IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

商標「オンライン出願サービスを使ってみた ~使う際のアドバイス~」【MI】

こんにちは。MIです。

お盆休みいかがお過ごしでしたでしょうか?私も家族と楽しく過ごしましたが、お休み最終盤に体調を崩してしまい、復帰が少し遅れてしまいました。。。まだ暑い日が続くようなので、皆さんもご自愛ください。

さて、今回は、以前より興味があった「Toreru」さんや「Cotobox」さんといった「商標のオンライン出願サービス(以下、商標出願サービス)」を使う機会がありましたので、それに関する記事を書いてみたいと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

 

 

商標出願サービスを使った感想

 商標出願サービスを使ってみた感想は「ある程度知識があれば、とても簡単&安価に商標出願ができる!」ということです。クレジットカード決済もできるので、初めての取引や単発の出願でも便利です。商標出願サービスは既存の弁理士の仕事を奪うという意見もあり、確かに、その一面はあるかと思いますが、もうこれはしょうがないと思いました。むしろ、出願商標や指定商品・役務がある程度決まっているなら、こちらから利用をお勧めしてもいいくらいです。

 商標出願が全て商標出願サービスで済むようになってしまうと恐いですが、、、一定数、出願商標や指定商品・役務の選択が難しいものや、中間対応が心配なお客さんは既存の事務所経由の出願を継続するんじゃないかなと思っています。

 

商標出願の動向と商標出願サービスの利用

 先日公開された「特許行政年次報告書 2022 年版」によれば、2021年の商標の出願件数・登録件数は2020年比で増加しています。

特許行政年次報告書2022年版 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 このような動向の背景には、ECサイトが模倣品の排除等を目的として商標権の取得を推奨していることもあるかと思います。

(例えば、Amazonでは、「Amazonブランド登録」の資格要件として「ブランドには、文字または図形の有効な商標(登録保留中または登録済み)が必要」とした上で、「Amazonブランド登録の対象となるには、ブランドに登録を希望する国ごとの有効な登録商標が必要」としています。)

 既存の商品&既存の商標でAmazonに出店し、上記「ブランド登録」を受けるために商標登録を目指す場合、商標出願サービスの利用を検討してもいいかもしれません。

 

出願商標を決める際のポイント

 出願する商標(マーク)は、使用する商標をそのまま出願するのが望ましいです。例えば、商標制度には「標準文字」での登録制度があり、ロゴよりも標準文字の方が権利範囲が広いという話もありますが、必ずしもそうではありません。むしろ、下記の図をご覧いただき、商標権の専用権の範囲は商標および指定商品・役務が同一の範囲に限られることを理解していただきたいと思います。

商標権の効力 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 

指定商品・役務は事業範囲をカバーして!

 商標権は「商標(マーク)+指定商品・役務」で権利範囲が決まるため、「指定商品・役務」の指定は非常に重要です。極端な話、マークが全く同じでも指定商品・役務が全く違えば商標権の効力が及ばず、また、後願商標が登録される可能性があります。

初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 指定商品・役務の指定ミスは、事業内容の変更や拡大・縮小があった場合や、担当者が変わった場合(前任者の誤解があった場合)によく起こります。特許庁の「類似商品・役務審査基準」やJ-Platpatの「商品・役務名検索」を参考に、しっかり検討してください。

特許庁の「類似商品・役務審査基準」

類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2021版対応〕 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

J-Platpatの「商品・役務名検索」

商品・役務名検索|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)

 また、裏技(というほどでもないですが)としては、同じような業務をしている競合他社の商標登録内容を参考にしてみることです。事務所経由の出願ではまず競合について聞かれると思いますが、自身で指定商品・役務を検討する際は、知っておくといいと思います。

 

おわりに

 今回、商標出願サービスを使う機会があったのは、既存のお客さんからの相談からでした。結果、既存のお客さんは商標出願は当該サービスを利用することになったんですが、それを通じていろいろ考えることがありました。願わくば、そういったサービスを通じて商標出願の裾野が広がるとともに、事務所弁理士として必要なアドバイスをできるように準備していきたいと思います。

 本日もお読みいただき、ありがとうございました!

