IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作『著作権契約書作成のミカタ』[リッキー]

こんにちは。関東が一番先に梅雨入りし、11日に九州も梅雨入りしたいみたいですね。13~15日あたりには中国・四国~東海地方が一斉に梅雨入りしそうなようです。

紫陽花(いらすとや)



著作権等に関する契約は口頭による契約が多いようで、トラブルも絶えないようです。そこで、文化庁が素晴らしいシステムを公開してくれているので、その紹介をしたいと思います。詳しくはこちらへ

https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/index.php

 

文化庁 著作権契約書作成支援システム

出典:文化庁 著作権契約書作成支援システム(https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/index.php



 

何といっても、インターフェースがとてもいいと思います。実際に使ってみましたが、入力欄に例示が示されていて、どんなことを入力すればいいのか、迷いなく契約書のひな形を作成することができる点にあると思います。

 

講演、上演会、原稿執筆等、契約の場面に合わせて、適切な契約書雛形が作成されるようになっています。例えば、イラスト作成の依頼を受けた場面に合わせて、著作権契約書の雛形を作成してみました。

著作権契約書 作成例

よくあるのは、例えば、イラストの作成を依頼して、「作成者は、作成したイラストに関するすべての著作権を依頼者に譲渡する。」のような一文を入れて、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利についても、譲渡がなされるという誤解です。

 

「すべての著作権」と契約書に書いたのだから、当然、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利について譲渡がされると考えるのが素直な感じがします。

 

しかし、著作権法では、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利について譲渡する時には、これらの権利を譲渡することを明示しなければならないこととしています。

 

ですから、単純に「すべての著作権」と契約書に書いただけではだめなのです。

 

また、依頼者としては、例えば、翻訳の予定があるのであれば、翻訳権の譲渡について契約書に明記するのを忘れてはいけません。また、作成者(著作権者)としては、本当に譲渡していいのか熟考する必要があります。

 

また、著作者人格権の同一性保持権に関して、忘れがちなことがあります。それは、イラストなどの改変をするに当たり、著作者人格権を行使しないとの契約を結ぶことです。

 

依頼者としては、そのイラストの使用を想定している範囲で、サイズを変えたり、色調を変えたりする場合があることがあらかじめはっきりしているときには、サイズを変えたり、色調を変えたりすることについて著作者人格権を行使しないとの契約を作成者と結んでおくべきです。同一性保持権侵害で訴えられる可能性があります。

 

また、作成者としては、作成したイラストについてこの部分は変えられたくないとかこだわりの部分があるかと思います。依頼者の利用態様に照らし、許容できる範囲で著作者人格権を行使しないとの契約を結ぶようにするとよいでしょう。ただし、許容できない改変等についてはこのような契約を結ぶべきではありません。

 

契約書作成支援システムでは、これらの部分をフォローするように契約書の雛形を作成してくれます。しかし、雛形ですので、これで万能ということはありません。そのままでは、だいぶ薄い契約書になるので、不足分に関してはご自身で追加して頂くことが必要です。

 

翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利や著作者人格権の不行使についても、相手方との交渉でいろいろと条件が追加されると思います。より詳細な契約の中身については弁理士等の専門家に相談するとよいでしょう。

 

文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン

 

5月の下旬からパブリックコメントが募集されています。

https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/public_comment/93710701.html

 

コロナ渦で外出制限がされたこともあり、実演家等の方々は特に大変だったかと思います。そこに、あまり契約を書面で結ぶという慣習が少なかったのか、さらにご苦労があったようです。そのため、当ガイドライン案が示されています。

 

ここでも著作権に関する契約書の雛形が示されていますので参考になると思います。また、注釈に契約時に気を付けるポイントなどもコメントされていますので当ガイドライン案が大変参考になるかと思います。

 

さらなる情報源

 

こちらでコンテンツに関する多くの情報収集ができるものと思いますので、ご参考にしていただければと思います。

 

コンテンツ東京2022

https://www.content-tokyo.jp/?utm_source=lst&utm_medium=cpc&utm_campaign=&gclid=Cj0KCQjw-pCVBhCFARIsAGMxhAfUtUwsImSq545xnfff16HD9fZP3t1BJkhQYfDkyQhvDdQ9vUq3TAcaAg9iEALw_wcB

 

まとめ

 

