毎週火曜日を目標に記事を書こうとしていますが、
1日遅くなり申し訳ございません。
もう年末ムードになってきましたね。
お店に行けば、クリスマスムードから一転、
お正月バージョンへお店のディスプレイが
変更されているところも多いと思います。
最近読んでいた判決文の中から
ご紹介したいと思います。
平成16(ネ)1797 著作権侵害差止等請求控訴事件
*358771CC0830AA68492570FC000222C (courts.go.jp)
です。
マヨネーズで有名なキューピー株式会社が
巻き込まれてしまった事件なのですが、
キューピー株式会社の人魚やイラストが
キューピー作品類似すると訴えられてしまいました。
創作性とは何か?
二次著作とは何か?
具体例を学ぶよい例かなと思います。
ローズオニール
ローズオニールは、1874年6月25日、米国ペンシルバニア州ウ イルケス・バレ市で出生し、1896年ころから本格的にイラストレーターとして 活動を始めたが、1901年ころから、1901年作品等の背中に小さな双翼を有する、裸の中性的な幼児のイラストを創作発表していた。
キューピー作品の著者なのです。
キューピー作品はいろいろなところで発表されます。
- 雑誌「The Cosmopolitan」1903 年12月号掲載の「A Christmas Courtship」の題字部分のイラスト
- 雑誌「20th Century Home Magagine」1904年3月号掲載の「The Educated Wife」の挿絵
- 雑誌「Good Housekeeping」1904年4月号掲載の「To Arms」の題字部分のイラスト
- 雑誌「20th Century Home Magagine」1904年7月号掲載の「The Laboratory of the Kitchen」の題字部分 のイラスト
- 同誌1904年8月号掲載の「For the Woman Who Reads」の題字部分 のイラスト
- 同誌1904年9月20日号掲載の「The Jarring Note」の題字部分 のイラスト
- 雑誌「American Illustrated Magazine」1905年12月号掲載の「The Expansion of Alphonse」の題字部分 のイラスト
- 雑誌「Appleton's」1905年12月号掲載の「The Sage Hen's Samson」 の挿絵
- 雑誌「Harper's Bazar」1906年7月号掲載の 「A Night with Little Sister」の題字部分のイラスト
- 同誌1907 年12月号掲載の「THE GIFT AND THE GIVER]の挿絵
- 同誌1908年9月号掲載の「The Letter」 の題字部分のイラスト
- 同誌1908年12月号掲載の「Peter,Peter」の題字部分のイラスト
1903年・1904年作品 VS 1906~1908年作品
1903年から1908年にかけて
発表がされていますが、
1906~1908年作品は、
・乳幼児の体型
・裸
・性別がはっきりせず
・中性である
・頭頂部や両側頭部に髪の毛の突起
・前髪が垂れている
・背中に非常に小さな双翼がある
という特徴を有しています。
これらは1903年作品も有している特徴と
認められています。
1906~1908年作品は、
・頭頂部に突起があり
・前髪が垂れ
・両耳あたりに髪の毛がある
・全体的に髪の毛がある
・下腹部がふっくらしている
・欧米の乳幼児のよう
という特徴も有しています。
これらは1904年作品も有している特徴と
認められています。
1906~1908年作品と、
1903年作品、1904年作品との
相違点は、
姿勢や表情(微笑んでいるか否かなど)
です。
しかしながら、これらには創作性が認められていません。
これって驚きではないでしょうか?
著作権専門の方からすれば、当然なのでしょうけれども。
姿勢が違うイラストは全く別物に感じますし、
表情が異なれば、表現する思想感情も別物?
