夏らしい日々が始まったなと思うこの頃ですが、例年ですと、そろそろ沖縄以外の地域も梅雨明けしてくるのでしょうか。
前回、20年前の商標法の問題というタイトルで書かせていただきました。
コンセント制度もその頃から議論が始まったのかと思ったのですが、不勉強でした・・・。
遅くとも平成7年には議論が始まっていたのですね。
令和4年11月22日(火)に行われた、第10回商標制度小委員会の資料を基に書いていきたいと思います。
平成7,8,18,28年と過去に検討されていたことが記載されています。
それぞれ、見送りになった理由ごとに整理されていますので、それぞれ見てみましょう。
出所混同のおそれ(平成7,18,28年)
出所混同のおそれ、これは商標法の肝ですからね。慎重に議論が重ねられたものと思います。
留保型コンセントを採用した場合、審査官が出所混同のおそれを審査することとなるほか、登録後の混同防止表示請求や、実際に混同が生じた場合の取消審判の規定を設けることで、出所混同のおそれを排除することが可能になると考えられる。
留保型コンセント制度とは何かと説明する前に、コンセント制度には、(1)完全型コンセント制度と、(2)留保型コンセント制度と、が存在するようです。
完全型コンセント制度とは、出所混同を生じる商標の商標権者の同意があれば、出所の混同を生じるとの拒絶理由を解消して、商標登録を受けることができる制度です。
一方、留保型コンセント制度とは、出所混同を生じる商標の商標権者の同意があっても、出所の混同を生じないと、同商標権者の説明等で拒絶理由を解消しなければ、商標登録を受けることができない制度です。
留保型コンセント制度で拒絶理由を解消する方法はほかにもあって、同意する商標権者が親会社で同意をしてもらう出願人が子会社のような、主従関係があるときなどだそうです。
最初は、完全型コンセント制度のことを想像していたのですが、ちゃんと審査がなされる留保型コンセント制度とするようです。国際調和のためにも、このコンセント制度導入がなされるのですが、諸外国も留保型コンセント制度がメジャーのようです。
あと、混同防止表示請求や取消審判の制度で、出所の混同のおそれを排除するようです。
混同防止表示請求は、出所の混同を生じるおそれのある商標の商標権者が互いに、「○○とは営業上、組織上関係がありません。」とか、「○○とは別です。お間違えの無いようお願いいたします。」のような表示をすることです。
審査処理の遅延(平成7,8年)
検討時と異なり、現在は審査処理の迅速化、効率化が図られており、コンセント制度を設けることによる審査処理期間への特段の影響は、ほぼ生じない又は極めて少なくなったと考えられる。
このために審査の迅速化、効率化をしていたわけではないでしょうが、さすが特許庁です。
アサインバックの存在(平成7年)
ユーザーからは、アサインバックよりも簡便・低廉な手続としてコンセント制度の導入が求められており、アサインバックがコンセント制度の代替として機能しているものとはいえない。アサインバックは出所混同のおそれが審査されない。
アサインバックとは、出所混同を生じるおそれがあると拒絶された商標の出願人が、引用商標の商標権者に当該商標を名義変更して、拒絶理由を解消し(この場合、4条1項11号の拒絶理由だけがある場合を想定し、「他人の」商標ではなくなったとの仮定)、商標権の設定登録前に、元の出願人に名義変更をして、商標権の設定登録を受けることです。
名義変更を繰り返しただけですから、本当に、拒絶理由を解消したわけではないですよね。異議申し立てで登録を取り消すことも可能ですからそこら辺のリスクが大きいと推測します。
また、審査を受けて登録になっても取り消される可能性をゼロにはできませんから、なおのことリスクが大きいと思います。
あと、出所混同を生じるおそれのある商標について、おいそれと商標権者が協力するのか考え物です。出所の混同が生じたら、ビジネスに影響が出ますから、社長や取締役会がうんとは言わない気がするのは気のせいでしょうか。
商標法の趣旨との関係(平成28年)
商標法の趣旨(法目的)の一つである「需要者の利益」の保護については、(アサインバックと異なり)出所混同のおそれを審査で考慮すること等で担保されるものと考えられる。
コンセント制度の導入の議論は、ユーザーありきで始まり、需要者が置いてけぼりを食らっていたのではないかと想像します。
拒絶理由を解消できなくて困っている出願人(ユーザー)にはありがたい存在だと思えますからね。
これについては、留保型コンセント制度を採用することで、問題解決が図られたようです。これまでどおり審査がありますから、「需要者の利益」は保護されているとの考え方です。
最高裁判決との整合性(平成28年)
登録査定後にその事情(現在の使用状況等)が変動しないことを担保できるようなものについては、一般的・恒常的な事情に準じたものとして、商標法第4条第1項第11号の類否判断の枠外において、考慮することも許されるのではないか。
一般的・恒常的な事情に準じたものとは、「当事者間で、将来にわたってその事情(現在の使用状況等)を変更しない旨の具体的な合意が行われている等、登録査定後に当該事情が変動しないことを担保できるようなもの」のことのようです。
なんか、語尾がちょっと弱弱しい感じがするのは気のせいでしょうか。
まとめに代えて、今回のかゆいところ
- コンセント制度には、(1)完全型コンセント制度と、(2)留保型コンセント制度と、が存在する
- 留保型コンセント制度では、やっぱり審査官が出所の混同を生じるおそれについて審査する
- アサインバックとは、名義変更を繰り返して、拒絶理由を回避して、商標権の設定登録を受けること
かゆいところに手は届いた出でしょうか?
ちょっと新しい試みとして、まとめの部分の雰囲気を変えてみようかなと思いました。気分が乗ったら、継続したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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