文化庁著作権契約書作成支援システムと分化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインをメインに紹介しました。どちらも著作権法27条、28条に関する譲渡や著作者人格権の不行使等、契約実務で問題となりやすい部分を手当てした契約雛形を示しています。実務家の方々には、大変参考になると思いますので、ご活用頂きたいなと思います。

 

 

特許&意匠「実は恐ろしい新規性喪失 ~SNSやクラウドファンディングでの先行公開~」【MI】

こんにちは、MIです。

最近、個人や中小企業の方からの出願依頼が続きました。コロナ禍も長引く中、本業とは別の事業や本業の知見を生かした新しい事業の立ち上げを検討されている方が増えていると感じます。

そんな中で、今日は「新規性の喪失」について考えてみたいと思います。いきなり仰々しい用語が出てきましたが、要は「SNSクラウドファンディングで先行公開した場合のリスク」について知っていただきたいということです。お付き合いよろしくお願いいたします。(個人や中小企業の方向けにザックリと分かりやすくお話ししようと思います。)

 

 

先行公開による「新規性の喪失」

最低限のハードルとしての「新規性」

まず、特許や意匠(以下、特許等といいます。)の登録のためには、最低限越えるべきハードルとして「新規性」が必要です。要するに、登録の対象となる「発明」や「デザイン」が新しくないといけないということです。「既に世の中にあるものに対して、国が特定の者に独占権をあげてはマズいよね」ということです。

増えている特許等の出願前の公開(先行公開)

最近の、特に個人や中小企業の方の出願案件では、打ち合わせの際に「既に、SNSクラウドファンディングで公開したよ」という方が非常に多いです。そもそも、その反応が良かったから慌てて出願の相談に来たという感じです。確かに、出願には少なくないお金が掛かりますので、「世間の反応が良くなければ、出願しない」という判断はむしろ正しい気すらします。しかし、それ(先行公開)により出願が拒絶されるリスクが生じます

先行公開による「新規性の喪失」

具体的には、出願前に自分がSNSクラウドファンディングでした先行公開の内容によって、出願した発明やデザインに「新規性」がなくなってしまい、登録ができなくなってしまいます。これについて、出願後にはどうすることもできません。以下でお伝えする救済を受けるためにも、出願前の公開の有無をしっかり把握して、弁理士の先生につたえてください!

 

救済措置としての「新規性の喪失の例外」規定

「出願前に公開しちゃったら特許等は取れないの?!」というと、そうではなく、救済措置として「新規性の喪失の例外」規定があります。自らの行為または意に反する公開については、出願前1年以内の公開に限り、「出願時に例外規定の適用を受ける旨を願書に記載」して、「出願から30日以内に証明書面を提出」すれば、救済が受けられます。

 

「新規性の喪失の例外」規定があっても残るリスク

「救済措置があるんだ。一安心。」というとそうでもなく、やはりある程度のリスクが残ってしまうと思っています。以下に挙げてみます。

リスク1:公開行為が漏れる

私の場合、例えば、以下のような表を作って、ネット上での公開行為を全て洗い出してもらいます。(もうすぐ梅雨時、ということでテルテル坊主の画像にしてみました。)

それでも、漏れるときは漏れてしまいます。漏れてしまった公開行為(「新規性喪失の例外」規定の適用を受けなかった公開行為)については、当然救済を受けられないので、特許等の出願が拒絶される根拠になってしまいます。

特に、SNS(インスタやTwitter)でたくさんの画像をアップしていると、全てを漏れなく拾い上げるのはなかなかの労力が必要になります(画像が数百枚になることも、、、)。

リスク2:やぶ蛇

「新規性喪失の例外」規定の適用を受けると、その旨が公報に記載されます。そのため、特許等が登録になった後、その特許等を潰したい人は「ある公開行為があったなら、他にもあるんじゃないか?!」と、救済対象になっていない公開行為(上記「リスク1」で言う「漏れてしまった公開行為」)を探すことがあります。何も書いていなければそこまで探さないけど、、、という時があり、やぶ蛇になります。

リスク3:費用が嵩む

これはリスクとはちょっと違うかもしれませんが、上記「リスク1」のところでも言ったように、SNSでの公開は多数回に亘ることが多く、そのため書類の作成にも時間が掛かります。また、特に動画だと、どこで何を言っているのかを確認するために時間が取られるので、費用の請求も高額にならざるを得なくなってしまいます

 

まとめ

さて、こうやって考えてみると、やはりベストは「公開前に出願を!」ということになるんですが、資金に余裕のない個人や中小企業の方は「反応の良くない(需要がない)モノについてまで出願はできない!」というのも本音だと思います。そうなると、上手く救済措置(「新規性喪失の例外」規定)を使っていくのも必要になると思います。

また、救済を受けるべき公開行為の洗い出しには、出願される方と弁理士とのコミュニケーションが重要になります。私としては、こういったリスクについて広く知っていただいた上で、早めに弁理士さんに相談していただき、どういう対応がベターなのかを一緒に考えられるようになるといいかなと思います。

本日もお読みいただきありがとうございました!

