前回から言語の著作物
の有名な裁判例を
見ています。
前回は、ライブドア事件。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/627/036627_hanrei.pdf
今回は、
ラストメッセージin最終号事件。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/818/013818_hanrei.pdf
出版社が雑誌を休刊・廃刊する
際に最終号に掲載した読者宛の
挨拶文の著作物性が問題となり
ました。

正確には、創作性があるか否か。
挨拶文ごとに、明暗が分かれ
ました。
どのような内容か確認して
いきましょう!
まず、規範が示されています。
ある著作が著作物と認められるためには、それが思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であり(著作権法二条一項一号)、誰が著作しても同様の表現となるようなありふれた表現のものは、創作性を欠き著作物とは認められない。
次にあてはめがなされています。
下記の内容は、休刊、廃刊となる
雑誌のあいさつ文という性格から、
ありふれた表現になるとのこと
です。
- 今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知
- 読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明
- 休刊又は廃刊となるのは残念である旨
- 当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子
- 休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明
- 同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨
この中を見ると、
休刊又は廃刊となるのは
残念である旨は、
思想又は感情を表現しています。
ただ、この残念である旨は
常識であり、創作性には
何らかの個性が現れて
いれば足りるという知識
を持っていると、なぜ、
創作性がみとめられないのか?
疑問も出てくると思いますが、
創作性においては、
ありふれた表現か
選択の幅、ということも
考慮せねばなりません。
同社の関連雑誌を引き続き
愛読してほしい旨も、
思想又は感情を表現しています。
こちらも、営業上、常識です。
他社に読者を奪われず、自社の
他の雑誌を読んでもらいたいと
思うものだと思います。
これら5つに該当する表現は、
日頃よく用いられる表現、ありふれた言い回しにとどまっているものと認められ、これらの記事に創作性を認めることはできない。
と判事されています。
もちろん、創作性が認め
られた表現もあります。
こちらの方が気になりますよね?
どのような記載か見て
みましょう。
あたたかいご声援ありがとう
昨今の日本経済の下でギアマガジンは、新しい編集コンセプトでの再出発を余儀なくされました。皆様のアンケートでも新しいコンセプトの商品雑誌というご意見をたくさんいただいております。ギアマガジンが再び店頭に並ぶことをご期待いただき、今号が最終号になります。
長い間のご愛読、ありがとうございました。
どこらへんに創作性が
見出されたのでしょうか。
「昨今の日本経済の下」
というのは、その当時を
反映する記載として、
これを選ぶことに、
思想又は感情があり
そうです。また、何らかの
個性が現れている
ともとれそうです。
「皆様のアンケートでも
新しいコンセプトの
商品雑誌というご意見を
たくさんいただいております。」
これも、事実を述べただけでは
と思いますが、これを
わざわざ差しはさんだ
ところに、何らかの
個性が現れている
とも言えそうです。
一文一文は、事実羅列に過ぎ
ないのかもれませんが、三文の
並び順に創作性が認め
られているのかもしれません。
まとめに代えて本日の痒い所
○下記の内容は、休刊、廃刊となる雑誌のあいさつ文という性格から、ありふれた表現になる。
- 今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知
- 読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明
- 休刊又は廃刊となるのは残念である旨
- 当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子
- 休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明
- 同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週も知財の雑談を楽しみましょう。
ありふれた表現について雑談するのはいかがでしょうか。

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