IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『幸福の科学事件』[リッキー]

前回まで、

二次的著作物

に関連する判例

紹介しました。

 

豆腐屋事件

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/859/033859_hanrei.pdf

 

キャンディ・キャンディ事件(上告審)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/471/062471_hanrei.pdf

 

今回は、口述権に

かかわる判例です。

 

著作権法では、

24条に規定が

あります。

 

(口述権)

第二十四条 著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する

 

 

ところで口述

ってなんでしょうか?

 

弁理士試験であれば、

口述試験というのが

あります。

 

特許・実案

意匠

商標

 

と3回の試験があります。

 

試験官がいる部屋を

つぎからつぎへと

ノックして、

 

試験を受けて行きます。

 

面接試験

 

各10分程度試験で

10個ほど質問が

用意されていて、

 

全部答えられると、

残り時間は、

試験官と雑談する

時間になります。

 

全部答えられなければ、

・・・

タイムオーバーです。

 

面接のときの質疑を

しているのが、

口述ととらえられそうです。

 

著作権法には

もちろん定義があります。

著作権法の2条です。

 

十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。

 

朗読などの行為が

口述に当たる

ということです。

 

今回ご紹介する

事件はこれです。

 

幸福の科学事件

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/940/083940_hanrei.pdf

 

宗教法人である原告が、

元職員らである被告に対し、

本件経文を読み

上げた行為(祈願)について、

口述権侵害による差止請求を

求めた事案です。

 

そもそも本件経文に

著作物性は

あるのでしょうか?

 

(3) 以上によれば,本件経文の内容は前記(1)アないしカのとおりであると認められるところ,本件経文の上記内容に照らし,本件経文には,原告代表役員の個性が表現されているものといえるのであって,その思想又は感情を言語によって創作的に表現したものであると認められる。

したがって,本件経文は,言語の著作物(著作権法10条1項1号)として著作物性を有する。

 

 

と判示されています。

 

本件経文は

言語の著作物であり、

著作物性はある

との判断です。

 

それでは、祈祷が、

口述権侵害になるか

否かですが、

 

言語の著作物を

ひとりでぶつぶつと

音読したら、

 

著作権侵害

なるのでしょうか?

 

そんなことは

聞いたことが無いと

思われるでしょう。

 

その通りです!

 

一人で音読したぐらい

では口述権侵害には

なりません。

 

音読したら、

口述権侵害に

なるのであれば、

 

黙読しかできない

ことになりますね。

 

複製権以外には、

「公に」という

文言があり、

 

制限がかけられています。

 

公とは、

 

  • 特定かつ多数
  • 不特定かつ少数
  • 不特定かつ多数

 

が含まれます。

 

除かれるのは、

  • 特定かつ少数

です。

 

では、少数とは

何人ぐらいなの

でしょうか?

 

何人とは規定されて

いません。

 

判決ではどうだった

のでしょうか?

 

被告は、ある受講者のうち

被告のもとに尋ねてきた

人に、本件経文を

読み上げました。

 

被告のもとを訪ねた

のは5,6名であり、

公衆にはあたらないと

判断されました。

 

このうちの1人は、

祈祷料をはらって

いたので、

 

金銭の支払いを理由に

公衆にあたるとの

主張を原告はしたの

ですが、

 

それは認められません

でした。

 

また、被告と被告の妻

の二人で本件経文を

読み上げたことも

ありました。

 

被告と妻の

二人で読み上げたときも

読み聞かせる人が

いませんでしたから、

公衆の要件が外れて

いました。

 

つまり、口述権の侵害はない

との判決でした。

 

この公衆の要件は

大切ですね。

 

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • 複製権以外には、「公衆」「公に」という文言があり、これらを満たさないと著作権侵害とはならない

 

  • 5,6人では、「公衆」とは判断されにくい

 

  • 金銭の支払いがあったことで、直ちに、「公衆」ということもない

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう!

今週は口述にかかわる雑談をしてみるのはいかがでしょうか?

 

 

 

 

リッキー

 

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