 

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弁理士「緊急出願案件」[らるご~]

◆緊急出願案件とは

緊急出願案件を特許事務所に依頼する場合として、例えば、以下のような場合があります。

・近日、学会発表があるが、その研究内容に関して未出願であった。

・近日、商品発表があるが、商品に含まれる発明に関して未出願であった。

つまり、緊急出願案件は、学会(商品)発表前に出願を完了するために、短い期間の中で記載内容の質を維持しつつも迅速に対応しなければならない案件なのです。

        

◆緊急出願案件は、ある日突然やってくる

上記した性質上、緊急出願案件は、ある日突然やってきます。これまでに私は何度も緊急出願案件を担当してきましたが、毎度緊急出願案件がやってくると、そこからはヒリついた日々が始まります。出願までの残り日数は、比較的余裕の有る案件から絶望的に短い案件まで色々とありますが、直近で担当した案件では、発明の内容に関する打ち合わせから指定された出願日までの日数が10日間(土日含む)でした(通常は打ち合わせから出願日まで1~2ヶ月程度)。この案件、打ち合わせ終了時点では未だ発明が固まっていなかったものの先行して明細書の執筆を開始し、後日に発明の内容が固まった案件でした。

 

◆緊急出願案件の良いところ?

緊急出願案件の良いところ?は、依頼者さん(発明者さんや知財担当者さん)と弁理士が指定の出願日に間に合わせるために、密に協力して仕事を進められるところです。1つの目標に向かってお互いが必死に仕事を進めるため、通常案件よりも達成感はマシマシです。また、ここだけの話、通常案件よりも短い期間で出願まで進むので、依頼から料金を請求するまでの期間が短いのも良いところです(出来高制の給料に即反映されるため)。特許事務所によっては、緊急出願案件の場合、通常案件の料金に加えて追加料金を請求するところもあるそうです。

 

◆まとめ

以上「緊急出願案件」でした。この業界に入って間もない頃、先輩弁理士緊急出願案件が来ても平然とこなしているのを見て、自分もいつかそうなれるように頑張ろうと思ったのが数年前。数年後、現在の自分は、その時の先輩弁理士と同じくらいの経験年数になったにも関わらず、緊急出願案件がやってくると、「今回は期日に間に合わないかもしれない…」と毎度頭を抱えています。もしかしたら、あのときの先輩弁理士も、心の中ではそう思っていても顔に出さなかっただけかもしれません。今回も本ブログをお読みいただき、ありがとうございました。

 

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著作権「研究者が注意したい著作権」【マータ】

みなさま、こんにちは。マータと申します。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plainマータ(博士/弁理士) (@b8L18UnY7nPd5NC) | Twitter

 

研究をお仕事にしている方は、ご自身の研究内容について論文や総説などを執筆することがあるかと思います。また、それらがジャーナルに掲載された後で、その論文内で用いた画像、表、グラフ、イラストなどを他の媒体で2次的に利用したい場面もあるかと思います。

 

そのような時に、ついつい「自分が作った図やイラストだから、他でも自由に使っても大丈夫だろう」と考えてしまいそうですが、少し注意が必要です。

 

というのも、多くのジャーナルでは、著作権についてはジャーナル側に帰属することを定めているからです。例えば、日本脊椎脊髄病学会が刊行している「Journal of Spine Research」の投稿規定には、下記のように書かれています。

 

『Journal of Spine Research』投稿規程より引用

http://jsr-journal.jp/files/jsr_guide.pdf

 

上記によると、著者は自分の論文の図等を、特定の目的(教育・研究・学会活動)に限って許諾なく複製できるが、その際は元論文の出典を明示しなければならないと書かれています。論文が掲載され、著作権がジャーナルに帰属した後は、例え自分がオリジナルで作成・編集した図であっても、別の場所で使う時は出典の明示が必要なのですね。また、上記の投稿規定には、商品活動・宣伝目的の複写には、編集委員会等の承認が必要とも書かれています。

