IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権「ポケモンカードから考える知財 ~フリマサイトに掲載する画像~」【MI】

こんにちは。

今日からGWですね。。。とはいえ、このご時世、おうちで過ごされる方も多いと思います。そんな中で前回は、巣ごもり需要で人気が急上昇しているポケモンカードゲームを取っ掛かりにして記事を書きました。

discussiong1.hatenablog.com

今回も引き続きポケモンカードゲームをネタに、ちょっと気になる知財についてのお話を書いていきたいと思います。まさに「かゆいところに手が届く」お話になっていますので、是非お付き合いください!

 

 

フリマサイトに掲載する画像はどうすればいい?

ポケモンカードゲームは、カードを使ってゲーム(対戦)するのが楽しいのはもちろん、トレーディングカードということで取引(売買)が活発に行われています。特に、最近はメルカリ等のフリマサイトを使って、お店を介さずに一般の人同士で取引することが多くなっています。フリマサイトで取引する際は、売りたいカードを明示するためにカードの画像(写真等)をアップします。

ここで気になるのが「カードは著作物(※)。その画像をアップしてもいいの?」ということ。早速見ていきましょう。

※カードについては、少なくとも「絵柄自体」または「絵柄やテキスト等の配置含めたカード全体」として著作物性が認められます。

 

(1)自分でカードを写真に撮ってアップするのはOK?

カードを写真に撮る(画像データにする)のは著作物の「複製」に当たります。それをアップすることは著作物の「複製」を「公衆送信」することになります。

え!?じゃあアウトなの??

ご安心を。著作権法では所定の著作物について、売買のための商品紹介画像の掲載(複製&公衆送信)をOKとしています。 

美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(第47条の2)

美術又は写真の著作物は,それらの譲渡等の申出のために行う商品紹介用画像の掲載(複製及び自動公衆送信)を,政令(施行令第7条の3)で定める著作権者の利益を不当に害しないための措置(画像を一定以下の大きさ・画素にすることなど)を講じている場合に限って行うことができる。

出典:著作物が自由に使える場合 | 文化庁 (bunka.go.jp)(下線部は筆者修正)

要するに、必要以上に精細なデータでない限り、フリマサイトに自分で撮った売りたいカードの写真をアップするのはOKです。

 

(2)公式サイトからの画像の引用(転載)はOK?

これについては「出典さえ書いておけば『引用』だからOK」という考えを見かけますが、かなり危険な考えです。というのは、「引用」として他人の著作物を利用するためには、「引用する必要」がないといけないからです。

著作権法32条1項

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

例えば、誰かの絵について批評は、その絵(画像)が「引用」されていないと分かりにくいですよね。こういう場合は「引用する必要」があると言えます。

これに対して、フリマサイトで自分のカードを売る場合は、手元にそのカードがあるわけです。それなら自分で写真を撮ればいいわけで、公式サイトの画像を「引用する必要」があるとは言えません。

ただ、発売前の商品の予約を受ける場合など、手元に商品がない場合には、先行してアップされている公式サイトの画像を引用することは認められると思います。

 

(3)他人の写真を転載するのはOK?

これはそもそもマナー的に止めておきたいところですが、著作権法的にもアウトです。商品紹介用の写真については、画一的な構図である場合などに著作物性が認められないこともありますが、商品をキレイに見せるための工夫(背景、照明、撮影角度など)に著作物性が認められます。他人の写真(著作物)の「複製」&「公衆送信」となればアウトですし、公式画像等がある場合には、あえてその他人の写真を「引用する必要」も認められません。

 

番外編:工業製品の場合は?

ここまでは、取引の対象が「カード(著作物)」である場合について見てきました。では、取引の対象が「工業製品(家電など)」の場合はどうでしょうか?

原則としては、工業製品は著作物ではないとされています。そのため「(1)自分で商品を写真に撮ってアップする」のはOKです。

しかし、「(2)公式サイトからの画像の引用(転載)」や「(3)他人の写真の転載」については、工業製品そのものを離れて「公式画像」や「他人の写真」について著作物性が認められますので、同様の注意が必要になります。

 

おわりに

ポケモンカードに限らず、巣ごもり需要でトレーディングカード全体が盛り上がっているようです。私自身も、息子の要望で、フリマサイトを使って「要らないレアカードを売って、デッキ組むのに必要なカードを買う」ことをするようになりました。そんな中で気になったネタでした。

 ・フリマサイトの商品紹介用画像は自分の商品を撮影した画像を使おう!

 ・フリマサイトで公式サイトの画像を使うのは「引用」にならない!

 ・他人の写真の転載は止めよう!

参考になれば幸いです。

今回は商標ネタまでいけませんでした。。。次回の宿題にしたいと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!