IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権「研究者が注意したい著作権」【マータ】

みなさま、こんにちは。マータと申します。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plainマータ(博士/弁理士) (@b8L18UnY7nPd5NC) | Twitter

 

研究をお仕事にしている方は、ご自身の研究内容について論文や総説などを執筆することがあるかと思います。また、それらがジャーナルに掲載された後で、その論文内で用いた画像、表、グラフ、イラストなどを他の媒体で2次的に利用したい場面もあるかと思います。

 

そのような時に、ついつい「自分が作った図やイラストだから、他でも自由に使っても大丈夫だろう」と考えてしまいそうですが、少し注意が必要です。

 

というのも、多くのジャーナルでは、著作権についてはジャーナル側に帰属することを定めているからです。例えば、日本脊椎脊髄病学会が刊行している「Journal of Spine Research」の投稿規定には、下記のように書かれています。

 

『Journal of Spine Research』投稿規程より引用

http://jsr-journal.jp/files/jsr_guide.pdf

 

上記によると、著者は自分の論文の図等を、特定の目的(教育・研究・学会活動)に限って許諾なく複製できるが、その際は元論文の出典を明示しなければならないと書かれています。論文が掲載され、著作権がジャーナルに帰属した後は、例え自分がオリジナルで作成・編集した図であっても、別の場所で使う時は出典の明示が必要なのですね。また、上記の投稿規定には、商品活動・宣伝目的の複写には、編集委員会等の承認が必要とも書かれています。

 

他にも例を挙げると、日本薬学会のYAKUGAKU ZASSHIの投稿規定には下記のように書かれています。

『YAKUGAKU ZASSHI』の投稿規定より引用

https://yakushi.pharm.or.jp/j_regulations.pdf

 

上記の記載によると、著者は、論文が適切に参照及び帰属されている限り、学会の許可なしに図及び表を転載できると書かれています。

 

あと一つ例をあげると、日本生化学会 の邦文誌「生化学」のガイドラインにも、著作者自身による著作物の再利用については、「出典を明記する」必要があることが書かれています。

『生化学』の投稿規定より引用

https://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2020/02/862e97ca12d7e64450a61959185b35fc.pdf

 

<まとめ>

以上、今回は研究者(論文の執筆者)が注意したい著作権について記事にしました。

ジャーナルに掲載される論文については、著作権がジャーナル側に譲渡される場合が多く、著者であっても再利用する場合出典等を明記する必要があるのですね。一方で、今回は記事にしませんでしたが、最近はオープンアクセスジャーナルというオンライン上で無料で読めるタイプの雑誌も増えてきており、それらの多くは著作権を著者に帰属させているようです。なので、本記事のケースとはちょっと違いますね。これについては、機会があれば記事にしてみたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!!

 

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著作『ノンタンの絵本と著作権』[リッキー]

GWが終わりましたね。GWいかがでしたでしょうか。

 

私は、旅行に出かけることもなく子供たちと毎日戯れていました。子供たちもあまり大きくないので、今しかこんな時はないなと満喫しています。そして、毎日のように絵本の読み聞かせをしますが、ノンタンの絵本を読むことも多いです。昔、読んでもらったなぁと思う本を今は読み聞かせする立場です。

 

絵本

 

さて、比較的新しめのノンタンの絵本では、本のカバーにこんな記載がある絵本があります。比較的新しめとはいうものの、私が子供時代に読み聞きしていない絵本ですけれども。

 

この作品は、生前キヨノサチコさんが紙芝居用に描かれていた原稿を、ご遺族の協力を得て、一部修正し、絵本にしたものです。

 

この作品は、2003年に出版された『ノンタン・タータンあそび図鑑』の中の「ノンタンたいそう1・2・3!はい!」のページを、ご遺族の了解を得て再構成し、新しく絵本にしたものです。

 

 

どうしてこのような記載があるのでしょうか。真実とは異なるかもしれませんが、著作権法の条文から読み解いて、推測したいと思います。

 