 

他にも例を挙げると、日本薬学会のYAKUGAKU ZASSHIの投稿規定には下記のように書かれています。

『YAKUGAKU ZASSHI』の投稿規定より引用

https://yakushi.pharm.or.jp/j_regulations.pdf

 

上記の記載によると、著者は、論文が適切に参照及び帰属されている限り、学会の許可なしに図及び表を転載できると書かれています。

 

あと一つ例をあげると、日本生化学会 の邦文誌「生化学」のガイドラインにも、著作者自身による著作物の再利用については、「出典を明記する」必要があることが書かれています。

『生化学』の投稿規定より引用

https://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2020/02/862e97ca12d7e64450a61959185b35fc.pdf

 

<まとめ>

以上、今回は研究者(論文の執筆者)が注意したい著作権について記事にしました。

ジャーナルに掲載される論文については、著作権がジャーナル側に譲渡される場合が多く、著者であっても再利用する場合出典等を明記する必要があるのですね。一方で、今回は記事にしませんでしたが、最近はオープンアクセスジャーナルというオンライン上で無料で読めるタイプの雑誌も増えてきており、それらの多くは著作権を著者に帰属させているようです。なので、本記事のケースとはちょっと違いますね。これについては、機会があれば記事にしてみたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!!

 

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著作『ノンタンの絵本と著作権』[リッキー]

GWが終わりましたね。GWいかがでしたでしょうか。

 

私は、旅行に出かけることもなく子供たちと毎日戯れていました。子供たちもあまり大きくないので、今しかこんな時はないなと満喫しています。そして、毎日のように絵本の読み聞かせをしますが、ノンタンの絵本を読むことも多いです。昔、読んでもらったなぁと思う本を今は読み聞かせする立場です。

 

絵本

 

さて、比較的新しめのノンタンの絵本では、本のカバーにこんな記載がある絵本があります。比較的新しめとはいうものの、私が子供時代に読み聞きしていない絵本ですけれども。

 

この作品は、生前キヨノサチコさんが紙芝居用に描かれていた原稿を、ご遺族の協力を得て、一部修正し、絵本にしたものです。

 

この作品は、2003年に出版された『ノンタン・タータンあそび図鑑』の中の「ノンタンたいそう1・2・3!はい!」のページを、ご遺族の了解を得て再構成し、新しく絵本にしたものです。

 

 

どうしてこのような記載があるのでしょうか。真実とは異なるかもしれませんが、著作権法の条文から読み解いて、推測したいと思います。

 

著作権法には、著作者が存しなくなった後の人格的利益の保護が定められています。どういうことかというと、著作者がお亡くなりになった後も著作者が生存しているときと同様に著作者人格権を侵害する行為をしてはならないというものです。

 

著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権が含まれます。簡単に言えば、公表権は未公開の著作物を公開するか否かを著作者が決められるという権利、氏名表示権は著作物に著作者の名前を掲載するか掲載しないか及び掲載する場合に実名にするかペンネームにするか等決められる権利、同一性保持権は著作物を勝手に改変されない権利です。そして、著作者人格権は著作者に一身専属しており、著作者が亡くなると消滅します。

 

このため、著作者がお亡くなり著作者人格権が消滅した後も、著作者を保護するためにこのような条文があるのです。そう、好き勝手にノンタンの話を書き換えられないようするためです。

 

好き勝手にノンタンの話を書き換えたらどうなるのでしょうか。書き換える行為は改変に当たりますので、同一性保持権と関連してきます。もし、この書き換え行為が著作者の意を害するような改変だとした場合には、遺族が改変行為を差止たり、改変行為により名誉を失墜させるようなことをしていれば名誉回復の措置請求を行うことができます。

 

ここからは想像になりますが、出版社は、遺族の協力や了承を得て、絵本にしやすいように改変をしたのだと思います。著者の事情をよく知る遺族の協力や了承を得ていれば、作者の意を害するような改変になることもないとも思います。

 

それにしても、ノンタンの絵本は大人になってから読んでも楽しいですね。絵本を読みだすと、テレビに気を取られていた子供が絵本のところに駆け寄ってきます。子供にとってもテレビよりも楽しいものなのでしょう。

 

まとめ

 

