/articles/d41586-021-02483-w

 

翻訳したい箇所をマウスで選択して、[Alt]+[C]を押すと、一文ごとに日本語訳が挿入されます(インライン形式)。

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また、[Alt]+[P]で下記のようにポップアップ形式で翻訳することも可能です。

 

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このように必要な文章だけをさっと日本語に機械翻訳したいときにImTranslatorは便利だと思います。

 

まとめ
今回は、私が便利だと感じているChrome拡張機能を紹介させて頂きました。その他にも拡張機能はたくさんありますので色々と追加してみてはいかがでしょうか?

最後までお読みいただきありがとうございました!!

 

yuroocle.notion.site

Yuroocleさんに参加させて頂いております

著作『ホームページ作成時に気を付けるべき著作権』[リッキー]

新年あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。1月ももう半分過ぎてしまいましたが、昨年の目標を達成できたかチェックはお済でしょうか?また、新年の目標を立てられましたか?

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個人的に振り返ると、なんとなく立てた目標の実現に一役買ってくれるものが昨年11月頃から出現しており、なんか目標達成できそうな目途が立ってきていました。他にも、こんな程度でいいかなと思っていた目標が、意図しないオファーをもらって目標以上に労働力を提供することになり、想定通りなっていないこともあります。そして、全く目標には入れていなかったこともやっています。その1つがプログラミングです。

 

リツイート事件について最高裁判決が出た際にも、HTMLとCSSというキーワードが出てきていたのですが、HTMLが何か分かってもCSSが分からない・・・という状況でした。これではいけないという思いがあったのでしょう、書店をぶらぶらして「一番やさしい」、「入門書」との言葉に惹かれて本を手に取りました。

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そこで思い出されるのがHTML事件と言われる事件です。このHTML事件ではHTMLの著作物性が争われました。HTMLはプログラムですから、著作物として著作権法の保護を受けられる余地がありますが、法上の著作物とは認められませんでした。もう少し詳しく触れると、HTML自体でだけでなく、phpプログラムやJavaScriptと連動させることにも著作物性があると控訴人は主張していたのですが、これらとの連動はありふれたものとして著作物性が認められませんでした。

 

どうして著作物性が認められなかったのかというと、作成者の個性が現れていないからということになるのですが、HTML自体に選択の幅が少なく、作成者の個性を表すのが困難であるというところに帰着します。初学者にとってはHTMLに関する辞典があり記述ルールも多数あるからさぞかし、作成者の個性を表すための選択の幅があるのかなと感じてしまうのですが、自分の感情とは逆さでHTML自体に作成者の個性を表す余地がないとのことです。プログラムが著作権法上の保護を受けるのは相当に難しいなという感想を持ちました。また、CSSも文字の色や太さ、背景色などをしてするものであるから、CSSもHTMLと同様に著作権法上の保護を受けるのは難しいなという感想を持ちました。ちなみに、プログラムの著作物について、著作権の中の支分権の侵害になりやすいかというと、複製権でしょう。

 

ホームページは、多くがHTMLとCSSで記述されると思いますので、著作権で気を付ける部分がないのかというと、そうではないと思います。ホームページでは、多くの動画や写真画像が使われると思いますし、音楽を使うこともあるかもしれません。動画、写真画像、音楽には著作物性が認められやすい傾向にあることから、ホームページを作成する上で、動画、写真画像、音楽については著作権を適切に処理する必要があります。つまり、正規の著作権者へ対価の支払い等を行い、利用許諾を得て利用許諾の範囲内で利用しなければなりません。

 

まとめ

 

ホームページ作成時に気を付けるべき著作権について記載しました。HTMLとCSSに著作物性が認められることは相当ハードルが高そうに思える反面、動画、写真画像、音楽は典型的な著作物ですから、著作権を適切に処理する必要があります。

 

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弁理士「弁理士試験最終合格者発表! ~そこで思ったこと~」【MI】

こんにちは、MIです。

本日、令和3年度弁理士試験の最終合格者が発表されましたね。合格された方、本当におめでとうございます!

というわけで、今年は以前の記事でも触れましたように某所で口述模擬試験に関わらせていただいたこともあり、楽しみにしていた合格発表を見て思ったことを書かせていただきます。お付き合いいただき話のタネにしていただければうれしいです。よろしくお願いします!