著作権法には、著作者が存しなくなった後の人格的利益の保護が定められています。どういうことかというと、著作者がお亡くなりになった後も著作者が生存しているときと同様に著作者人格権を侵害する行為をしてはならないというものです。

 

著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権が含まれます。簡単に言えば、公表権は未公開の著作物を公開するか否かを著作者が決められるという権利、氏名表示権は著作物に著作者の名前を掲載するか掲載しないか及び掲載する場合に実名にするかペンネームにするか等決められる権利、同一性保持権は著作物を勝手に改変されない権利です。そして、著作者人格権は著作者に一身専属しており、著作者が亡くなると消滅します。

 

このため、著作者がお亡くなり著作者人格権が消滅した後も、著作者を保護するためにこのような条文があるのです。そう、好き勝手にノンタンの話を書き換えられないようするためです。

 

好き勝手にノンタンの話を書き換えたらどうなるのでしょうか。書き換える行為は改変に当たりますので、同一性保持権と関連してきます。もし、この書き換え行為が著作者の意を害するような改変だとした場合には、遺族が改変行為を差止たり、改変行為により名誉を失墜させるようなことをしていれば名誉回復の措置請求を行うことができます。

 

ここからは想像になりますが、出版社は、遺族の協力や了承を得て、絵本にしやすいように改変をしたのだと思います。著者の事情をよく知る遺族の協力や了承を得ていれば、作者の意を害するような改変になることもないとも思います。

 

それにしても、ノンタンの絵本は大人になってから読んでも楽しいですね。絵本を読みだすと、テレビに気を取られていた子供が絵本のところに駆け寄ってきます。子供にとってもテレビよりも楽しいものなのでしょう。

 

まとめ

 

ノンタンの絵本にあった記載を基に、著作者がお亡くなりになった後の人格的利益の保護について記載してみました。亡くなった著作者の著作物を勝手に改変して、著作者の意を害するような行為を慎みましょうという内容です。著作権法はこんなところも保護しているんだ、と気づきになってくれたら嬉しいですし、より著作権法が身近になってくれたらさらに嬉しいです。

 

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リッキー

 

商標「指定商品等を記載する時の注意点」【MI】

こんにちは。MIです。

ついにGWが始まりました!11連休の方もいるとのことで羨ましいです。私は、しっかり間の平日は出勤です。。。

さて、今回は、先日弁理士会から「商標審査便覧の改訂に伴う実務上の注意点について」の案内があったときに考えてみたことを書いてみたいと思います。商標についてそこまで得意ではないので初心者向けですが、逆に基本的なことを知ってもらうor振り返ることができるかなと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いします!

 

 

「指定商品・役務」って?

商標登録出願をするときには、「商標(マーク)」と「指定商品・役務(以下、まとめて指定商品等といいます。)」を記載します。要は、「そのマークを何に使うのか」を書くということです。

商標権は「マーク+指定商品等」で権利範囲が決まるため、「指定商品等」の指定は非常に重要です。出願に関しては、極端な話、マークが全く同じでも指定商品等が全く違えば登録される可能性があります。

 

指定商品等の「区分」って?

「指定商品等」は、明確に、かつ定められた「区分」に従って書かないといけません。「区分」は、政令で決まっており、下記のページ等で調べることができます。

 

類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2022版対応〕 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)

(「商標]タブから「商品・役務名検索」)

上記の特許庁URL内の「各類に属する商品及び役務の概要」は、各区分に属する商品等の大まかな枠を知るのに役立ちます。

info11.pdf (jpo.go.jp)

また、「Toreru Media」さんが、表形式で見やすい「商標の区分一覧表(分類別)」を公開してくれています。

わかりやすい!商標の区分一覧【2022年最新版】 | Toreru Media

 

今回の注意点のポイント

今回の注意点の基になる改訂は、去年(令和3年3月)に行われたものです。その中でも「指定商品又は指定役務の審査に関する運用について」がポイントになると思います。

46_01.pdf (jpo.go.jp)