ノンタンの絵本にあった記載を基に、著作者がお亡くなりになった後の人格的利益の保護について記載してみました。亡くなった著作者の著作物を勝手に改変して、著作者の意を害するような行為を慎みましょうという内容です。著作権法はこんなところも保護しているんだ、と気づきになってくれたら嬉しいですし、より著作権法が身近になってくれたらさらに嬉しいです。

 

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リッキー

 

商標「指定商品等を記載する時の注意点」【MI】

こんにちは。MIです。

ついにGWが始まりました!11連休の方もいるとのことで羨ましいです。私は、しっかり間の平日は出勤です。。。

さて、今回は、先日弁理士会から「商標審査便覧の改訂に伴う実務上の注意点について」の案内があったときに考えてみたことを書いてみたいと思います。商標についてそこまで得意ではないので初心者向けですが、逆に基本的なことを知ってもらうor振り返ることができるかなと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いします!

 

 

「指定商品・役務」って?

商標登録出願をするときには、「商標(マーク)」と「指定商品・役務(以下、まとめて指定商品等といいます。)」を記載します。要は、「そのマークを何に使うのか」を書くということです。

商標権は「マーク+指定商品等」で権利範囲が決まるため、「指定商品等」の指定は非常に重要です。出願に関しては、極端な話、マークが全く同じでも指定商品等が全く違えば登録される可能性があります。

 

指定商品等の「区分」って?

「指定商品等」は、明確に、かつ定められた「区分」に従って書かないといけません。「区分」は、政令で決まっており、下記のページ等で調べることができます。

 

類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2022版対応〕 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)

(「商標]タブから「商品・役務名検索」)

上記の特許庁URL内の「各類に属する商品及び役務の概要」は、各区分に属する商品等の大まかな枠を知るのに役立ちます。

info11.pdf (jpo.go.jp)

また、「Toreru Media」さんが、表形式で見やすい「商標の区分一覧表(分類別)」を公開してくれています。

わかりやすい!商標の区分一覧【2022年最新版】 | Toreru Media

 

今回の注意点のポイント

今回の注意点の基になる改訂は、去年(令和3年3月)に行われたものです。その中でも「指定商品又は指定役務の審査に関する運用について」がポイントになると思います。

46_01.pdf (jpo.go.jp)

特に上記資料の「5.」項のところで、要するに「これからは、区分を考慮して指定商品等の材質や用途等について特定する」ということです。

上記資料の例で言えば、区分を「第6類(卑金属及びその製品)」として「郵便受け」を指定した場合、それは「金属製郵便受け」と特定(限定して解釈)するということです。

 

「今まで」と「これから」の違い

今まで(令和3年3月以前)であれば、「第6類 郵便受け」と書いた場合、以下の拒絶理由が出されていました。

  • 「何製」か不明確(商標法6条1項)
  • 金属製以外のものは当該区分に属しない(例えば、石製のものは第19類)(同条2項)

それに対しては、以下のような対応がされてきました。

  • 商品を「金属製郵便受け」に補正
  • 材質による適切な区分&商品を追加や分割(「第19類 石製郵便受け」等)

そして、これから(現在)は、「区分を考慮して指定商品等の材質や用途等について特定する」結果、上段の対応が不要になる一方、下段の対応ができなくなります。

 

よく考えると恐いかも、、、?!

ぶっちゃけ、材質や用途によって「区分」が違うなんてことを知らかった(又は気付かなかった)場合、「今まで」は拒絶理由によって気付くことができました。その上で、「金属製」のみで良ければ「金属製郵便受け」と補正するし、「石製」も欲しければ「第19類 石製郵便受け」を追加すれば良かったわけです。これからはそれができません。

また、上記の「郵便受け」の例の場合、「金属製(第6類)」、「石製(第19類)」、「金属製又は石製のものを除く(第20類)」の類似群コード(特許庁が指定商品等の類否を判断するために付けているコード)が一緒(19B35)なため、特許庁での審査における後願排除効という意味では、限定解釈されてもある程度の効果はあると思います。しかし、侵害訴訟時には、取引の実情等を踏まえて「金属製(第6類)」の商標権で「石製(第19類)」の商品を排除できない可能性もあります。

出願時に、適切な区分、当該区分に含まれる材質&用途の範囲、他区分の指定の要否をしっかり検討することが必要です。特に「○○製」とか「○○用」という記述があったら要注意です。他の材質や用途についても権利化が必要かどうか検討しましょう。

 

疑問点

特許庁の資料の例(郵便受け)はわかりやすいのでいいんですが、どの区分に属するか微妙なものの場合はどうなるのでしょうか?上記の運用が適用されて「区分+商品等の記載」で出願人が材質や用途等を特定したと解釈された結果、他区分の追加補正や分割ができないケースが出てくるのでしょうか?複数の区分に跨がる商品のセット物とかはどうなるのでしょうか?そのような場合は上記の運用は適用せず、従来通りの対応を許容してくれるのでしょうか?

