IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

商標&著作『流行語大賞(登録商標)と商標権と著作権』[リッキー]

12月1日に、ユーキャン新語・流行語大賞が発表されました。今年はブログを書くタイミングとばっちりな感じです。今年の「新語・流行語大賞登録商標)」を確認しましょう。去年のは何だったかな・・・という方はこちらもどうぞ。

 

 

discussiong1.hatenablog.com

 

 

今年の年間大賞は、「リアル二刀流/ショータイム」でした。大谷翔平選手の活躍がものすごかったですものね。早速、J-platpat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)で調べてみました。TOP画面にある「簡易検索」で、「リアル二刀流」と「ショータイム」を入力し、検索ボタンを押して調べてみました。

f:id:discussiong1:20211205214822p:plain



また、2021年はオリンピックイヤーであったので、オリンピックに関する流行語がTOP10に2つもランクインしていますね。「ゴン攻め/ビッタビタ」と「ぼったくり男爵」です。これらは、商標権でなく、気分を変えて(?)著作権について検討してみたいと思います。

 

 

1.リアル二刀流に関する検索

 

「リアル二刀流」は何かヒットするのかと疑念がありましたが・・・結果は、0件でした(2021年12月3日時点)。「リアル二刀流」を権利化しようとする人は今のところいないということでしょうか。

 

「リアル二刀流」に関する登録の可能性ですが、原則は全体観察という手法を使いますので、指定商品指定役務との関係で商品等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当しなければ、商標登録を受けられる可能性はあるでしょう。例を挙げると、「APPLE」という商標を指定商品「果実」について商標登録を受けようとしても品質等を表してると判断され商標登録されないでしょう。一方、「APPLE」という商標を指定商品「コンピュータ」について商標登録を受けようとすると、商品等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当しないので、現に登録商標が存在します。

 

もう一例を挙げると、小林製薬株式会社は、「二刀流」という商標を指定商品「家庭用帯電防止剤」や「デンタルフロス」等で商標登録出願をしています。これらも普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当しないと思います。「二刀流」からイメージすることと「家庭用帯電防止剤」や「デンタルフロス」からイメージすることに、ずれがある感覚が伝わりますかね?

 

続いて「二刀流」を検索し見ました。さすがにこちらは登録商標がいくつかありそうな予感がしますよね。結果は、29件でした(出願中含む、2021年12月3日時点)。古いものは、昭和49年の出願があり、「剣豪二刀流(登録商標)」です。単純な「二刀流」は昭和59年に出願されています。しかも標準文字商標がうち21件です。わかりやすい商標は、標準文字で権利化したくなるものですね。なお、標準文字は、特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体で標準文字で商標登録がなされた場合、標準文字の商標権の及ぶ範囲は、登録された商標(標準文字)と同一又は類似の範囲であり、通常の商標登録と比較してその範囲の広狭に差異はありません。

f:id:discussiong1:20211205215115p:plain

二刀流



 

2.ショータイムに関する検索

 

「ショータイム」はいくつヒットするでしょうか。答えは、27件でした(出願中含む、2021年12月3日時点)。昭和59年に出願があり特徴的な字体で「SHOWTIME」という登録商標です。標準文字商標がうち10件で、「二刀流」と比較すると、少なめのように思えますね。標準文字商標だと権利化が難しかった等諸事情がありそうに思えてきます。

 

「ショータイム」については、5,6年以上も前に楽天株式会社が異議申し立ての末に権利化を行っているのが印象的です。また、最新の商標権は、「Let‘s 省タイム(登録商標)」でパナソニック株式会社が2020年10月9日に出願し、2021年4月16日が登録日となっています。そして、分納満了日が2026年4月16日となっています。

 

補足すると、商標権は、10年に1度の更新制で、年金を納付することで半永久的に権利を維持することができます。また、年金は10年分を一括でなく、前半5年と後半5年に分けて納付することができます。分納満了日が記載されていることからパナソニック株式会社が前半5年分の年金を納付していることが分かります。もしかすると、10年使わないかもしれないと考えているのかもしれませんね。

 

 

3.「ゴン攻め/ビッタビタ」と「ぼったくり男爵」の検討

 

著作権法では、著作物の種類を例示していて、その中に「言語の著作物」があります。「ゴン攻め/ビッタビタ」と「ぼったくり男爵」は、「言語の著作物」に該当するでしょう。著作物の定義に嵌るのかひと悶着ありそうですが、「ゴン攻め」からは思想を、「ビッタビタ」「ぼったくり男爵」からはある感情を読み取ることができそうに思います。

 

さて、問題は、創作性が認められるか否かにあるのではないでしょうか。特徴的な言葉なので創作性がありそうに思えてしまいますものね。

 

「言語の著作物」として認められるには、比較的長い文章でないと創作性を認められた事例は少ないと思われます。日常生活で使ってしまう短い言葉に著作権があると生活に支障が出てしまいかねませんし。日本には俳句や短歌があるからでしょうか、五七五調や五七五七七調の言語は、短いながらも創作性が認められることが多いという印象です。「ゴン攻め/ビッタビタ」と「ぼったくり男爵」は、俳句や短歌と比較しても、文字数が少ないですね。

 

また、ここでも登場するのですが「選択の幅」がここでも関与しそうです。文字数が少ないということは、「選択の幅」が狭いということになり、創作性を発揮しにくいという流れになりそうです。個人的には、著作権法の保護を受けられないと思います。そして、短い文言について何らかの権利保護を求めるのであれば、商標登録出願をお勧めしたいと思います。最終的に創作性が認められるか否かについては訴訟が起きて、裁判所が判断を示すまでわからずじまいでしょう。

 

 

4.まとめ

2021年の「新語・流行語大賞登録商標)」について、年間大賞、TOP10の一部について商標登録の状況を確認し、著作権についての検討を行いました。流行語は時代を映す鏡ですから、流行語を使いこなせるかはさておいて、時代の流れに取り残されて浦島太郎のようにならないようにアンテナを張っておきたいと思います。2022年はどのような流行語が誕生するのか楽しみですね。