商標法には伝家の宝刀があることをご存知でしょうか？
そうです。商標法４条１項７号です。弁理士試験の口述試験では、商標法４条１項７号について問われることはあっても、上記のような質問の仕方をされることはまずないでしょうけれども。
辞書でも、意味を確認しておきましょう。
家に代々伝わる大切な刀。転じて、いよいよという場合にのみ使用するもの。切り札。「―を抜く」
[補説]文化庁が発表した平成24年度「国語に関する世論調査」では、本来の言い方とされる「伝家の宝刀」を使う人が54.6パーセント、本来の言い方ではない「天下の宝刀」を使う人が31.7パーセントという結果が出ている。
伝家の宝刀（でんかのほうとう）の意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書
伝家の宝刀でよくある落ちは、大切にしすぎて、全然触れもしなかったが、ある日、鞘から刀の柄の部分を引き抜くと刃がついてなかった・・・でしょうか。
あと、「天下の宝刀」と使う人も３１．７％という結果があるようで、切り札という意味では、こちらのほうがそれをうまく言い表せているようにも思います。
以前にも紹介していますが、商標法の伝家の宝刀は、上記のような落ちはなく、活躍しています。
別の事件ですが、シーサー事件では、商標法の伝家の宝刀にも触れられています。
・その構成自体が非道徳的，卑わい，差別的，矯激若しくは 他人に不快な印象を与えるような文字又は図形でない
・他の法律によって，その使用等が禁止されている事実，そ の指定商品について使用することが社会公共の利益に反し，社会の一般的道徳観念 に反するものとすべき事情，及び特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国 際信義に反するものとすべき事情は見当たらない。
・本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあったとか，登 録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないもの とすべき具体的事情は見当たらず，かつ，本件商標の登録出願の経緯に社会的相当 性を欠くものがあり，商標法の予定する秩序に反するものとすべき事情も見当たらない。
ということで、伝家の宝刀が使われることはありませんでした。
一方、クーマ事件では・・・。
「北海道限定人気 パロディ・クーマ」
「『クーマ』『ＫＵＭＡ』のＴシャツ 赤フロントプリント プーマＰＵＭＡではありません」
「注意 プーマ・ＰＵＭＡではありません」
「『クーマ』 『ＫＵＭＡ』のＴシャツ 黒フロントプリント 注プーマ・ＰＵＭＡではありません」
「プーマ・ＰＵＭＡのロゴ似いるような。」
「『クーマ』『ＫＵＭＡ』のＴ シャツ 黒バックプリント 注意プーマＰＵＭＡではありません。」
「プーマ・ＰＵＭＡのロゴに似ているような似ていないような。」
これらの記載からフリーライドしようとし、不正の目的があったと審決されています。
また、日本観光商事社（本件商標の被承継人）は、本件商標以外にも、欧文字４つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や，他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願していたそうです。
また、他社から商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあるようです。
こういった経歴も裁判官の心証形成に大きく影響したと思います。
商標法１条に反するものであり，公正な取引秩序を乱し，商道徳に反するものというべきであると、審決に誤りはないと判断しています。
不正の目的だけならば、他の条文でも無効にできたはずなのですが、他の条文と合わせて、無効との判断をしています。
つまり、伝家の宝刀を使うまでもなかったはずですが、ダメ押し的に切り捨てた感じでしょうか。
商標法の伝家の宝刀は、活躍の場が多そうに思いました。
まとめ
商標法の伝家の宝刀について書いてみました。伝家の宝刀と言えば、切り札ですから、滅多に活躍の機会がないのかなと思いましたが、予想外に活躍していました。商標法１条の目的達成のために、これからも活躍してほしい・・・活躍しない時代が来てほしいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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