いろいろ分からないことについては、今後情報収集&勉強していきたいと思います。

 

おわりに

最後まとめきれずに申し訳ありません。私としては、指定商品等について考え直すキッカケになったので非常にありがたかったです。

今回(とはいえ1年以上前、、、)の改訂については、これから自社で商標出願をしようと考えるような方にとっては、若干厳しめの方向の改訂かなとも思います。商標権取得を広めていきたい者としては、あまり厳格に適用しないで欲しいなと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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弁理士「文章に表れる書き手の個性」[らるご~]

特許事務所勤務の弁理士らるご~です。

私事ですが、私の子供が通う保育園では、子供を迎えに行くと、その日1日のクラスの様子を記した報告メモが玄関に掲示されています。その報告メモは日ごとに様々な保育士さんが書いて下さり、子供の迎え時にそれを読むのが日課となっております。その報告メモについてですが、最近2,3行読んだ時点ですぐに、書いた保育士さんか誰か分かるようになってきました。小説等でも同じかと思いますが、文章からにじみ出る書き手の個性のようなものを感じ取っているのだと思います。

ということで、今回のテーマは、「文章に表れる書き手の個性」についてです。

 

◆書き手次第で読みやすい(にくい)明細書

特許事務所に勤務していらっしゃる弁理士の方の場合、何らかのきっかけで同じ事務所内の他弁理士の特許明細書を読む機会があると思います。そのときに、「A(B)弁理士の明細書はいつも読みやすい(読みにくい)」というような感覚を持ったことはないでしょうか。こんなことをお聞きするのは、私にとっては、発明の内容に関わりなく、どの案件であっても毎度読みやすいA弁理士が実在しているからです(毎度読みにくいB弁理士も然り)。知財部の方にとっても、いつも明細書が読みやすい(にくい)弁理士さんを認識されているのではないでしょうか。このように、発明の内容を論理的に説明する明細書であっても、書き手(弁理士)によって読みやすさの違いがあり、その違いは、その書き手(弁理士)の個性(≒思考の癖のようなもの)に因るところが大きいと思っています。ここでいう個性というのは、要素分解すれば、言葉選び、論理構造、単語の統一感、図の活用の巧拙などに分けられると思いますが、今回これらの点の深掘りはしません。

              書類とペンのイラスト

 

◆この記事で言いたかったこと

読みやすい=特許明細書として優れている、とは限りませんが、私自身の方針としては、発明を十分に説明することは大前提として、可読性にも十分に注意を払って文章を作成しています(しているつもりです)。しかし、注意を払ったところで自分が作成した文章を客観的に判断するのは難しいことから、いつも怯えながら仕事しているのが現状です。つまり、この記事で言いたかったのは、「文章に滲み出る書き手の個性が読みやすさの違いを生むとして、それならばそもそも読みやすい文章の定義って何だろう?」というボヤキです。「面白いマンガ」や「売れる芸人さん」の定義と同じで、きっと一義的に定義できるものではなさそうですよね。文章の読み手によっても、読みやすいor読みにくいの感覚は違いそうですし。懇切丁寧に説明しようとすれば自ずと文章は長くなって読み手に負担を強いることになり兼ねず、かといって、間欠手短に説明すれば今度は読み手が内容についていけなくなる可能性が高くなる…そんなトレードオフな悩みを再認識させられる機会が近頃多かったため、今回このようなボヤキの記事を挙げた次第です。

 

◆まとめ

以上、「文章に表れる書き手の個性」でした。個性というと生得的なニュアンスを多分に含むニュアンスがあるため、適切な表現ではなかったかもしれませんね。

最後に、読みやすい文章とは、逆説的ではありますが、読みやすい文章って何だろうと試行錯誤して書かれた文章のことなのかもしれません。旨いことを言おうと思いましたが、あまり旨くないですね。こんな文章をここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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