 

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特許「特許行政年次報告書(気になった部分を少しだけ)」[らるご~]

特許事務所勤務のらるご~です。お盆前に少しだけ仕事の波が到来していたのですが、粛々とこなして今週末は穏やかな気持ちで過ごしています。

さて先月末に2022年版の「特許行政年次報告書」が公表されましたね。

本日は、その中でも気になった部分について少しだけ考えたことを書いていきます。

 

1.特許出願件数の減少

      

特許出願件数が減少していることは、この業界で働く多くの方がご存知かとは思いますが、今年は昨年とほぼ同じ程度の件数に留まったようです。このまま下げ止まって、ここからは特許出願件数の上昇に期待!と言いたいところですが、人口減少中の日本では、そんな淡い期待を持たない方が良さそうですね。

 

2.特許権の現存率

      

恥ずかしながら、これまで「特許権が設定登録されてからどの程度存続されているのか(特許権の現存率)」について、あまり深く考えたことはなかったので、そんな自分にとって、このグラフは有益な情報でした。ざっくり解釈すれば、「10年間存続される特許権は約50%」「設定登録年数が長くなるほど特許権の現存率は低下する(当然)」と言ったところでしょうか。このグラフは、業界を区別せずに全特許権の存続期間に基づいて作成したグラフでしょうから、業界別で同様のグラフを作成すれば、特許権の存続期間が比較的長い業界と比較的短い業界が明らかになるんでしょうね。

3.特許出願件数と総R&D費の関係

続いて、このグラフでは、近年の特許出願件数の減少に反して、「総R&D費」は増加していることを不思議に感じました。総R&D費が増える→研究開発が盛ん→特許出願件数が増加、とはならないんですね。その原因としては、(1)研究開発の単位費用あたりに発掘される発明の数が減少している(技術の高度化?)、(2)昔より研究開発が盛んでも出願する発明は厳選している、のいずれかなのかと勝手に想像しました。

 

4.知的財産に投入される資本

  

最後に上記2つのグラフが気になりました。近年の特許出願件数は年々減少している傾向にあるにも関わらず、これらグラフによれば、知的財産に投入される資本(知的財産担当者&知的財産活動費)は年々減少してはいません(特に2017年~2018年で急激に上昇)。つまり、知財に対する企業のマインドは低下していないように思われます。特に、2017年~2018年の両グラフの数値の急激な上昇(知的財産担当者数は約25%上昇)について、この1年間には一体何かあったのでしょうか。誰か教えてください笑。

 

5.まとめ

以上、特許行政年次報告書の中で気になった部分を少しだけ考えてみました。同報告書では、今回紹介した情報の他にも沢山の情報が載っていて面白いのですが、個人的には、それら情報の各々に解説や一言コメントが併記されていると嬉しいです。しかし、そうした記載を望むのは無茶なお願いですよね…(情報の解釈の仕方は人それぞれですし)。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!

 

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「たまにはゆっくり映画鑑賞を ~ファスト映画について考える~」【マータ】

みなさま、こんにちは。マータと申します。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plain マータ(博士/弁理士) (@b8L18UnY7nPd5NC) / Twitter

 

皆さんは、ドラマはお好きですか?

最近、『石子と羽男』というドラマが話題ですね。

www.tbs.co.jp

 

本作は、有村架純さんと中村倫也さんがダブル主演を務めるリーガルドラマです。第三話のタイトルは、「著作権法違反」。「ファスト映画」がテーマです。

news.yahoo.co.jp


私は、普段ドラマは見ないのですが、今回は内容的にとても興味があったので見てみました。有村架純さんや中村倫也さんを始めとするキャストのキャラクターが非常に魅力的で、内容もとても面白かったです。

 

ファスト映画を作った被告人の主張、被害を受けた映画監督の重い言葉などなど、なかなかリアルに描かれていました。本当は、もっと本作のことを色々と語りたいのですが、書いているうちに『これはネタバレになるのでは?』という気持ちになり、書くのをやめました。線引きが難しいですよね。

 

さて、第三話のテーマであるファスト映画ですが、近年大きな問題になっていますね。

これまでに、違法なファスト映画を作成し、著作権法違反の罪で有罪が確定した男女3人に対して、およそ5億円の損害賠償を求める訴えが起こされています。

www3.nhk.or.jp

こうしたニュースが大々的に報じられることにより、ファスト映画は違法なものだという認識が浸透しつつあり、その数は昨年に比べて9%ほどに減少したそうです。しかしながら、依然180本程のファスト映画がYouTubeに投稿されているそうです。

www3.nhk.or.jp

これらのファスト映画は、違法であり許されることではないですが、根底には『世の中にあふれる膨大なコンテンツを効率よく消費したい』という現代人の願望があると思います。いまや、コンテンツは鑑賞されるものではなく、消費されるものになっているようです。 