特に上記資料の「5.」項のところで、要するに「これからは、区分を考慮して指定商品等の材質や用途等について特定する」ということです。

上記資料の例で言えば、区分を「第6類(卑金属及びその製品)」として「郵便受け」を指定した場合、それは「金属製郵便受け」と特定(限定して解釈)するということです。

 

「今まで」と「これから」の違い

今まで(令和3年3月以前)であれば、「第6類 郵便受け」と書いた場合、以下の拒絶理由が出されていました。

  • 「何製」か不明確(商標法6条1項)
  • 金属製以外のものは当該区分に属しない(例えば、石製のものは第19類)(同条2項)

それに対しては、以下のような対応がされてきました。

  • 商品を「金属製郵便受け」に補正
  • 材質による適切な区分&商品を追加や分割(「第19類 石製郵便受け」等)

そして、これから(現在)は、「区分を考慮して指定商品等の材質や用途等について特定する」結果、上段の対応が不要になる一方、下段の対応ができなくなります。

 

よく考えると恐いかも、、、?!

ぶっちゃけ、材質や用途によって「区分」が違うなんてことを知らかった(又は気付かなかった)場合、「今まで」は拒絶理由によって気付くことができました。その上で、「金属製」のみで良ければ「金属製郵便受け」と補正するし、「石製」も欲しければ「第19類 石製郵便受け」を追加すれば良かったわけです。これからはそれができません。

また、上記の「郵便受け」の例の場合、「金属製(第6類)」、「石製(第19類)」、「金属製又は石製のものを除く(第20類)」の類似群コード(特許庁が指定商品等の類否を判断するために付けているコード)が一緒(19B35)なため、特許庁での審査における後願排除効という意味では、限定解釈されてもある程度の効果はあると思います。しかし、侵害訴訟時には、取引の実情等を踏まえて「金属製(第6類)」の商標権で「石製(第19類)」の商品を排除できない可能性もあります。

出願時に、適切な区分、当該区分に含まれる材質&用途の範囲、他区分の指定の要否をしっかり検討することが必要です。特に「○○製」とか「○○用」という記述があったら要注意です。他の材質や用途についても権利化が必要かどうか検討しましょう。

 

疑問点

特許庁の資料の例(郵便受け)はわかりやすいのでいいんですが、どの区分に属するか微妙なものの場合はどうなるのでしょうか?上記の運用が適用されて「区分+商品等の記載」で出願人が材質や用途等を特定したと解釈された結果、他区分の追加補正や分割ができないケースが出てくるのでしょうか?複数の区分に跨がる商品のセット物とかはどうなるのでしょうか?そのような場合は上記の運用は適用せず、従来通りの対応を許容してくれるのでしょうか?

いろいろ分からないことについては、今後情報収集&勉強していきたいと思います。

 

おわりに

最後まとめきれずに申し訳ありません。私としては、指定商品等について考え直すキッカケになったので非常にありがたかったです。

今回(とはいえ1年以上前、、、)の改訂については、これから自社で商標出願をしようと考えるような方にとっては、若干厳しめの方向の改訂かなとも思います。商標権取得を広めていきたい者としては、あまり厳格に適用しないで欲しいなと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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弁理士「文章に表れる書き手の個性」[らるご~]

特許事務所勤務の弁理士らるご~です。

私事ですが、私の子供が通う保育園では、子供を迎えに行くと、その日1日のクラスの様子を記した報告メモが玄関に掲示されています。その報告メモは日ごとに様々な保育士さんが書いて下さり、子供の迎え時にそれを読むのが日課となっております。その報告メモについてですが、最近2,3行読んだ時点ですぐに、書いた保育士さんか誰か分かるようになってきました。小説等でも同じかと思いますが、文章からにじみ出る書き手の個性のようなものを感じ取っているのだと思います。

