今回もメタバース空間内で起こっている困った問題について書かせていただきたいと思います。
他にもパブリックコメントで挙げられている課題を見てみましょう。
課題2
実在する商品のブランドのブランド名がメタバース内で無断使用されたり、それらのブランドのマークを付けたデジタルアイテムが無断で販売されたりするなど、現実空間の商品の標識が仮想空間上で、無断で使用される事案が生じているそうです。
「メタバーキンズ」というのを聞いたことはないでしょうか。米国では、エルメスのバッグ「バーキン」をデジタル上で模した「メタバーキンズ」をデジタル空間上で販売した者が、商標権侵害等を理由として提訴されています。
商標はご存知の通りですが、標章+指定商品役務から構成されますので、標章(文字、図形、文字図形の組み合わせ等)だけでは登録できません。指定商品、指定役務を選ぶ必要があります。
指定商品、指定役務には区分があり、区分ごとに登録料が発生します。なので、指定商品、指定役務の区分を増やすと、お金がかかるのです。
仮想空間の商品に対しては、第9類:コンピュータプログラム等を指定商品として追加する対策が挙げられています。これでデジタル空間上での販売を差し止め等できます。
しかしながら、不使用取消審判という制度がありまして、3年間、商標を指定商品、指定役務について使用していないと、商標登録が取り消されてしまうという制度があります。
なので、第9類:コンピュータプログラム等を指定商品として商標登録を受けたとしても、現実空間で衣類を販売しているが、コンピュータプログラムに関して何も販売していないと、せっかくの商標登録が取り消されてしまいます。
また、出願し直せばいいじゃないか、という前向きな意見もあると思いますが、面倒かもしれませんね。
こんなときこそ、「防護標章登録出願制度」の出番ではないかと思います。
「防護標章登録出願制度」は、著名な登録商標を他人が非類似商品、非類似役務について使用したときに、商品役務の出所の混同が生じるおそれがある場合、登録商標と同一の標章に限り、他人の使用を排除できます。
これであれば、そもそも使用を前提としていませんので、不使用取消審判の問題を解消できると思います。
問題としては、同一の登録商標にしか効力が及ばないことです。第9類:コンピュータプログラム等に限っては、類似の商標にまで効力を及ぼしてもいいのであれば、この問題は解決するかもしれません。
「防護標章登録出願制度」は、あまりメジャーな制度ではなく、6の国と地域でしか存在しないようです。
うまく法整備ができたら、日本で、著名な外国企業が「防護標章登録出願制度」を利用し、裁判制度を活用するかもしれません。
課題3
また、デジタルツインをはじめ、現実空間を3Dスキャンして仮想空間化する等のユースケースが広がっていて、他者の知的財産権を侵害とならないか問題視されています。
デジタルツインについては、図もあり、下記の説明がわかりやすかったなと思います。
【図解】デジタルツインとは?やさしく解説|ビジネスブログ|ソフトバンク (softbank.jp)
著作物に関しては、屋外のデジタルツインでしたら、権利制限規定(著作権法46条)により、美術の著作物、建築の著作物に対して利用許諾を得ずに利用ができます。美術の著作物については、別途条件がありますので、ご注意ください。
例えば、屋内のデジタルツインでしたら、権利制限規定(著作権法30条の2)により、不随対象著作物について利用許諾を得ずに利用ができます。ただ、デフォルメ等されていると、権利制限規定の対象外になるのではないかとの指摘があります。
また、商標に関しては、屋外に出ている看板でブランド名等が出ているので、屋外のデジタルツインだと、商標を仮想空間に取り込んでしまいます。ですが、商標的使用にあたらないとのことで商標権侵害を問われることはなさそうです。
さらに、意匠はどうでしょうか。令和2年の法改正により、空間デザインが意匠権で保護されることになりました。屋内のデジタルツインでは、小売店の内装やカフェの内装も同一類似の範囲に入ってしまうと、意匠権侵害も考えられそうですが、物品に仮想空間はないですからね・・・。考える必要はなさそうです。
まとめ
今回もメタバースに関するパブリックコメントを基に書かせていただきました。
「メタバーキンズ」については見聞きした方が多そうな気がします。また、デジタルツインって言葉を今回初めて知りました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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