 

かくいう私も動画の倍速視聴は普通に使いますし、コンテンツを効率的に消費したい心情はとてもよく分かります。

 

ただ、少し前に、本当に久しぶりに映画をゆっくり鑑賞した時があって、その時に忘れていた感情を思い出しました。映画を見た後の『清々しい感じ』『自分を変えようと思う感じ』『ポジティブな気持ち』『人にやさしくしようという気持ち』など、いい映画は人の心を揺さぶり、人生を豊かにしてくれるということを久しぶりに思い出しました。

 

これは、10分にまとめられた簡易版の動画では得られることのない感情だと思います。また、本作を観る前に、内容をファスト映画などで知ってしまっていたら、この感情は大きく減少していたことと思います。

 

忙しい毎日ですが、たまには無理やりにでも時間をつくって、ゆっくりと映画を鑑賞する時間を作りたいものです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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著作『引用の要件」[リッキー]

3連休いかがでしたでしょうか。



今回は、引用について書きたいと思います。仕事柄、引用の要件を満たすかとアドバイスを求められることがあります。または、引用の要件満たせたいと思いますが・・・と注文をつけることもあります。注文を付けることが多いかもしれません。

 

引用の要件

 

引用の要件は、文化庁のホームページに記載があります。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

 

他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。

(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。

(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。

(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

 

 

はてなブログは、引用する時のためにダブルコーテーションマークのアイコンを用意しています。

 

必然性

 

引用するにはまず、引用する必然性が求められます。必然性とは何かといえば、なんで引用するのかということですね。つまり、引用する目的です。具体的には、報道、批評、研究、その他の目的が挙げられます。

 

その他の目的とは何かというのが気になりますが、学校の授業や業界団体の講義で、生徒・学生・受講者に、具体的なイメージを与えるために、建物や製品等を『紹介』することも含まれます。

企画



他にも、引用する著作物の量も関係してきます。例えば、ある本の半分以上の文章を複製して、報道、批評、研究等をするときです。本当に、半分以上も引用する必要あるのですかね?と、クエスチョンマークが浮かんできませんかね?こんな時は、要注意です。必然性はないかもしれません。

 

また、冷蔵庫の技術的な説明会で、いろいろな企業の冷蔵庫の写真をパワーポイントに貼りまくって、そのスライドが20スライド以上あるとしましょう(個人的に、今、新しい冷蔵庫が欲しいなと思っています)。

 

確かに、現在流通している冷蔵庫、または、過去からの冷蔵庫の変遷がよくわかるかもしれません。しかし、20スライド分も必要なのかという点です。スライドを作成した人にとっては、必要だと思ってスライドを作成していると思いますから、必然性の要件を満たすと思いがちだと思います。

 

ただし、アドバイスする立場としては、主観的でなく、客観的に判断をして頂きたいなと思います。必然性の要件を満たせないかもと指摘したくなります。

 

また、いろいろな規格のマークがあると思いますが、これをスライドに引用する資料を見かけます。

 

デザインが洗練されているので、アクセント代わりに使っているケースがあるのですが、これも、アドバイスする立場からは必然性の要件を満たせないので、使わないようにアドバイスしています。

 

明瞭区分性

 

鍵括弧を付ける等、自分の著作物と引用部分とが区別されることを、明瞭区分性(明瞭識別性)と略していうことがあります。

 

文章のときは鍵括弧を付けることが一般的です。画像のときは引用する画像の周りを枠で囲う等して自分の著作物とは異なることを示すことができます。

 

画像の引用が多いのはプレゼンテーション用のスライドを作成する時と思いますが、画像の周りを枠で囲うと多くの場合は、ダサくなるように思います。そうすると、枠で囲いたくないなというのが人情です。

 

アドバイスする立場としては、枠で囲ってくださいとアドバイスしてしまうのですが、内心、枠で囲うとダサくなるからやりたくないですよねと同情してしまいます。

 