ということで、今回のテーマは、「文章に表れる書き手の個性」についてです。

 

◆書き手次第で読みやすい(にくい)明細書

特許事務所に勤務していらっしゃる弁理士の方の場合、何らかのきっかけで同じ事務所内の他弁理士の特許明細書を読む機会があると思います。そのときに、「A(B)弁理士の明細書はいつも読みやすい(読みにくい)」というような感覚を持ったことはないでしょうか。こんなことをお聞きするのは、私にとっては、発明の内容に関わりなく、どの案件であっても毎度読みやすいA弁理士が実在しているからです(毎度読みにくいB弁理士も然り)。知財部の方にとっても、いつも明細書が読みやすい(にくい)弁理士さんを認識されているのではないでしょうか。このように、発明の内容を論理的に説明する明細書であっても、書き手(弁理士)によって読みやすさの違いがあり、その違いは、その書き手(弁理士)の個性(≒思考の癖のようなもの)に因るところが大きいと思っています。ここでいう個性というのは、要素分解すれば、言葉選び、論理構造、単語の統一感、図の活用の巧拙などに分けられると思いますが、今回これらの点の深掘りはしません。

              書類とペンのイラスト

 

◆この記事で言いたかったこと

読みやすい=特許明細書として優れている、とは限りませんが、私自身の方針としては、発明を十分に説明することは大前提として、可読性にも十分に注意を払って文章を作成しています(しているつもりです)。しかし、注意を払ったところで自分が作成した文章を客観的に判断するのは難しいことから、いつも怯えながら仕事しているのが現状です。つまり、この記事で言いたかったのは、「文章に滲み出る書き手の個性が読みやすさの違いを生むとして、それならばそもそも読みやすい文章の定義って何だろう?」というボヤキです。「面白いマンガ」や「売れる芸人さん」の定義と同じで、きっと一義的に定義できるものではなさそうですよね。文章の読み手によっても、読みやすいor読みにくいの感覚は違いそうですし。懇切丁寧に説明しようとすれば自ずと文章は長くなって読み手に負担を強いることになり兼ねず、かといって、間欠手短に説明すれば今度は読み手が内容についていけなくなる可能性が高くなる…そんなトレードオフな悩みを再認識させられる機会が近頃多かったため、今回このようなボヤキの記事を挙げた次第です。

 

◆まとめ

以上、「文章に表れる書き手の個性」でした。個性というと生得的なニュアンスを多分に含むニュアンスがあるため、適切な表現ではなかったかもしれませんね。

最後に、読みやすい文章とは、逆説的ではありますが、読みやすい文章って何だろうと試行錯誤して書かれた文章のことなのかもしれません。旨いことを言おうと思いましたが、あまり旨くないですね。こんな文章をここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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「🌸4月18日は発明の日🌸」【マータ】

みなさま、こんにちは。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plainhttps://twitter.com/b8L18UnY7nPd5NC

 

本日、4月18日は「発明の日」ですね。

        f:id:discussiong1:20220418023740p:plain

4月18日は、初代特許庁長官の高橋是清らが「専売特許条例」(現在の特許法の前身)を公布し、日本の特許制度が始まった記念日だそうです(明治18年4月18日)。

 

現在、特許庁は、「発明の日」を記念して「ここがすごいぞ!日本の十大発明家」というYouTube動画を公開していますね。

www.youtube.com

 

拝見したのですが、現職の特許審査官が出演されていて中々新鮮な感じがしました。

 

また、特許庁庁舎1階では、パネル展示「イノベーションに寄与した日本の発明」を開いており、デンソーウェーブの「QRコード小林製薬の「冷却ジェルシート」パナソニックの「食器洗い乾燥機」などが紹介されているそうです。

 

中でも、デンソーさんと言えば、最近Twitterの投稿でも話題になっていますね。

 

このTweetは、最近ちまたで流行っているハッシュタグ「#あれ実は私なんです」を付けた投稿であり、現在(2022年4月18日)11000RT6.6万いいねがついています。

デンソーさんは、その後のTweetで今回の特許庁でのパネル展示についても紹介されています。なかなかの宣伝効果になりそうですよね。

 

デンソーさんのQRコードは、その開発秘話も非常にドラマチックで、過去にも度々記事になっていますね。何でも、開発者の方が昼休みに遊びでやっていた囲碁がヒントになったとか!!

