IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

弁理士「特許出願の書類、初めに何から作ります?」[らるご~]

お盆が終わってもまだまだ暑い日が続いておりますね。夏バテしてませんか、事務所勤務の弁理士らるご~です。この記事が投稿された本日は、本年度の弁理士試験の論文試験当日でしたが、受験された方々お疲れ様でした。ここまで勉強漬けの日々だったと思いますので、少しは休息していただければと思います。

さて今回は、タイトルにあるように、特許出願の書類を作成するにあたり、「特許出願の書類、初めに何から作ります?」について書いていきたいと思います。

 

本記事のタイトル「特許出願の書類、初めに何から作ります?」の意味

お客さんから特許出願の依頼があった場合に、依頼を受けた弁理士は、出願書類として明細書や特許請求の範囲、図面を作成するのですが、そのときにどの書類から作成を始めるのか、要するに「特許出願の書類、初めに何から作ります?」というのが本記事のタイトルです。そして、私の知る限り、書類作成の流派には、(1)初めに特許請求の範囲から作る派と、(2)初めに図面から作る派と、があるようです。どちらの流派(?)にせよ、特許請求の範囲→図面(もしくは図面→特許請求の範囲)を作成してから、次に明細書を作成することになります。

そもそも今回このような記事を書こうと思うに至った理由は、弁理士全員が(1)だろうと勝手に思い込んでいたのですが、(2)の人も少なからずいらっしゃることに私が最近気付かされたからです(視野が狭くてスミマセン…)。

 

(1)初めに特許請求の範囲から作る派

私らるご~は、こちらの流派です。具体的には、お客さんからお聞きした発明の内容(及びお客さんから提出された発明に関する図面)から発明の肝(エッセンス)を抽出して特許請求の範囲を作成したのち、出願書類用の図面を作成します。そのような順番での作成を私が好む理由は、特許請求の範囲を作成する際に、どこが発明の肝であるかについて思考を巡らすことになり、その結果として抽出された発明の肝を意識したうえで出願書類用の図面を書き起こすことができるからです。例えば、機械を構成する部品のうちA部品とB部品との位置関係がその発明の肝であるならば、その位置関係を強調して図示した(出願書類用の)図面が作成することができます。

コンピューターを使うペンギンのイラスト

(2)初めに図面から作る派

こちらの流派については最近知りまして、その流派の方々からお聞きしたことを記します。こちらの流派では、お客さんから提出された発明に関する図面(及びお客さんからお聞きした発明の内容)に基づいて出願書類用の図面を書き起こしたのち、特許請求の範囲を作成するそうです。つまり(1)とは逆のプロセスということですね。この順で作業を行うと、図面を書き起こしていく過程でお客さんの発明への理解が深まることから、その深まった理解に基づいて特許請求の範囲を円滑に作成できるのだそうです。確かに(1)とは異なりますが、これはこれでアリだと思います。図面を書き起こすためには、お客さんから提出された図面の詳細を理解する必要があり、その過程で発明の肝を抽出することにつながるのでしょう。

 

どちらの流派が優れているということではない。

 以上(1)(2)それぞれの流派について説明してきました。なお、(1)(2)のいずれにせよ、特許請求の範囲と図面とのうち一方を作成してから他方を作成している間に、再び一方を修正したり等の作業は当然に行っているのでしょう。

ここまでダラダラと書いてきましたが、どちらの流派が優れているのか等の議論をしたいのではなく、「人それぞれ思考の仕方があるから、特許出願の書類作成においても人それぞれ」と思いました。人それぞれ特有の思考の流れがあるため、(1)で作業を進めた方が効率の良い人もいれば、(2)の方が気持ちよく作業できる人もいるのだと思います。いわゆる「みんなちがって、みんないい」というヤツです。ひょっとしたら私が知らないだけで、(3)初めに明細書から作る派の方もいらっしゃるのかもしれませんしね。何の作業にせよ自分のやり方に固執することなく、たまには違ったやり方を試してみて自分にとってのベストを探求していくのがあるべき姿勢かと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。