ただし、ルールを厳守することが必要です。ダサくなるからというなら、そもそも引用するのを断念して頂くか、ご自身でそれに相当するものを作成して頂くしかないですね。

 

主従関係

自作する人



引用するときには、自分の作成する著作物が主で、引用する著作物が従でなくてはなりません。例えば、100頁の文章で、60頁が他人の著作物からの引用で、残りの40頁が自分で作成した著作物だとしましょう。

 

文章量の関係から、自分で作成した著作物が主とは言い難いのではないでしょうか。

 

もちろん、自分の意見・主張が重要なのだから、量に関わらず、自分の著作物が主だと主張することもできるでしょう。

 

しかし、この主従関係では、質だけでなく、量も考慮されます。このため、アドバイスする立場としては、量でも自分の著作物が主だと主張できるように、自己の主張を厚くしましょうとアドバイスします。

 

出所の明示

 

書籍からの引用であれば、書籍のタイトル、著者、引用する頁の記載、発行所等の記載が必要です。

 

インターネットからの引用であれば、URLの記載が必要でしょう。

 

必然性、明瞭区分性、主従関係と比較して、出所の明示をご存知の方が多い様に思います。しかし、そのような中でも、出所の明示をしていない資料を見かけます。

 

日本人は仕組みを作るよりもコンテンツを作ることがうまいとも思います。コンテンツを作成する人には欠かせない知識だと思います。義務教育の中で、掛け算の九九のように覚えていただきたいものです。

 

 

まとめ

 

引用の要件をご説明しました。必然性、明瞭区分性、主従関係、出所の明示について、自分の経験から、簡単に事例を紹介しつつ、どのようなアドバイスをしたかも記載しました。ご自身で、他人の著作物を引用して新たな著作物を作成する場合に、ご参考になる箇所があれば幸いです。

続・SNSで新規性喪失?! 注意点まとめ【MI】

こんにちは。MIです。

連日不安定な天気でモヤモヤしますね。。。息子も外でサッカーができず悶々としています。こんな時こそ家で勉強して欲しいところですが。。。

さて今回は、前回に引き続き「新規性喪失」について書き残したことを書いていきたいと思います。リスクの再確認ということで参考になればと思います。よろしくお願いいたします。

 

↓前回の記事はコチラ

discussiong1.hatenablog.com

 

 

<注意点1>「行為」ごとの申請が必要

「特許(意匠登録)を受ける権利を有する者の行為に起因」するものとして「新規性喪失の例外規定」の適用を受けるためには、原則として行為ごとに申請(証明書への記載)が必要になります。

例えば、以下のような場合、原則として全ての公開行為の特定(場所、URL、日付等)が必要になります(これが大変!)。

  • SNSで繰り返し公開した場合(同一アカウントであってもURLが異なれば)
  • いろんな場所(一店舗だけでなく;ウェブサイト含む)で販売した場合
  • 同一商品を複数の展示会に出展した場合

一方、以下のような場合には、先の行為(赤字)について申請していれば、後の行為(青字)についての申請が不要となることもあります。

 

【パターン1】手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ、かつ、手続を行った発明の公開行為と密接に関連する公開行為によって公開された発明

⇒(例) 権利者が同一の取引先へ同一の商品を複数回納品した場合における、初回の納品によって公開された発明と、2 回目以降の納品によって公開された発明


【パターン2】手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ、かつ、権利者又は権利者が公開を依頼した者のいずれでもない者によって公開された発明

⇒(例)権利者が商品を販売したことによって公開された発明と、その商品を入手した第三者がウェブサイトにその商品を掲載したことによって公開された発明 

 

(補足)従業員(バイトさん等;特許を受ける権利を有しない者)が公開した場合は?

この場合は、事情によって対応が異なります。特許(意匠登録)を受ける権利を有する者が公開(SNS投稿等)を依頼した場合は、申請が必要になるでしょう。一方、従業員が無断で勝手に公開した場合、「意に反する公開」として申請なしで新規性喪失の例外の適用が受けられる可能性があります。

 

<注意点2>例外規定のないor適用条件が厳しい国もある

例えば、中国や欧州では、新規性喪失の例外規定の適用条件が厳しく(特定の展示会に限定される等)、実質的に適用を受けられない場合があります。

これは、対象国の法制がそうなっているので仕方がないと言えばそうなんですが、事前の説明を忘れる(各国でも日本同様の例外規定の適用が受けられるという誤解を与える)と、お客さんによっては揉めることがあるので注意したいところです。


<注意点3>本当に「発明」が公開された?

