IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権の雑談『応用美術』[リッキー]

 

意匠権、商標権の権利行使を

する際には、不正競争防止法

そして、著作権の活用も

検討されることが多いですよね。

 

意匠権、商標権、不正競争行為、

著作権の守備範囲が違うので、

どれか一つで侵害品を排除できれば、

権利者らにとって目的を果たせる

からですね。

 

また、守備範囲が違っても、

きれいにすみわけができている

わけではなく、

 

一部、守備範囲が重複する

と考えられる場合があります。

 

その一つが、応用美術です。

 

応用美術とは純粋美術に対する言葉ではあるが、定まった定義はない。一般には、美術を実用品に応用したものとか、美術上の技法や感覚を実用品に応用したものとか、それ自体実用的機能を有する美的な創作物と言われている。

 

 

 

著作権法 第3版」 中山信弘著 有斐閣 197ページ

 

①美術工芸品、装身具等実用品事態であるもの

②家具に施された彫刻等実用品と結合されたもの

③文鎮のひな型等量産される実用品のひな型として用いられることを目的としているもの

④染色図案等実用品の模様として利用されることを目的とするもの

 

 

これらが著作権制度審議会答申説明書

にあるようです。

 

応用美術は、

「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」

に入るか否かという、条文の規定から、

判断が難しいものとされています。

 

美術とあるだけに、美術の範囲に

入りそうですよね。

 

また、物品等の形状でもあれば、

意匠法での保護も可能となります。

 

権利者側から見れば、

意匠権著作権の両方で

保護しちゃえばいいじゃん!?

 

となると思います。

 

被疑侵害者側からすれば、

反論も大変だし、

一つにしてよという

ことかもしれません。

 

権利者側、被疑侵害者側

の観点から応用美術が

問題となっているわけでは

ありません。

 

立法趣旨の観点から問題

があるのですね。

 

保護対象

 

意匠法も著作権法も、

創作物を保護する法律です。

 

ここは一緒です。

 

ただ、与える保護が違うのです。

 

保護の方法

 

意匠権では、製造、使用、譲渡、

譲渡等の申し出、輸出、輸入の

差止等ができます。

 

著作権法では、複製から翻案まで

と、意匠権とは異なる行為を

差止等することができます。

 

実用品を意匠権で保護することは、

意匠法のもともとの趣旨ですから、

問題になりません。

 

実用品を著作権法で保護すると

なると、問題が生じます。

 

実用品が著作権で保護される

となると、

 

たとえば、椅子を例に挙げます。

知財関係者は椅子の例が大好きです(笑))

 

椅子

 

使わなくなった子ども用の椅子を

メルカリで売ろうとするとき、

どうしますか?

 

出品する、子ども用の椅子を

写真に撮りますよね。

 

傷の状態、椅子の色も、

新品時とは異なるでしょうから、

販売元のHPから画像の拝借を・・・

なんてしてはいけませんよ!!!

 

その画像は、写真撮影されている

でしょうから、写真の著作物である

可能性があります。

 

複製すれば、複製権侵害です。

 

さらに、

実用品に著作権があるとすると、

その実用品を写真にとることも

複製に当たりますから、

 

複製権侵害です。

 

こんな社会になったら生活

しにくいですよね。

 

こんなことも想像できちゃうから、

実用品(応用美術)を著作権

保護することがためらわれるのです。

 

みなさんでしたら、

どのような不都合な生活を

思いつきますか?

 

現状では、応用美術を著作権で保護する

場合でも、デッドコピーぐらいでないと

保護されなさそうです。

 

保護期間

 

意匠法での保護期間は、

出願から25年です。

 

また、著作権での保護期間は、

著作者の死後70年までです。

 

この期間の長さの違いも

問題視されています。

 

創作の保護は、

奨励と保護のバランスから

25年程度がよいとのことで

現行の規定になっています。

 

ところが、著作権で保護される

実用品が、著作者の死後70年

まで保護されるとなると、

どうでしょうか。

 

不都合があった場合に、

不都合な生活が少なくとも70年

は続いてしまいます。

 

解決策は!?

 

ありません。

どこの国も応用美術については

苦労しているようです。

 

まとめに代えて本日の痒い所

 

  • 応用美術は、意匠法による保護、著作権法による保護の両方が考えられる

 

  • 一部の実用品に、著作権法による保護を与えてしまうと、長らく不都合な生活を強いられる可能性があるので、保護されるのはデッドコピーからぐらい

 

  • どこの国も応用美術については苦労しているよう

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今週も知財の雑談を楽しみましょう♪

今週も著作権の雑談はいかがでしょうか?!

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