こんにちは。
以前、『一個人が商標「AINU(アイヌ)」を出願した』ことについて記事を書きました。(IP RIPの記念すべき最初の記事です!)
この出願について、2021/2/25付けで拒絶理由通知が発送されたようです。根拠条文は予想通り(!?)伝家の宝刀「4条1項7号(公序良俗違反)」!
正直適用は難しいかもと思っていましたが、、、特許庁もやりますね。
拒絶理由通知の書きぶりから、今回の拒絶のロジックを見ておきたいと思います。
(以下、引用部分についてはJ-Platpatより引用、下線部は筆者の変更部分)
先ず、以下の通り、商標「AINU」を「先住民族であるアイヌの人々」と結びつけます。
『・・・「AINU」の文字は、日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌの人々のローマ字表記と容易に認識させるものです。』
次に、所謂「アイヌ新法」(令和元年5月24日施行)を挙げて、「アイヌ文化に対する国民意識の向上」を言います。
『そして、・・・所謂「アイヌ新法」・・・において、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発並びにアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活するためのアイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策の推進が基本理念として掲げられたこともあり、我が国のアイヌ文化の振興等に対する国民意識が向上しています。』
上記を踏まえて、商標「AINU」を一個人に独占させるのは公序良俗に反すると結論付けます。
『そうすると、・・・本願商標を、・・・一私人である出願人が、自己の商標として、・・・独占的に使用することは、「アイヌ施策推進法」第1条に規定するアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図り、もって全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現の障害となるおそれがあり、我が国の社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するというのが相当です。』
こう見てみると、今回は「アイヌ新法」が制定されていたことが、4条1項7号を適用するにあたっての大きな根拠になった感じがします。割と世間が盛り上がった(登録を否定する方向で)も後押しになったでしょうか。
個人的には、今回の拒絶は妥当な気がしています。しかし、4条1項7号は濫用されるとあまり良くない気もします(「公序良俗」の判断について水掛け論になり易い)。いずれどこかで使ってみたい条文&ロジックではありますが、適切な運用を導けるよう気をつけたいと思います。