安全側から見ると、「商品の写真を出願前に公開してしまったので、とりあえず新規性喪失の例外申請をしておくか」ともなり得ます。これは「意匠」のときは当てはまるかも知れませんが、「発明」の場合はそうとも言い切れません。「意匠」は見ればすぐ分かりますが、「発明」はそうではないからです。

例えば、写真に何かの薬(錠剤)が写っていたからと言って、その成分が分かるでしょうか?

というわけで、特に「発明」については、新規性が喪失するレベルの公開かを検討することも重要です。単に製品が映り込んだレベルなのか、製品を見るだけで発明のポイントが分かるのか、機能や使い方のレクチャーが併記されていないか、検討してみましょう。前の記事でも書きましたが、申請すること自体のリスクもあります。

 

おわりに

以上、2回にわたり「新規性喪失の例外」について考えてきました。

ホントに最近この話題についてお客さんに説明する機会が増えています。立場上、安全側(申請をする)でお話をすることが多いですが、そうするとどうしても申請費用が追加になるので、いい顔をされないことも多いです。。。

個人的には、こまめにお客さんのお話を聞きに行くことで、公開前や公開予定の発明を事前に把握することも有効かなと思っています。このご時世ですが、対面の打合せをあえて増やしています。

また、今回記事を書くにあたり特許庁の資料を参考にしましたが、是非SNS関連の事例も追加して欲しいと思います。中小企業の方には「学会発表」の事例よりもSNS関連の事例の方が身近です。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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弁理士「タイムチャージを意識した働き方」[らるご~]

この記事を書いている本日7月3日は、本年度の弁理士試験の論文式筆記試験の日。受験生の方はお疲れ様でした。特許事務所勤務の弁理士らるご~です。

最近自分の働き方を顧みて、実は結構タイムチャージを意識して働いていることに気付きました。そこで今回は、この「タイムチャージを意識した働き方」について書いていきます。

 

タイムチャージとは

ご存じの方も多いと思いますが、タイムチャージとは、【自分の1時間当たりの単価】【その案件を仕上げるために費やした時間】を乗じて算出される報酬額のことです。

例えば、【自分の1時間当たりの単価】が3.5万円/時間で、【その案件を仕上げるために費やした時間】が4時間であった場合には、14万円(=3.5万円/時間×4時間)が弁理士への報酬額としてお客さんに請求されます。私が勤務している特許事務所では、(A)タイムチャージ(時間的要素)で報酬額が決定する案件と、(B)作成した書類の枚数等(量的要素)で報酬額が決定する案件と、があります。

 

(A)タイムチャージ(時間的要素)で報酬額が決定する案件の場合

(A)案件の場合、費やした時間が延びるほど、多くの報酬額をクライアントに請求できますが、いたずらに高額の請求を行えば、クライアントからの信用を落とすことになります。そこで、私の場合は、依頼された案件に本格的に取り掛かる前に、予め費やす時間を見積もることにしています(Ex:これくらいの資料量ならだいたい〇時間)。その理由は、(ある程度までは)費やした時間の長さに比例して仕事の質は向上していきますが、ある程度の時間を超えると、それ以上は自己満足の世界に入っていくと考えているからです(自論です)。つまり、事前の見積もりによって、自己満足の世界に入ることを防止するとともに、見積もり時間内に仕事を終わらせねばという使命感で仕事の効率アップを図るようにしています。ただ、いつも見積もった時間通りに仕事が終わるわけではなく、見積もりの時間より長くなってしまうこともしばしばですが。

 

(B)作成した書類の枚数等(量的要素)で報酬額が決定する案件の場合

(B)案件の場合、量的要素で報酬額が決定されますが、このときも自分の中では、タイムチャージを意識して仕事をするようにしています。具体的には、例えば、量的要素から最終的に30万円程度の報酬額となった案件の場合、その案件を15時間で仕上げていれば【自分の1時間当たりの単価】2万円/時間、10時間で仕上げていれば【自分の1時間当たりの単価】3万円/時間となります。(B)案件に対応する際には、このような時間単価を適宜意識しています。個人的な感覚としては、(A)案件と比べて(B)案件の方が、【自分の1時間当たりの単価】は低くなる傾向にあるため、仕事を仕上げた後の自己評価はその点を考慮するようにはしています。その点を考慮しておかないと「うわ…私の1時間当たりの単価、低すぎ…?」となって凹む場合があるからです。

