IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

「著作」メタバースと著作権[リッキー]

日向でゴロゴロしていると暑すぎず寒すぎず気持ちのいい季節になりましたね。

 

弁理士会では、特許、意匠、商標等、法律ごとに委員会があり、研究等が行われています。その研究成果等は、弁理士会の会員専用ページで閲覧できるのですが、「これ、すごいな」と思うものがいくつもあるのですが、その一部を紹介したいと思います。

 

メタバースにおける著作権法上の論点です。

仮想空間を移動!

よくこんな論点に気づいたなと感心せずにはいられませんでした。

 

メタバースとは?

 

メタバース (: metaverse) は、コンピュータの中に構築された、3次元の仮想空間やそのサービスを指す[1]。日本にあっては主にバーチャル空間の一種で、企業および2021年以降に参入した商業空間をそう呼んでいる。将来インターネット環境が到達するであろう概念で、利用者はオンライン上に構築された3次元コンピュータグラフィックスの仮想空間に世界中から思い思いのアバターと呼ばれる自分の分身で参加し、相互に意思疎通しながら買い物や商品の制作・販売といった経済活動を行なったり、そこをもう1つの「現実」として新たな生活を送ったりすることが想定されている

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B9

 

アバターを操作してアバターに仮想空間を移動してもらう感じでしょうか。オンラインゲームで、複数のプレイヤーが集まって共通の敵を倒しに冒険に出る感じでしょうか。

 

VRのゴーグルをつけて、聴覚や視覚を仮想空間に没入させるのとはちょっと違うのですね。ここら辺の仕分けも難しいですね。

 

他にも、仮想空間でアートギャラリーを開催できるのですね。月額6000円ぐらいからできるようです。

 

論点1:仮想空間にはどの国の法律が適用されるのか?

 

著作権者は、美術の著作物や未公開の写真の著作物について原作品により公に展示する権利を有しています。

 

仮想空間にあるアートギャラリーに美術の著作物や未公開の写真の著作物の展示する場合ですが、そもそも著作権(ここでは展示権)が発生するのでしょうか?

 

つまり、仮想空間にはどの国の法律が適用されるのでしょうか。考えてみるとなるほどと思いました。

 

それは、仮想空間のデータが記憶されているサーバのある国の法律だよって考える方もあるかもしれません。他の法律でそのような規定があればいいのですが、そのような法律はあるのか不明ですね。

 

論点2:美術の著作物や未公開の写真の著作物のデータは原作品なのか?

 

また、日本のような著作権法が制定されている国の著作権が適用されると仮定して、美術の著作物や未公開の写真の著作物の現物を仮想空間にあるアートギャラリーに置くことはできませんから、必ずデータ化されます。

 

データ=原作品?データ≠原作品?意見が分かれてきそうですね。

 

論点3:仮想空間にあるアートギャラリーは公なのか?

 

また、日本のような著作権法が制定されている国の著作権が適用されると仮定して、仮想空間にあるアートギャラリーは公に該当するのでしょうか?

 

現実的には、仮想空間にあるアートギャラリーはどこかの国においてあるサーバのデータですから、公なのか悩みますよね。例えば、自宅にサーバを持っている人がいて、そのサーバは公かと言われると、公でなく、私物ですよね。ある企業の設置したサーバでしたら、それもまた公とは言い難い・・・。

 

ある美術の著作物や未公開の写真の著作物を、著作権者でない者が勝手に仮想空間にあるアートギャラリーに展示したとしても、著作権者が展示権を行使できるか疑問です。

 

この場合は、ある美術の著作物や未公開の写真の著作物のデータをサーバに送信する行為ですから、著作権者は公衆送信権を行使するのかもしれません。

 

論点4:仮想空間にあるアートギャラリーは屋外なのか?

 

展示権に関わる話がでてくると必ず関連してくるのは、著作権法の第45条です。著作権者展示権を有しているのですが、その美術の著作物の原作品を所有する所有者等は、それでもその美術の著作物を公に展示できるよう、著作権者の展示権について権利制限をしています。ただし、屋外に恒常的に設置する場合は権利制限されません。

 

ここでも、場所が問題になります。仮想空間にあるアートギャラリーは屋外なのか?と。

 

日本のような著作権法が仮想空間にあるアートギャラリーにも適用されて、美術の著作物のデータが原作品と同一視できて、仮想空間にあるアートギャラリーが公だとします。そのうえで、仮想空間にあるアートギャラリーは屋外なのか?

 

アートギャラリーと聞くと屋内をどうしても連想してしまいます・・・。こういうバイアスは、論点を探し出す場合には邪魔なのでしょうね。私が論点探しに向いていない理由がよくわかります。

 

さて、仮想空間にあるアートギャラリーは屋外で、権利制限規定に頼らず、著作権者が仮想空間にあるアートギャラリーに美術の著作物を恒常的に設置したとします。

 

そうすると、著作権法の第45条に関連の深い第46条では、美術の著作物のデータを基に彫刻を増製し公衆に提供したり、専ら販売目的で複製してその複製物を販売したりする等を除けば、多様な利用が可能になります。

 

メタバースでは、単純に複製するだけであれば複製権の問題にならないのかな?なんて、現行の法律の規定では思えてきますね。

 

現行の法律制定時にはメタバースのことなんて知る余地も無かったのですから、これに適切に対応できている法律になっていろ!ってのには無理がありますね。どのように改正されるか楽しみでもあります。

 

まとめ

 

仮想空間にあるアートギャラリーに美術の著作物や未公開の写真の著作物の展示する場合の論点を見てみました。

 

論点1:仮想空間にはどの国の法律が適用されるのか?

論点2:美術の著作物や未公開の写真の著作物のデータは原作品なのか?

論点3:仮想空間にあるアートギャラリーは公なのか?

論点4:仮想空間にあるアートギャラリーは屋外なのか?

 

法律が現実空間の実体に追い付くには、これらの論点を整理して、法律改正が必要になりそうです。今後、どのような法律に改正されていくのか楽しみですね。おそらくパブリックコメントも募集されるでしょうから今からのその時に備えて、ご自身の意見を整理されても面白いかと思います。

 

 

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リッキー