だいぶ年の瀬も
迫ってきましたね。
なんだか皆さんが
せわしなく動いて
いるように見えるのは
わたしだけでしょうか。
さて、これからは、
著作物の種類ごとに
有名な判決を覗いて
みたいと思います。
まずは、言語の著作物
からです。
いわゆる、ライブドア事件。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/627/036627_hanrei.pdf
証人尋問を傍聴した結果を
まとめた傍聴記について
著作物性が否定されました。
判決文には下記のように
規範が説示されています。
著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,当該記述が,厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でないが,記述者の何らかの個性が表現されていることが必要である。言語表現による記述等の場合,ごく短いものであったり,表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合は,記述者の個性が現われていないものとして,「創作的に表現したもの」であると解することはできない。
また,同条所定の「思想又は感情を表現した」というためには,対象として記述者の「思想又は感情」が表現されることが必要である。言語表現による記述等における表現の内容が,専ら「事実」(この場合における「事実」とは,特定の状況,態様ないし存否等を指すものであって,例えば「誰がいつどこでどのようなことを行った」,「ある物が存在する」,「ある物の態様がどのようなものである」ということを指す。)を,格別の評価,意見を入れることなく,そのまま叙述する場合は,記述者の「思想又は感情」を表現したことにならないというべきである(著作権法10条2項参照)。
創作性については、
著作権の裁判では、
多くのページが割かれて
検討されると思います。
著作権の裁判では、
そもそも著作物か?
というところが問われます。
どのようなものが
創作的に表現したもの
であるかは、
言葉で説明するのは
難しいです。
ですが、それを言葉で
表現しようとする裁判所
はすごいなと思います。
こんなことが創作的
表現でないと、抽象化
してくれています。
- ごく短いもの
- 表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合
- 表現が平凡かつありふれたものである場合
でわ、一体どのようなことが
記載されていたのでしょうか?
判決文を読んでみましょう。
「原告傍聴記1」です。
もちろん!?「2」も
存在します。
ただ、引用が長くなって
しまいますので、「1」だけで
ご容赦ください。
「2」にイレギュラーな
ことがあって、隠している
わけではないですよ!
(ア) 「『株式交換で20億円計上』ライブドア事件証人・丸山サトシ氏への検察側による主尋問」との大項目(表題)が付されている。
(イ) 以下のとおり中項目が付されている。
- 証人のパソコンのファイルについて
(中略)
(ウ) 各中項目の下に,証言内容が短く記述されている。
例えば,「● 証人のパソコンのファイルについて」との項目では,以下の記述がされている。
・ ライブドアの平成16(2004)年9月期の最初の予算である
・ 各事業部や子会社の予算案から作成されている
・ ライブドアファイナンスによる投資事業は含んでいない
・ 「売上高は132億円/営業利益は22.7億円」で,最初の予算案だからアグレッシブだった
・ 証人は,「売上高は100~110億円/営業利益は7~8億円」が妥当と感じていた
・ 前年比増収増益で,実現可能な数字だった
・ 経営陣の考えで,全事業の増収増益が求められた
・ 減収減益だと,各事業部長や子会社社長の減給や降格もありえた
・ 前年実績などから,予算案を現実的な数値に修正するのが証人の仕事であった
・ 堀江被告に予算案を報告したところ,容赦なかった
・ 堀江被告は,ライブドアファイナンスによる投資事業が含まれないことは知っていた
・ ライブドアファイナンスによる投資事業の売上は,10億円が見込まれた
・ イーバンク銀行との提携による100億円規模のファンドの設立報酬や管理報酬などが大半だった
大項目、中項目、小項目
と整理して、記述が
なされていたようです。
議事録取るときも
こんな感じですよね。
ポツのあとには、
ながくても、43文字か
44文字が書かれています。
43文字か44文字って
長いですか?
短いですか?
私には、
ごく短いもの
表現が平凡かつありふれたものである場合
に見えてしまいます。
言語の著作物は、
文字を繋げようと
思えば、いくらでも
つなげられると思います。
文字を繋げているうちに、
寿命が来るのが先だと
思います。
手短に言えば、
言語の著作物には、
無限の表現可能性
があると思います。
なので、
表現形式に制約があるため、
他の表現が想定できない場合
というのは該当しないかな
と思います。
これだけ短いと、
「思想又は感情」を
表現するのは
難しいですよね。
いやいや、
俳句ならば、17文字
短歌ならば、31文字
43文字や44文字より
短いでしょ!っと
突っ込まれそうです。
俳句、短歌は、もろに、
思想感情を表現して
いますからね。
事実の伝達を目的
とした場合に、43文字や
44文字で、思想感情
まで伝えるのは
困難を極めるのでは
ないでしょうか!?
そして,具体的には,①原告傍聴記2の証人の経歴に関する部分は,主尋問と反対尋問から抽出していること,②原告傍聴記1の「 ○クラサワコミュニケーションズとの株式交換も計上していることを口頭で説明した」,「 ■堀江被告は何も言わなかったが,分からないときは質問するので,説明を理解していたと思う」の記述及び・・・(中略)・・・の記述は,実際に証言された順序ではなく,時系列にしたがって順序を入れ替えたこと,③原告傍聴記2において固有名詞を省略したこと等を創意工夫として例示する。
しかし,原告の主張する創意工夫については,経歴部分の表現は事実の伝達にすぎず,表現の選択の幅が狭いので創作性が認められないのは前記のとおりであるし,実際の証言の順序を入れ替えたり,固有名詞を省略したことが,原告の個性の発揮と評価できるほどの選択又は配列上の工夫ということはできない。原告の主張は採用できない。
- 証言の順序の入れ替わり
- 固有名詞の省略
これらは創意工夫とは
認められないとのことです。
議事録取っているときに
順序を入れ替えてしまう
ことは起きそうですし、
固有名詞などを省略して
書くことも、よくやりそうです。
ここに、創作性があると
されると、世の中、
著作権で保護される著作物
だらけになってしまい、
権利処理に追われて、
日常生活を送るのも
ままならないと思います。
ここらへんに、創作性を
認めないほうが、暮らしやすい
と思えますね。
まとめに代えて本日の痒い所
- ごく短いもの、②表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合、③表現が平凡かつありふれたものである場合
- 証言の順序の入れ替わり、固有名詞の省略には、創意工夫は認められない
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週も知財の雑談を楽しみましょう。
今週は言語の著作物について雑談するのはいかがでしょうか?
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