IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

商標『20年前の商標法の問題』[リッキー]

弁理士登録をしてようやく10年を超えました。

 

弁理士登録したての頃は、弁理士ナビでエゴ検索すると、弁理士登録「0年●か月」のように表示されていました。

 

案件依頼のためや出来心でお知り合いの先生やお世話になっている先生を検索するのですが、弁理士登録「1●年□か月」のような表示ばかりで、「はぁ~」ってため息をついていたのを覚えています。

 

さて、少しですが経験を積むことができてくると、過去はどうだったのか気になってきます。(当然個人差はあるとは思いますが・・・)

 

ということで、20年前の商標法はどんな問題を抱えていたのかなと気になったので、最近は、こんな議事録を読んでいます。

 

20年前

 

第1回商標制度小委員会 議事録 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 

全文書きおこしをしているわけではないと思いますが、それでも膨大な量の議事録になっています。

 

どのような問題点が挙げられているのかを整理してみたいと思います。

 

  • 標章登録されているマークがその目的に沿った識別性を発揮していない場面においても、商標権侵害と訴えられる懸念がある
  • コンセント制度の導入の是非
  • 防護標章制度の使い勝手の悪さ
  • 小売業の商標をマークとして登録することの是非
  • 地域ブランド保護のための登録要件の緩和の是非
  • 速やかな権利付与

 

 

 

(1)標章登録されているマークがその目的に沿った識別性を発揮していない場面においても、商標権侵害と訴えられる懸念がある

 

商標権には、(1)自他商品識別機、(2)品質保証機能、(3)宣伝広告機能、の3つの機能があります。これらの機能を1つでも侵害すると、商標権侵害となります。

 

これら3つの機能のいずれをも発揮しない登録商標の使用は、商標権侵害を問われません。つまり、「商標的使用」でないということです。

 

20年前はここが確立していなかったというわけではありません。

 

実務では「商標的使用」ということで整理されていますが、条文からは、「商標的使用」が商標権侵害を構成しないということが読めないということです。

 

ここに関しては、20年経った現在でも特に改正がなされていないので、もっと優先すべき課題があったということですね。

 

この議論の際には、商標法が何を保護すべきなのか?根本的なところに当然ですが議論が及んでいます。

 

マーク=ブランドとされていた時代から、時代が進み、マーク<ブランドの関係になり、商標法では保護できていないものが出てきており、「ブランドイメージ」や「コミュニケーション機能」を保護対象とすべきではないかと議論がされています。

 

商標法の枠組み自体に変わりはありませんが、ブランドイメージをどう保護するかは、各企業で知恵が練られているところだと思います。

 

近年流行している知財ミックスで、技術ブランドが取り上げられていますが、技術ブランドもその知恵の一つかなと思います。

 

(2)コンセント制度の導入の是非

 

これは、今年、導入が決まりましたね。いつから議論されていたのかというと、この議事録前のことまでは把握できていませんが、少なくとも20年越しでの立法となるのですね。

 

関係者には感慨深いものがありそうです。

 

 

(3)防護標章制度の使い勝手の悪さ

 

防護標章制度は、いまのところ、廃止もされていなければ、廃止への急進的な意見もなさそうに思います。

 

弁理士試験のネタとしては鉄板なので、弁理士試験のために存在するということはないでしょうが、今後も維持されるのかなと思います。

 

 

(4)小売業の商標をマークとして登録することの是非

 

これは、平成18年の商標法改正で修正がなされていますね。

 

今では当たり前になってしまったので、なんで登録できなかったのか?と疑問に思うのは当然ですが、気にせずともやりすごすことはできてしまいます。

 

ですが、簡単に復習しておきましょう。

 

平成18年商標法改正前は、商品との具体的関連性が無いと商標権で保護されることはありませんでした。つまり、サービスを商標権で保護するという考え方がなかったのです。とはいっても諸外国にはあって、日本にはなかったというだけですが。

 

具体的には、接客サービスをする店員の制帽・制服・名札に社標を付し、その制服等を着用してサービスを提供することはできても、商標権で保護されることはなかったのです。

 

どこそこのデパートは接客がよいとか、あのスーパーは接客がよいとかあっても、消費者の記憶にはあの店員さんの接客がよかった程度にしか記憶に残らず、あのデパートで買ったものは間違いないのような信用が社標に蓄積しなかったのかもしれません。

 

仮に、あのデパートで買ったものは間違いないのような信用が社標に蓄積したとしても、商標権での保護対象ではなかったのです。

 

いまから考えると、よくそんな世界でいきていたなと思います。

 

私自身、家電を買うときも、だいたいほしい家電のスペックを決めておいて、価格ドットコムなどで調べて買います。

 

最近ですと、電子レンジを新調したのですが、家電量販店では買わずに、インターネットを介して購入しました。

 

ほんと僅差の金額で、候補がずらりと並びます。

 

大体の決め手は、銀行振り込み、代引きでなく、クレジットカード決済できることが第1条件になります。クレジットカードで修行しているので。

 

次に来るのが、過去に購入したことのあるインターネット上のお店かどうかです。

 

口コミを見ていれば、どのお店もかならずといっていいほど★一つみたいな評価が付くものだと思いますが、そういう口コミに流されていては、インターネット上のお店から家電を買えなくなってしまいます。

 

最初こそ勇気はいりますが、問題なく家電が送られてきて、決済のトラブルもなく、安心して使うことができたという経験があると同じお店を選んでしまいます。それが数百円の差であれば、迷うことなく。

 

もの消費から、コト消費への転換点だったのかもしれませんね。

 

あと、取扱商品の数だけ、区分を指定して、出願手数料や登録料を支払わなければならなく、さらには維持費用までも。これはたまったものではなかったでしょう。

 

ちなみに、35類を指定することで保護を得ることができます。

 

(5)地域ブランド保護のための登録要件の緩和の是非

 

これも、商標法改正で追加がなされていますね。地域団体商標のことだと思われます。

 

地域団体商標制度は、2005年の商標法改正で導入されました。この議論がなされてから割とはやく2,3年で導入されたようですね。

 

これも簡単に復習すると、普通名称からなる標章は商標登録を受けることができません。これには普通名称+普通名称からなる標章も同じです。

 

ですから、地域の名称+商品・役務の普通名称からなる標章ついて、法改正前は普通名称+普通名称からなる標章であるとして、登録を受けることができなかったのですが、法改正後は、所定の要件を満たせば、普通名称からなる標章として拒絶されることはなくなりました。

 

長くなるといけないので、また別の機会に書けたらなと思います。

 

(6)速やかな権利付与

 

これはいつの時代も特許庁の課題のようですね。

 

審査期間を短縮していただくのはありがたいのですが、品質の維持・向上も、毎度のことですがお願いしたいなと思います。

 

まとめ

 

20年前の商標法の問題について書かせていただきました。20年も経つと、それらの問題に対して何らかの対策が進むものですね。もちろん、このまま運用に任せて、法改正しなくてもいいかと判断されたものもあるでしょう。

 

産業構造審議会の議事録は読みごたえがあるので、その文量に圧倒されてしまいそうですが、このブログを手掛かりに、全体像を掴んだ上で読み始めると、さらっと読めるかもしれません。そんな一助になれたらなと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

リッキー

 

リッキー

 

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