 

 

令和3年度の最終合格者は199人! ~少ない!!~

令和3年度の弁理士試験最終合格者は199人ということです。これは、近年(H28以降)の傾向からしてかなり少ない人数ではないでしょうか。

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※データは特許庁HPで公開されたものから抽出

近年の傾向からして、最終合格者数は論文合格者数と同等以上だったのが、今年は12人少ないという結果になりました。論文合格者数も近年では少なめでしたが、それを更に下回る最終合格者数となりました。合格率も特許庁の公表待ちですが、志願者ベースで計算した値で近年最低となっています。

 

なぜ最終合格者数が減ったのか? ~弁理士数や出願件数との対比~

完全に趣味です(因果関係は明確ではない)が、最終合格者数の減少を、最近の弁理士数や特許出願件数と対比して考えてみたいと思います。

まず、最近の弁理士数は増加傾向にあります。

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※データは弁理士会HP「会員分布状況(https://www.jpaa.or.jp/about-us/members/)」より抽出

一方、最近の特許出願件数は減少傾向にあります。

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※データは特許庁HPで公開されたものから抽出

特に、2020年度は減少幅が拡大しついに30万件を下回ってしまいました。2021年度も、現在公表されている2021/1月~10月の件数「243,221件」が、前年同期(2020/1月~10月)の件数「244,978件」を下回っており、減少幅は緩やかになったかもしれませんが、減少傾向に歯止めはかかっていません。

私見弁理士数は増えているのに飯のタネである特許出願件数は減っている、、、これは最終合格者数の減少と無関係ではない気がします。優秀な人であれば無制限で弁理士になってください!(弁理士数を青天井に増やす)というわけにもいかない(既登録者の既得権益も守る必要がある)と思うので。。。

 

弁理士試験受験の勧め ~若い方と女性に向けて~

それでもやはり弁理士業界にいる者として、業界が盛り上がって欲しい!そのためにはたくさんの多様な方に弁理士試験を受験していただき、登録していただかないといけないと思います。

そこで、まずは若い方。前述の弁理士会HP「会員分布状況」の最新データ(2021/11/30時点)では、弁理士年齢分布では40歳未満の登録者は全体の「11.5%」となっています。人口比での是非は分かりませんが、少なくとも40歳未満で合格・登録すれば、弁理士業界の1割の人材になれるわけです。

次に、女性。先日、知財業界は女性の年収が比較的高いという記事を見ました。

女性の平均年収は345万円 上位を占めた職種は?:昨年から2万円減(1/2 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン

『全体傾向としては、「法務」(541万円)、「知的財産・特許」(537万円)といった「企画・管理職」が上位50職種中のうち17職種で全体の約4分の1を占め、最多となった。』

また個人的には、知財業界は「在宅勤務」や「時差勤務」がしやすいのではないかと思っています。これらは大きなメリットになると思います。

 

おわりに

今年は弁理士試験についていろいろと考えるいい機会になりました。弁理士として、弁理士の入り口としての「弁理士試験」について継続的に知っておくのも大事だなと思います。今後も毎年ドラマが生まれると思うので、追っていきたいと思います!

改めて、弁理士試験に最終合格された方おめでとうございました!

特許「令和3年度 特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」[らるご~]

今回は長いタイトルですみません。先日、特許庁から以下の報告書が挙げられました。

www.jpo.go.jp

この報告書は、「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」や、 「PCT 出願における国際調査等全般の質」について、オンラインアンケート形式で実施した調査結果をまとめたものです。このうち今回は、「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」に関する私の雑感を書いていきたいと思います。

なお、調査の対象者の選定方法は、以下の通りです(回答期間は令和3年5,6月)。

票1=「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」についての報告書

 

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今回は、「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」の調査結果の中から、

1.特許審査全般の質についての評価(全体評価)

2.進歩性の運用についての評価

3.記載要件の運用についての評価

4.判断の均質性についての評価 についてピックアップしました。

 

1.特許審査全般の質についての評価(全体評価)

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まず初めに、全体評価についてです。こうして見ると、概ね全体評価は年々向上しています。「普通」から「満足」や「比較的満足」に変化した割合の増加が全体評価に対する好印象化の主因のようです。一方、「比較的不満」&「不満」の割合が、平成27年度から令和元年度の間は5.6~6.5%であったのに対して、令和2年度では2.7%に大きく減少したのは、コロナ禍が関係しているのかもです。

 

2.進歩性の運用についての評価f:id:discussiong1:20211219165626p:plain

次は、我ら(?)出願する側の最大のテーマである進歩性についての評価結果です。こちらも概ね評価は年々向上しています。「満足」+「比較的満足」の割合が平成24年度に21.0%であったのに対し、令和3年度には48.4%になったことから、この間に進歩性の運用は劇的に向上していたようです。私自身この業界に入って10年未満ですが、「数年前と比べて、今そんなに向上していたの?」というのが率直な感想です。実感が伴わないのは私自身が未熟だからかもしれません。

