IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作 リツイート注意![YO]

Twitterを利用している人は多いかと思いますが、リツイートするときに注意が必要なことご存じでしょうか?

 

『平成30年(受)第1412号 発信者情報開示請求事件 令和2年7月21日 第三小法廷判決』によれば、本件各リツイート者は氏名表示権(著作権法第19条)を侵害し、“プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」”権利侵害をしたと判断されました。

 

で、権利を侵害したから、どうなるのでしょう。権利者が侵害者にコンタクトを取れるようにe-mailアドレスをプロバイダが権利者に開示せよとの命令が出されました。権利者はe-mailアドレスを開示されたら・・・今後どう展開するのでしょうか・・・

 

それはさておき。リツイートするのは、すべてだめなのか?と言われるとそうではありません。まず、リツイートについて、定義を調べてみましょう。

 

Twitterのヘルプセンターには、“フォロワーに公開して共有するツイートは「リツイート」と呼ばれます。リツイート機能はTwitter上で見つけたニュースや耳より情報を伝えるのに便利です。このリツイートに自分のコメントや画像/動画を追加して公開することもできます。・・・”との説明があります。

 

図で示すと下記のようになるでしょうか。

 

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リツイートの説明図

リツイートの何に問題があるのか、見てみましょう。

 

『平成30年4月25日判決言渡 平成28年(ネ)第10101号 発信者情報開示請求控訴事件』において、前提事実として、“本件リツイート行為により本件アカウント3~5のタイムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLへのインラインリンクが設定されて,同URLに係るサーバーから直接ユーザーのパソコン等の端末に画像ファイルデータが送信され、ユーザーのパソコン等に本件写真の画像が表示されるものである。・・・本件リツイート行為の結果として,・・・リンク先の画像とは縦横の大きさが異なった画像や一部がトリミングされた画像が表示されること,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものであること(縦横の大きさが異なるし、トリミングされており、控訴人の氏名も表示されていない)が認められる。”

 

リツイートの機能の中に、トリミング機能があり、流通情報2(2)の画像から控訴人の氏名が取り除かれてしまい、トリミング後の画像には控訴人の氏名が表示されていない。ここに問題があるようです。

 

つまり、リツイートにより、流通情報2(2)の画像から控訴人の氏名以外の部分が切り出され、トリミング後の画像には控訴人の氏名が表示されていない状態になった、ということですね。

 

ちなみに、トリミングとは、ウィキペディアによると、“トリミングとは、暗室やコンピュータ上での写真の画像処理において、画像の一部だけを切り出す加工を指す。”そうです。その他、ペットショップでペットの散髪をしてもらうことも、トリミングと言いますよね。

 

さて、本件の場合は、コンピュータ上での写真の画像処理の場合でしょう。図で示すと、下記のようになるでしょう。

 

(1)トリミング前

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トリミング前


 

(2)トリミング後

 

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トリミング後(1)


 

トリミングされる範囲を赤枠で示しました。これらの図では、「©2020 IP RIP 知財の雑談~」との文字(下の図で青点線で囲った部分)が、氏名表示に当たります。ところが、赤枠の中には、図の中の「©2020 IP RIP 知財の雑談~」との文字がありません。トリミング後の画像には控訴人の氏名が表示されていない状態になったというのは、この状態を言うと思われます。

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トリミング後(2)


 

このトリミングを行っているのは、Twitter社のシステムじゃないか!?と思われるかもしれませんが、その点、裁判でも争われました。裁判の結果、侵害者をリツイート者とすると判断されたのです。最高裁判決ですので、そう簡単には判決が覆ることはないでしょう。なので、リツイートするときには、特に、写真(©マーク付き)が付いているHPのリンクをリツイートしないように気を付けましょう。現時点では、間違っても裁判で争ってはいけません。勝ち目がないと思います。

 

鋭い方は、気づいたかもしれませんが、トリミングすると写真が改変されているから、同一性保持権の侵害ではないか!?と思われたかもしれません。同一性保持権の侵害も認定されています。それは、最高裁の前の知財高裁で争われています。そして、同一性保持権の侵害については、最高裁には上告されていません。