        口を抑えてショックを受けている女性のイラスト

◆まとめ

以上、「タイムチャージを意識した働き方」でした。【自分の1時間当たりの単価】をあまり意識し過ぎると、ケチな仕事の仕方になりそうではありますが、そうした意識を持つことで、自分の時間の安売り防止や仕事効率の向上につながると考えています。と、こんなことを書いておきながら、自分の場合、上述したように「見積もりの時間より長くなってしまうこともしばしば」のため、これを機に自戒せねばですね。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

「弁理士の受験者数の減少について」【マータ】

みなさま、こんにちは。マータと申します。

f:id:discussiong1:20211012012531p:plain マータ(博士/弁理士) (@b8L18UnY7nPd5NC) / Twitter

 

最近よく、弁理士の受験者数が減った」という話を耳にします。

会派で口述練習会を開いても、「受験生よりも試験官役の先生の方が多かった」、という話もあるくらいです。

こういう話を聞くたびに、「じゃあ、他の士業ってどうなんだろう?」といつも思っていました。

そこで、今回は、弁理士を含めるいわゆる8士業について、2012年~2021年の10年程の間に受験者数がどれくらい変化したか見てみました。

 

8士業(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%AB%E6%A5%AD

いきなりですが、結果は下記の通りです。

今回調べた全ての資格試験の受験者数が十年前に比較して減少していました。
原因としては、資格によってもそれぞれだと思いますが、例えば下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?

 

●資格を取ったから一生安泰という世の中ではない。
●有資格者が飽和状態で今後仕事を得られるか不安。
●資格試験に時間や資金を費やす余裕がある人が減少した。
●共働き世帯の増加。
●今後も仕事があるか不安(AIによる代替など)
●その他、受験制度上の問題。

などなど。

 

ちなみに、日本の生産年齢人口※は、2012年(約8055万人)から2021年(約7450万人)にかけて、7.5%ほど減少しているようなので、人口減少の影響もあるのかもしれません。

※生産年齢人口
各国の国内で行われている生産活動に就いている中核の労働力となるような年齢の人口のこと。日本では15歳以上65歳未満の年齢に該当する人口を指す。

生産年齢人口 - Wikipedia

 

まとめ
今回は、ここ10年ほどの各資格試験の受験者数の変化について調べました。どの資格も受験者数が減少しており、少しさみしい結果となりました。一方で、受験者数が減るということは、合格すればそれだけレアな存在になれるということなので、さらに腕を磨くことにより市場価値・希少価値の高い人材になれるとも言えます。自分も、これからも自己研鑽を積み、より世の中に必要とされる人材になりたいと思います。

その他
今回の結果は、1年刻みで調べたわけではないので、試験によっては下げ止まっていたり、回復基調にあるものもあるかもしれません。その他、データに間違いがある場合などはご指摘頂けると大変ありがたく思います。

 

参考にしたサイト

弁理士としての働き方と、その将来性を考える │ 資格スクエア MEDIA

平成24年度弁理士試験結果 « 日本弁理士会九州会 弁理士は知的財産の専門家です!

司法書士試験の受験者数の推移を解説!減少傾向の理由は?|アガルートアカデミー

行政書士試験の合格率 - 行政書士試験について【行政書士試験!合格道場】

【最新版】税理士の人数は何人くらい?登録者数や受験者数を徹底紹介!|公認会計士・税理士・経理・財務の転職、求人ならレックスアドバイザーズ

第53回(令和3年度)社会保険労務士試験についての公開された情報から読み解くもの② | 社労士受験勉強.net

【2021年度・令和3年度】土地家屋調査士の試験内容と試験日・申し込み スケジュール|アガルートアカデミー

司法試験の受験回数と合格率の関係は?最短で合格する重要性について徹底解説!│資格スクエア MEDIA

https://jqos.jp/kokka/kaijidairishi

海事代理士試験の合格率

図表1-3-3 労働力人口・就業者数の推移|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省

統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