2022年も本ブログをよろしくお願いします。特許事務所勤務のらるご~です。私事ですが、今月から繁忙期に入って毎週締め切りに追われております。しばらくはこの状態が続きそうですが、体調崩さないように頑張っていきます。
閑話休題。
先日、以下の記事が挙がっていました。ただいま、特許非公開制度(秘密特許)の導入が検討されているようです。
この制度は、軍事転用の可能性が高い技術(量子暗号、原子力等)に関する特許出願について、2段階の審査を経て、場合によっては、その技術内容が非公開に指定される制度のようです。現段階の案では、1段階目は特許庁により非公開とするかどうか検討されたのち、2段階目で新設組織(内閣府と防衛相を中心に構成された組織)により機微技術(=軍事転用の高い可能性が高い技術)であると判断されると、その技術内容は、非公開となるとのこと。実際に日本での秘密特許はどのようなものになるのか未だ確定していませんが、アメリカの場合は、特許出願時に秘密命令が発行→特許出願は秘密状態に維持→その間に審査は行われますが、特許の発行は秘密状態の解除後に行われます。
また、以下の記事にあるように、
特許出願人が非公開に指定された技術内容を漏洩すると、罰則が課せられるそうです。非公開にされた代償として、特許出願人が得るはずであったライセンス料は、国が補償するそうですが、どの程度ちゃんと保障してくれるのか不安が残りますね。
この特許非公開制度(秘密特許)は、世界70ヶ国中51ヶ国で既に導入されている制度です。同制度は、日本でも以前に存在していたのですが、敗戦を理由に昭和23年に廃止されて以来、これまで再度の制度導入は実現していませんでした。
なぜ今その制度の再導入が検討されているのか。ひょっとしたら、ようやく(?)日本にも国際感覚が醸成されてきたためかもしれません。でも本当のところは、どうも安全保障分野での情報収集を活発化させている中国への懸念があるようです。
実際にこの制度が導入されて、どの程度の頻度で運用されるかは予測不能です。運用の頻度という観点では、以下の記事にあるように、「公共の利益のための通常実施権(特許法第93条)」も、特許庁曰く過去に1度だけ裁定請求されたものの却下されており、今回の久々の裁定請求がどうなるのか注目されていますよね。
以上、特許非公開制度の導入(&裁定通常実施権)についてでした。この制度が導入されると、例えば、発明者も意図していなかった軍事転用が判断されて、その特許出願が秘密命令で非公開になることにより、発明者が予期していなかった不利益を被る場合も出てくるでしょう。なお、アメリカでは、秘密命令によって特許が付与されなかった場合、もしくは、その発明が実施できなかった場合は、損害賠償を請求できるよう法整備されています。発明を実施(公開)したい発明者と、発明を非公開にしたいお国側と、の間で、攻防が繰り広げられることも将来あるかもしれませんね。
ここまで読んでいただきありがとうございました!