って思ってしまった・・・。
という強烈なインパクトが過去、私にはありまして、
どこかで書きたいなと思っていました。
1903年・1904年作品 VS 1909年作品
一方、1909年作品は、創作性を認められています。
・1903年作品は目が上目遣いであるのに対し、1909年作品は左に寄り目
・1903年作品は口が点で描かれているのに対し、1909年作品は口が下向きの円弧状で描かれ、微笑んでいる
・1903年作品は祈りの姿勢であるのに対し、1909年作品は物を運ぶ姿勢である
・1903年作品は欧米人の乳幼児を思わせるが、1909年作品はより空想性がある
との認定をしたうえで、創作性を認められました。
姿勢や表情が違うだけでは創作性は認められない
と書いたばかりなのに噓つき!と言われてしまうかも
しれませんが、問題は全体です。
全体として、1903年作品は、顔の造作、表情や姿勢全体の印象から静かな、あるいは暗い雰囲気が醸し出されているのに対して、1909年作品、殊に原告指摘に係る別紙著作物目録1の(2)に描かれた幼児像は、活発な茶目っ気のある雰囲気が醸し出されている。
と認定されています。
被告は、個々の相違点を、複製の範囲内と
主張しましたが、裁判所はこれを認めません
でした。
全体で見たときに、表現されている思想、
感情が異なるからでしょう。
茶目っ気のある雰囲気というのは、
日本キューピークラブ公式ホームページ
にあるイラストにも表れていますね。
1909年作品 VS 1910~1912年作品
1910年作品、1912年作品という
のも登場します。
1909年作品に対して、創作性があると
原告は主張するのですが、創作性を否定
されてしまいます。
1909年作品と1910年作品との違いは、
・短めのふっくらとした胴体と下肢
1909年作品と1912年作品との違いは、
・短めのふっくらした胴体
・ほぼ直立した姿勢
・斜めに伸ばした両腕
・5本の指をぱっと広げた両掌
でした。
原告は特に、
「キューピーポーズ」が特徴的で、
創作性があると主張しています。
しかし、幼児像がとる姿勢から大きく出る
ものではなかったようです。
また、繰り返し使用される中で周知となり、
他の人形との識別力を得たようですので、
そのような識別力が認識されるに至っても、
創作性の有無とは関係ないようです。
やはり、表現される思想感情が変わらなければ、
創作性は認められません。
また、先の作品と、共通点が多い場合にも、
新たな創作とは認められにくく、二次著作物と
認められやすいように思います。
被告イラスト及び被告人形とキューピー作品との類似性
1903~1905年作品に基づく著作権は、
すでに保護期間を超え、パブリックドメイン
になっていました。
問題となるのは、1909年作品に基づく
二次的著作物の著作権です。
二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分についてのみ生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じな いと解するのが相当である(最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決・民集51 巻6号2714頁)。
被告のイラストには、1909年作品の
創作的部分が現れておらず、
被告人形と1909年作品は共通点があるが、
ほとんどが1903年に作品に現れており、
1909年作品の創作的部分が現れていない
との認定でした。
結果として、控訴審は棄却されました。
まとめに代えて本日の痒い所
- マヨネーズで有名なキューピー株式会社が訴訟に巻き込まれていた
- イラストにおいて姿勢や表情を変えただけでは創作性はないが、全体として雰囲気が異なる場合には創作性が認められ得る
- 二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分についてのみ生じる
編集後記
イラストの姿勢や表情について
見てきましたが、人間の姿勢や表情
はどうなのでしょうか?
例えば、考える人のポーズ。
これに著作権があると困りますよね。
小学生のころ、ものまねをしていた
記憶があります(笑)
考える人は、オーギュスト・ロダン
の作品です。
1902年の制作だそうです。
日常生活で取るような姿勢、表情に
著作権があるとしたならば、生活に
支障をきたします。
悩んだときは、法目的に立ち返ると
いいと思います。
日常生活で取るような姿勢、表情に
創作性がみとめられることは稀でしょう。
みんながやっていることですから、
創作性がそもそもないことがほとんど
なはずです。
また、思想感情を表現したかどうかも
関わります。
表情無く、無意識に、取ったポーズに
思想感情は表現されていると言い難いです。
また、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に
属するとも言い難いはずです。
今年も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
来年も、ご愛読宜しくお願い致します。
今年もあと少し、知財の雑談を楽しみましょう。
また、一家だんらんのネタとして、著作権の雑談はいかがでしょうか?
どんなポーズなら創作性があるのか?なんて考えても楽しいかもしれません。
★★IP RIPは、Yuroocleさんに参加させて頂いております★★