今回は長いタイトルですみません。先日、特許庁から以下の報告書が挙げられました。
この報告書は、「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」や、 「PCT 出願における国際調査等全般の質」について、オンラインアンケート形式で実施した調査結果をまとめたものです。このうち今回は、「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」に関する私の雑感を書いていきたいと思います。
なお、調査の対象者の選定方法は、以下の通りです(回答期間は令和3年5,6月)。
票1=「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」についての報告書
今回は、「令和2年度の国内出願における特許審査全般の質」の調査結果の中から、
1.特許審査全般の質についての評価(全体評価)
2.進歩性の運用についての評価
3.記載要件の運用についての評価
4.判断の均質性についての評価 についてピックアップしました。
1.特許審査全般の質についての評価(全体評価)
まず初めに、全体評価についてです。こうして見ると、概ね全体評価は年々向上しています。「普通」から「満足」や「比較的満足」に変化した割合の増加が全体評価に対する好印象化の主因のようです。一方、「比較的不満」&「不満」の割合が、平成27年度から令和元年度の間は5.6~6.5%であったのに対して、令和2年度では2.7%に大きく減少したのは、コロナ禍が関係しているのかもです。
2.進歩性の運用についての評価
次は、我ら(?)出願する側の最大のテーマである進歩性についての評価結果です。こちらも概ね評価は年々向上しています。「満足」+「比較的満足」の割合が平成24年度に21.0%であったのに対し、令和3年度には48.4%になったことから、この間に進歩性の運用は劇的に向上していたようです。私自身この業界に入って10年未満ですが、「数年前と比べて、今そんなに向上していたの?」というのが率直な感想です。実感が伴わないのは私自身が未熟だからかもしれません。
また、全体評価の結果(図1)でも感じましたが、平成24~30年度までの評価向上のペースが凄まじいですね。この間に特許庁内ではドラスティックな改革が行われたのでしょう、たぶん。
3.記載要件の運用についての評価
続きまして、記載要件についての評価結果です。進歩性の結果(図6)と比べると、「満足」+「比較的満足」の割合が若干少なく、その分、「普通」の割合が若干多いように見えます(見た目判断で精査はしていません)。この結果に関しては、なんだかシックリきました。記載要件で拒絶されるということは、自分が書いた明細書の記載に不備があったと審査されたワケで心中穏やかではありません(私だけでしょうか)。そのため、そのような審査結果には不満を持ちやすく、その不満がこの評価に表れているのではないかと思ったからです。
4.判断の均質性についての評価
最後に、判断の均質性の評価結果についてです。こちらも概ね評価は年々向上しています。ただし、報告書によれば、アンケートの自由記入欄において、この「判断の均質性」についての意見が多く見られ、その中には、記載要件や進歩性の判断の均質性に関して改善を期待する意見が見られたそうです(多くの意見の中で、改善を期待する意見が多かったか否かは報告書からは判別できず)。審査官による判断の均質性…確かに改善してもらえればそれに越したことはありませんが、審査官もそれぞれ別人格の人間ですから、なかなか難しそうですよね。
5.まとめ
以上、報告書に関する私の雑感でした。ユーザー評価に基づく報告書であることから、特許審査の質は年々向上しているのは間違いないようです。同報告書には、「審査官の技術等に関する専門知識レベルについての評価」や「面接、電話等における審査官とのコミュニケーションについての評価」等についての記載もありますので、ご興味のある方は、ぜひ原本をあたってみてください。雑感でしたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!