また、全体評価の結果(図1)でも感じましたが、平成24~30年度までの評価向上のペースが凄まじいですね。この間に特許庁内ではドラスティックな改革が行われたのでしょう、たぶん。

 

3.記載要件の運用についての評価f:id:discussiong1:20211219165555p:plain

続きまして、記載要件についての評価結果です。進歩性の結果(図6)と比べると、「満足」+「比較的満足」の割合が若干少なく、その分、「普通」の割合が若干多いように見えます(見た目判断で精査はしていません)。この結果に関しては、なんだかシックリきました。記載要件で拒絶されるということは、自分が書いた明細書の記載に不備があったと審査されたワケで心中穏やかではありません(私だけでしょうか)。そのため、そのような審査結果には不満を持ちやすく、その不満がこの評価に表れているのではないかと思ったからです。

 

4.判断の均質性についての評価f:id:discussiong1:20211219165437p:plain

最後に、判断の均質性の評価結果についてです。こちらも概ね評価は年々向上しています。ただし、報告書によれば、アンケートの自由記入欄において、この「判断の均質性」についての意見が多く見られ、その中には、記載要件や進歩性の判断の均質性に関して改善を期待する意見が見られたそうです(多くの意見の中で、改善を期待する意見が多かったか否かは報告書からは判別できず)。審査官による判断の均質性…確かに改善してもらえればそれに越したことはありませんが、審査官もそれぞれ別人格の人間ですから、なかなか難しそうですよね。

 

5.まとめ

以上、報告書に関する私の雑感でした。ユーザー評価に基づく報告書であることから、特許審査の質は年々向上しているのは間違いないようです。同報告書には、「審査官の技術等に関する専門知識レベルについての評価」や「面接、電話等における審査官とのコミュニケーションについての評価」等についての記載もありますので、ご興味のある方は、ぜひ原本をあたってみてください。雑感でしたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!



 

特許「プレスリリースによる特許の広報的な活用について」【マータ】

 みなさま、こんにちは。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plainhttps://twitter.com/b8L18UnY7nPd5NC

 

 最近、ネットを通じて情報収集や市場調査などをしていると、よく『プレスリリース配信サービス』の記事にたどりつくことがあります。『プレスリリース配信サービス』とは、企業や個人のプレスリリース配信をサポートしてくれるweb上のサービスです。有名なところでは、PR TIMESさん(https://prtimes.jp/)や@Pressさん(https://www.atpress.ne.jp/)が挙げられるかと思います。

 

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 また、私は情報収集手段の一つとして、Google「アラート機能」https://www.google.com/alertsを使って、業務に関連するキーワードを含むニュースや報道記事などが毎日メール通知されるようにしているのですが、その時もよくプレスリリース配信サービスの記事が飛んできます。

 

例えば、企業の研究や技術・サービスに関する記事としては、

 

〇〇社、△△を解析できるキットを開発!~■■の迅速な検査が可能に~


〇〇社、△△エキスに脂肪分解効果を発見!~ダイエット食品開発に応用~


〇〇社、△△技術を開発!~■■への応用が期待~

 

みたいなリリース記事をよく見かけます。プレスリリース記事からは、その会社が今アピールしたいことや、力を入れている研究分野商品開発の動向などを垣間見ることができるので中々参考になります。

 

ところで、こういったプレスリリース記事のなかには、「特許」に関する記事も結構あります。例えば、PR TIMESさん(https://prtimes.jp/)のサイトを参考にさせて頂くと、最近では以下のようなリリースがありました。

 

prtimes.jp

prtimes.jp

prtimes.jp

色々な会社が特許取得をアピールするリリース記事を出していますね。最近の@Pressさん(https://www.atpress.ne.jp/)に掲載された記事も載せさせて頂きます。

 

www.atpress.ne.jp

www.atpress.ne.jp

www.atpress.ne.jp

 

これらのリリース記事を見てみると、他社のけん制というよりは、特許を通じて自社技術をアピールし広報的に活用しているようにみえます。ちなみに、「特許」というキーワードでGoogleアラート機能を設定しておくと、多い時で大体一日10記事くらいが通知されます。記事の多くはプレスリリース以外の通常のニュース・報道が大半ですが、特許に関する企業のプレスリリースも結構含まれています。

 

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参考:Googleアラートから通知されたプレスリリース記事

 

<おわりに>

 特許は取得しても権利行使する機会は中々ないため、その効果が見えにくいですが(他社のけん制や自社技術の保護には働いているとは思いますが)、リリースなどを通じて広報的に活用すれば技術力のアピールに繋がりますね。特に、これから知名度を上げたい規模の小さい企業には有効に働くのではないでしょうか。

 

今回の記事を書いてみて、今後私も特許の広報的な活用についてもっと色々と勉強したいと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました!!