年度末ですね。今年度ではなくて・・・、昨年度の判決を復習していました。その中に、これはもう一度復習しておきたいと思う判決（令和元年（ワ）25152 特許侵害差止等請求事件）がありましたので、今回は判例について書かせていただきたいと思います。
今回の判例に言及する前に簡単に特許制度を復習しておきたいと思いますので、お付き合いください。
特許権とは、発明を公開する代償として、出願日から２０年間、特許権に係る発明を特許権者が独占的に実施することのできる権利をいいます。そして、特許権を侵害することを特許権侵害といいます。
特許侵害とは、権原なき第三者が他人の特許発明を業として実施する行為をいいます。
長くなりましたね。言いたいのはここからです。
特許発明というのは、特許権の特許請求の範囲に記載されている発明とほぼイコールでして（厳密には違う場合もあります）、特許請求の範囲には以下のような記載があります。
【特許請求の範囲】
A手段と、
B手段と、
C手段と、を備える○○装置。
A手段だけ実施しても、B手段だけ実施しても、C手段を実施しただけでも、特許権侵害にはなりません。日本国内で、A手段、B手段、C手段のすべてを実施しないと、特許権侵害とならないことを「権利一体の原則」と呼んでいます。
さて、日本でもタイトルにある「域外適用」に関する判決が出て、そのとき、ニュースが出回りました。
そうです、インターネットのサーバー装置が米国内に設置されていて、サーバー装置が【特許請求の範囲】の範囲に構成要件として列記されていたのです。A手段やB手段は日本国内で実施される構成要件なのですが、サーバー装置が米国内にありました。
この場合、構成要件をすべて満たしているので、特許発明の技術的範囲に属するとの判決がなされました。しかし、「属地主義の原則」というのがありまして、特許権の効力が当該国の領域内において認められるという原則をいいます。
簡単に言えば、サーバー装置が米国内にあったために、特許権侵害が認められませんでした。
サーバー装置が米国内にあるけれども、「域外適用」されるのか？？特許権侵害が認められるのかな？？と気になっていました・・・。
日本でも、構成要件の一部を海外に置くことで、「属地主義の原則」をうまく利用することで、権利侵害から逃れられるのはよくないとの声が出ていました。
米国では、類似の件として、２００４年のブラックベリー事件が有名です。この事件の場合は、ユーザーの携帯端末が米国内にあり、この携帯端末と通信をするサーバー装置がありましたが、このサーバー装置はカナダにありました。
似たようなケースですね。この事件では、特許発明の「使用」が行われているとのことで、特許権侵害と判断されています。
なかなか日本では、ブラックベリー事件のような事件の判決がなかったので、どう判断されるのか気になっていました・・・（２回目）。
日本の判決では、特許発明に係るシステムが「生産」されているか争われていたところが異なります。「使用」と「生産」で結論がわかれたのかは検討の余地がありますが・・・。
それ以上に、判決文の下記の記載が気になりました。
“ユーザ間において、同じ動画を共有して、コメントを利用しコミュニケーションを図ることができるコメント配信システムを提供することであり、この目的に照らせば、動画の送信（構成要件 １Ｃ及び１Ｈ）並びにコメントの受信及びコメント付与時間を含むコメント情報の送信（構成要件１Ｂ、１Ｃ及び１Ｈ）を行う「サーバ」は、 この目的を実現する構成として重要な役割を担うものというべきである。”
課題に照らしてみて、課題解決の重要な役割を果たす構成が外国にあったのは大きかったと思います。日本の実務では、課題を重視しますから、これは権利化前であっても権利化後であっても変わらないことだと思います。
課題解決の重要な役割を果たす構成が日本国内にあり、他の構成の一部が外国にあった場合には、結果が変わってたのではないかなんて邪推しています。
まとめ
最近復習した判決について書かせていただきました。域外適用については、日本での判断はどうなるのだろうと注目していました。米国では、ブラックベリー事件が有名です。邪推した部分を補うような判決が出ないか期待して待ちたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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