 

www.fnn.jp

 

会社として世の中に誇れる大発明があるということは本当にすごいですね!!

 

以上、「発明の日」に因んだ記事にしてみました。

今日は、私たちの生活を豊かにする全ての発明と発明者の皆様に感謝する一日にしたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!!

 

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著作『パブリックドメインと著作権』[リッキー]

 

桜も満開を通り過ぎて散ってきましたね。散り際も美しいのが桜のいいところですね。お寺を背景に、散る桜を見たら、心が癒されそうです。

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さくら



さて、少し前のブログにPDについて少し触れました。PDは、パブリックドメインのことで、例えば、著作権の権利存続期間を満了した著作物で、誰でも自由に使える状態になった著作物が当てはまります。

 

パブリックドメインになった著作物は、どんなふうに使われても良いのでしょうか?

 

例えば、京都の有名なお寺などの建造物は、著作権法のない時代に建てられているのでそもそも建築の著作物にもならないのですが、仮にお寺の立てられた時代に著作権法があったとして、現在、存続期間を満了しているとします。つまり、パブリックドメインになりました。このお寺のキーホルダーを作って販売することを思いつきました。このお寺のキーホルダーを製造販売することに何か問題はあるでしょうか?

 

著作権法上は、著作権の存続期間が満了しているという前提ですので、著作権侵害を問われることはありません。それでは、このお寺のキーホルダーを製造販売することができますねと言われれば、著作権法上は確かにそうです。

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キーホルダー



しかし、このお寺には所有者があり、所有者は勝手に自己の所有物であるお寺のキーホルダーが知らぬところで販売されているとなるといい気持ちはしないでしょう。

 

昔から、商売においては、『三方よし』という言葉がありますね。買い手、売り手、世間の3つに良い影響を与える商売がいい商売という考えです。

 

この考え方に従ってみますと、お寺のキーホルダーが欲しいという人がいれば、買い手よし、もちろん売り手もよしとなりますね。世間はどうでしょうか?世間には、お寺の所有者が入ってきますね。お寺の所有者にとっては、上述の通り、勝手に自己の所有物であるお寺のキーホルダーが知らぬところで販売されているとなるといい気持ちはしないですから、世間よし、とはならないでしょう。

 

それではどうしたらいいのでしょうか?

 

そう、著作権とは関係なく、このお寺のキーホルダーの製造販売について、お寺の所有者に許諾をもらえばいいのですね。そうすれば、勝手に自己の所有物であるお寺のキーホルダーが知らぬところで販売されていることにはなりませんので、世間よしとなるでしょう。許諾をもらうときに金銭の支払いが必要かもしれませんが、そのお寺に惚れて、キーホルダーを販売するのであれば、必要経費なのではないでしょうか。

 

まとめ

 

パブリックドメインについて考察しました。パブリックドメインになっている著作物をいかようにも使っていいものなのか、仮の事例で検証してみました。法律上問題が無くても、倫理の問題等もありますので、考えなければならないことに暇がありません。

 

 

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リッキー

 

特許「特許庁ステータスレポート2022公開!」【MI】

こんにちは。MIです。

まだまだ花粉が飛んでますね。今もマスクの下は両鼻に鼻栓を突っ込んでいます。。。この時期滑舌が悪いのはそういうワケなんです(娘の保育園の先生スミマセン)。

さて、先日3/30に、特許庁から「特許庁ステータスレポート2022」が公開されました!これは、特許庁が「最新の特許庁の統計情報及び政策の成果をいち早く発信する」ために作成・公開しているものです。

