IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『TRIPP TRAP事件』[リッキー]

前回から、

美術の著作物について

見てきました。

 

仏壇彫刻事件

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/301/014301_hanrei.pdf

 

黒烏龍茶事件

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/167/037167_hanrei.pdf

 

今回は、TRIPP TRAP事件です。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/044/085044_hanrei.pdf

 

幼児の椅子が対象と

なりました。

 

幼児椅子



著作物性の要件は

下記の通りでした。

 

(a)思想又は感情を

(b)創作的に

(c)表現したものであって

(d) 文芸 学術 美術又は音楽の範囲に属するもの

 

いかがでしょうか?

 

著作物性はあると思いますか?

それともなさそうですか?

 

判決文には下記のような

図が添付されていて、

部材がA~Hまで割り振られて

います。

 

部材A~H



この部材ごとに検討を

していくのですね。

 

緻密だ・・・・。

 

著作物性はあると

判断されています。

 

d 以上によれば,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は,①「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点,②「部材A」が,「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において,作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されており,「創作的」な表現というべきである。

 

なるほど、

座面の高さを

調節できるように

溝が脚に掘ってあります。

 

足置き台もですね。

 

この溝に板を

嵌めて、座面や足置き台

の高さを調節する

のですね。

 

我が家にもありますが、

一度、調整してから

ほとんど調整すること

なく、

 

子どもが椅子を

使わなくなって

しまいました。

 

悲しい~

 

さて、脚が約66度の

鋭い角度を成している点

も個性が発揮されている

と判断されています。

 

この点は、一品制作の

美術品と同じく、

独立して美的鑑賞の

対象となることから、

 

著作物性があり、

美術の著作物に該当する

と認められています。

 

一方、著作物性が否定

されている事件もあります。

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/391/093391_hanrei.pdf

 

以上を踏まえ、本件について検討すると、原告製品については、特徴①から特徴③まで及び側木と脚木をそれぞれ一直線とするデザインという本件顕著な特徴があり、これにより原告製品の直線的な形態が際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象を与えるものとなっていると認められることは、前記のとおりである。しかし、本件顕著な特徴は、2本脚の間に座面板及び足置板がある点(特徴①)、側木と脚木とが略L字型の形状を構成する点(特徴②)、側木の内側に形成された溝に沿って座面板等をはめ込み固定する点(特徴③)からなるものであって、そのいずれにおいても高さの調整が可能な子供用椅子としての実用的な機能そのものを実現するために可能な複数の選択肢の中から選択された特徴である。また、これらの特徴により全体として実現されているのも椅子としての機能である。したがって、本件顕著な特徴は、原告製品の椅子としての機能から分離することが困難なものである。すなわち、本件顕著な特徴を備えた原告製品は、椅子の創作的表現として美感を起こさせるものではあっても、椅子としての実用的な機能を離れて独立の美的鑑賞の対象とすることができるような部分を有するということはできない。

 

 

こちらでは、

 

板を嵌めて、

座面や足置き台

の高さを調節する

点も、

 

脚が約66度の

鋭い角度を成している点

触れられています。

 

ただ、約66度は

略L字と型の形状

記載されています。

 

なんか、著作物性

を認めるトーンが

落ちた感じです。

 

こちらの判決では、

椅子としての実用的な

機能を離れて

 

独立の美的鑑賞の

対象とすることが

できるような部分が

ないと判断されています。

 

2つの判決から

わかることは、

 

この幼児椅子の

著作物性は認められる

こともあれば、認め

られない場合も

あるということで、

 

著作権者としては

なかなか強気には

なれませんね。

 

椅子

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • TRIPP TRAP事件は、2つの事件がある

 

  • 事件ごとに、著作物性が肯定された事件と否定された事件がある

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう。

今週は椅子の著作物性について雑談するのはいかがでしょうか?

 

リッキー

 

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