IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作『引用の要件」[リッキー]

3連休いかがでしたでしょうか。



今回は、引用について書きたいと思います。仕事柄、引用の要件を満たすかとアドバイスを求められることがあります。または、引用の要件満たせたいと思いますが・・・と注文をつけることもあります。注文を付けることが多いかもしれません。

 

引用の要件

 

引用の要件は、文化庁のホームページに記載があります。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

 

他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。

(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。

(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。

(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

 

 

はてなブログは、引用する時のためにダブルコーテーションマークのアイコンを用意しています。

 

必然性

 

引用するにはまず、引用する必然性が求められます。必然性とは何かといえば、なんで引用するのかということですね。つまり、引用する目的です。具体的には、報道、批評、研究、その他の目的が挙げられます。

 

その他の目的とは何かというのが気になりますが、学校の授業や業界団体の講義で、生徒・学生・受講者に、具体的なイメージを与えるために、建物や製品等を『紹介』することも含まれます。

企画



他にも、引用する著作物の量も関係してきます。例えば、ある本の半分以上の文章を複製して、報道、批評、研究等をするときです。本当に、半分以上も引用する必要あるのですかね?と、クエスチョンマークが浮かんできませんかね?こんな時は、要注意です。必然性はないかもしれません。

 

また、冷蔵庫の技術的な説明会で、いろいろな企業の冷蔵庫の写真をパワーポイントに貼りまくって、そのスライドが20スライド以上あるとしましょう(個人的に、今、新しい冷蔵庫が欲しいなと思っています)。

 

確かに、現在流通している冷蔵庫、または、過去からの冷蔵庫の変遷がよくわかるかもしれません。しかし、20スライド分も必要なのかという点です。スライドを作成した人にとっては、必要だと思ってスライドを作成していると思いますから、必然性の要件を満たすと思いがちだと思います。

 

ただし、アドバイスする立場としては、主観的でなく、客観的に判断をして頂きたいなと思います。必然性の要件を満たせないかもと指摘したくなります。

 

また、いろいろな規格のマークがあると思いますが、これをスライドに引用する資料を見かけます。

 

デザインが洗練されているので、アクセント代わりに使っているケースがあるのですが、これも、アドバイスする立場からは必然性の要件を満たせないので、使わないようにアドバイスしています。

 

明瞭区分性

 

鍵括弧を付ける等、自分の著作物と引用部分とが区別されることを、明瞭区分性(明瞭識別性)と略していうことがあります。

 

文章のときは鍵括弧を付けることが一般的です。画像のときは引用する画像の周りを枠で囲う等して自分の著作物とは異なることを示すことができます。

 

画像の引用が多いのはプレゼンテーション用のスライドを作成する時と思いますが、画像の周りを枠で囲うと多くの場合は、ダサくなるように思います。そうすると、枠で囲いたくないなというのが人情です。

 

アドバイスする立場としては、枠で囲ってくださいとアドバイスしてしまうのですが、内心、枠で囲うとダサくなるからやりたくないですよねと同情してしまいます。

 

ただし、ルールを厳守することが必要です。ダサくなるからというなら、そもそも引用するのを断念して頂くか、ご自身でそれに相当するものを作成して頂くしかないですね。

 

主従関係

自作する人



引用するときには、自分の作成する著作物が主で、引用する著作物が従でなくてはなりません。例えば、100頁の文章で、60頁が他人の著作物からの引用で、残りの40頁が自分で作成した著作物だとしましょう。

 

文章量の関係から、自分で作成した著作物が主とは言い難いのではないでしょうか。

 

もちろん、自分の意見・主張が重要なのだから、量に関わらず、自分の著作物が主だと主張することもできるでしょう。

 

しかし、この主従関係では、質だけでなく、量も考慮されます。このため、アドバイスする立場としては、量でも自分の著作物が主だと主張できるように、自己の主張を厚くしましょうとアドバイスします。

 

出所の明示

 

書籍からの引用であれば、書籍のタイトル、著者、引用する頁の記載、発行所等の記載が必要です。

 

インターネットからの引用であれば、URLの記載が必要でしょう。

 

必然性、明瞭区分性、主従関係と比較して、出所の明示をご存知の方が多い様に思います。しかし、そのような中でも、出所の明示をしていない資料を見かけます。

 

日本人は仕組みを作るよりもコンテンツを作ることがうまいとも思います。コンテンツを作成する人には欠かせない知識だと思います。義務教育の中で、掛け算の九九のように覚えていただきたいものです。

 

 

まとめ

 

引用の要件をご説明しました。必然性、明瞭区分性、主従関係、出所の明示について、自分の経験から、簡単に事例を紹介しつつ、どのようなアドバイスをしたかも記載しました。ご自身で、他人の著作物を引用して新たな著作物を作成する場合に、ご参考になる箇所があれば幸いです。