特許庁ステータスレポート2022 | 経済産業省 特許庁

いろいろなデータが出ていて面白いです。友達やお客さんに話すネタにもなりますし。

というわけで今回は、特許庁ステータスレポート2022から、私が興味を持ったデータについて書いてみたいと思います!よろしくお願いします。

 

 

特許について ~出願件数減少に歯止め?!~

まずは特許から見ていきましょう。

2021年の特許出願件数は「289,200件」でした。前年(2020年)の「288,472件」からは微増となりましたが、過去10年のデータから明らかな減少傾向に歯止めが掛かったとは言い切れないかなと思います。数年前に高校で知財授業をやったときの資料に書いた「特許出願は年間約32万件!業務時間中に1分で2.8件!(320,000件÷12ヶ月÷稼働日20日÷8時間÷60分)」は、そろそろ修正しないといけませんね。。。

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出典:特許庁ステータスレポート2022

また、特許については、国内企業の特許登録件数上位10社のランキングで、上位5社のうち、前年1位のキャノンが3位に後退し(3,680件→3,134件)、前年2位の三菱電機と同3位のトヨタ自動車がそれぞれ1位(3,626件→3,494件)、2位(2,714件→3,389件)に上昇しました。

 

意匠について ~意匠制度の利用状況に動きあり?!~

2021年の意匠出願件数は「32,525件」でした。前年(2020年)の「31,798件」から増加しており、過去10年のデータを見ると横ばいではあるものの、今後の更なる増加も予想できる数字かと思います。実際、実務でも意匠出願の相談は以前と比較して増えている感じがあります。

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出典:特許庁ステータスレポート2022

国内企業の意匠登録件数上位10社のランキングでも、4社が前年10位圏外からランクインしています(うち2社は前年20位以下。特許は圏外からのランクインは1社のみ。)。特許に比べて全体の件数が少なく、動きやすいランキングではありますが、意匠制度の利用状況の変化には今後も注目です。

 

商標について ~増加傾向は落ち着いたものの取り合いは続く?!~

2021年の商標出願件数は「184,631件」でした。前年(2020年)の「181,072件」からは増加していますが、過去10年を見たときの増加傾向は頭打ちになっている感じがします。

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出典:特許庁ステータスレポート2022

また、商標といえば、「異議申立て」や「取消審判(不使用取消)」の件数も気になったんですが、前年比で増えているとはいえ、これがどの程度の数値なのかは判断に迷います。自分的に数値のイメージは持ちつつ、今後の変化に注目したいと思います。

取消審判(商標)請求件数の推移

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出典:特許庁ステータスレポート2022

異議申立件数(権利単位)の推移 ※商標はオレンジ色

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出典:特許庁ステータスレポート2022

 

世界の動き ~日本は取り残される?!~

最後に、世界の動向です。

全体としては、世界の出願件数は中国の件数に引っ張られている感じです(中国以外はグラフ上では横ばいに見えてしまう)。

そんな中ちょっと気になるのは、10年前(2011年)と比較した日本(JPO)の各出願件数の伸びが、他の4庁よりも小さい点です(特に、特許は日本のみ減少している)。

特許:五庁(IP5)の特許出願件数の推移

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出典:特許庁ステータスレポート2022

意匠:ID5の意匠登録出願の意匠数の推移

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出典:特許庁ステータスレポート2022

商標:商標五庁(TM5)の商標登録出願件数の推移

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出典:特許庁ステータスレポート2022

日本の出願件数の減少については前々から言われていることですが、改めて見ると、出願をメインとしている特許事務所側の人間からしても明るい話題ではないですね。。。

 

おわりに

特許庁ステータスレポート2022」にはまだまだいろんなデータが載っており、見る人によっては非常に有意義な発見もあると思います。また、このような統計について知っておくことに損はないと思います。是非、ご一読ください!

本日もお付き合いいただきありがとうございました!