前回に引き続き、昨年度の判決の復習についてです。その中に、おお!これは!と引っかかる判決(知財高裁 令和3年(行ケ)100047)がありましたので、この判決について書かせていただきたいと思います。
ざっくり、商標の不使用取消審判の控訴審で、商標が不使用であったか否かが争われました。
不使用取消審判と言えば、弁理士試験受験者には必須のテーマですね。商標法50条に規定があるわけですが、そのあとの51条、53条、53条の2の審判も合格のためには押さえておかねばなりませんからね。
ということで、今でも、おお!これは!と引っかかります。
不使用取消審判では、
- 3年以上か
- 本件商標と使用商標とが社会通念上同一か
- 商標法50条1項の「使用」に当たるか
が、争点になりやすいです。
ご紹介する判決
ご紹介する判決では、主に、(3)商標法50条1項の「使用」に当たるか、が争点になっています。
社会通念上同一か否かについては、構成文字が共通し、称呼も同一として、社会通念上同一と判断されています。
この「使用」は、誰が使用していても、「使用」には該当しません。商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかが使用している事実が必要です。
審決では、本件商標を桂ヶ丘開発が使用していましたが、商標権者、専用使用権者ではなく、使用を許諾した証明書を提出できないから通常使用権者でもないと認定されました。
ところが判決では、桂ヶ丘開発が米袋の包装に貼付けていたステッカーの作成について商標権者が関与し、商標権者はその販売についても承知していた。これらの事実を総合的に勘案して、商標権者は桂ヶ丘開発に使用を黙示的に許諾していたと認定しました。
つまり、桂ヶ丘開発は通常使用権者と認定されました。
これにより、商標法50条1項の「使用」に該当することになり、審決が取り消されました。
社会通念上同一か
ご紹介した判決では、(2)本件商標と使用商標とが社会通念上同一か、ではあまりもめていませんが、過去にはこのような判決もありました(知財高裁 平成30年(行ケ)10037)。
本件商標は、「関西国際学友会」の文字を横書きにしてなり、指定役務を第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」などとする商標です。ウェブサイトでは、「旧関西国際学友会日本語学校」を使用商標としていました。
「旧関西国際学友会日本語学校」について、「日本語学校」が一般的名称で出所表示機能を有しないから、「関西国際学友会」と「日本語学校」とは一体不可分の関係にあると理解されなければならない語であるとは言い難い。需要者は「関西国際学友会」の部分が出所表示機能を果たしていると認識すると判断しています。
この判決では、本件商標と使用商標は社会通念上同一と認められています。
取消審判の状況
上記の統計は、不使用取消審判だけでなく、不正使用取消審判も含みます。
2021年は、請求件数1128件、請求成立889件、請求不成立143件、取下・放棄92件でした。
棒グラフでは細かい数値を把握するのは難しいですが、2021年の数値をご参考ください。詳細は、こちらから調べられます。
特許行政年次報告書2022年版 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
取消を免れるのは、1割程度ということでしょう。これらは珍しいケースいえそうです。
まとめ
不使用取消審判に関する判決を2つ紹介しました。また、最近の取消審判の統計についても紹介しました。取りたい商標権があるが、先行商標がある場合に、請求成立件数から見ると不使用取消審判は有効かもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
★★IP RIPは、Yuroocleさんに参加させて頂いております★★