今回は、
美術の著作物について
見ていきましょう。
仏壇彫刻事件です。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/301/014301_hanrei.pdf
仏壇彫刻などは、
繊細な模様などが
描かれており、
伝統的に
著作物になりそう
なきがしますね。

美術は、
純粋美術と
応用美術とに
大きく分かれます。
判決文にも
記載があります。
一般に、美術は、(1)個別に製作された絵画・版画・彫刻の如く、思想または 感情が表現されていて、それ自体の鑑賞を目的とし、実用性を有しない純粋美術 と、(2)実用品に美術あるいは美術上の感覚・技法を応用した応用美術に分かれ、後者すなわち応用美術はさらに、(イ)純粋美術として製作されたものをそのまま実用品に利用する場合、(ロ)既成の純粋美術の技法を一品製作に応用する場合(美術工芸品)、および、(ハ)右純粋美術に見られる感覚あるいは技法を画一的に大 量生産される実用品の製作に応用する場合等に細分されていることは周知のところ である。
判決文は、
さらに応用美術を
イロハの3つに
分類しています。
ここまでは周知だ
そうです。
イロハの3つすべて
覚えるのは、
ちょっと大変ですね。
さて今回の事件ですが、
仏壇彫刻と聞けば、
木彫りをイメージ
するのですが、
原告はプラスチック製
の仏壇彫刻を長年
研究して、市販するように
なったようです。
原型からシリコンゴムで
型枠をとり、その中に
ポリエステル樹脂を注入
して製作しているようです。
なるほど、美術においては
画材などを変えて、
表現に幅を持たせます。
画材が違えば、
形成できる文様や形状も
変わってくるように
私のような美術の素人でも、
思います。
判決文には下記の記載が
あります。
右原型の考案に際しては、多年に亘り、多くの古文書および古典仏壇彫刻を網羅し参考としつつ、仏壇彫刻師としての美的感覚と技法を駆使し、既製仏壇を模写することなく特異の美的表象を創案すべく、殊に型枠使用による大量生産にも適合するように配慮しながら、右彫刻の紋様を立体的、写実的に精巧かつ端麗な表現を表象 するよう、独自の執刀方法で描くことに苦心したすえ、独自の創意による本件彫刻 (原型)を完成したこと、以上の事実が認められ、後記措信しない証拠(人証)を 措いて、他に右認定に反する証拠はない。
画材が変わった場合には
表現の仕方も変わらざるを
得ず、
個人の思想または感情
が入りやすそうです。
被告の主張もそうだな
と思うところはあります。
もつとも、被告は、仏壇彫刻の紋様は古来より特定のものに限局され、永年にわたりこれを模写してきたものにすぎず、製作者により殊更創作的に表現されうるものではない、と主張している。
創作性が現れた
部分はどこなのか
問うているように
思えます。
しかしながら、著作物の創作性は当該著作物が著作者の独自の創意工夫により著作されたか否かにあり、その表現形式等において先人の影響が存したからといつて直ちにこれを否定されるべきではなく、具体的著作物がその模写ではなくそこに知的創造活動が認められるときは、その著作物に創作性を肯定すべきものと解するのが相当である(したがつて、著作権における創作性は相対的なものであり、工業所有権における創作性の如く新規性すなわち絶対的な独創性を要しないといわねばならない)。
創作性は、
独自の創意工夫があり、
独創性まで要求している
わけではありません。
あとは、表現であること、
美術の著作物に属するのは
間違いなさそうですから、
この仏壇彫刻は、
著作物であると
判断されています。
まとめに代えて本日の痒い所
- 応用美術はさらに、(イ)純粋美術として製作されたものをそのまま実用品に利用する場合、(ロ)既成の純粋美術の技法を一品製作に応用する場合(美術工芸品)、および、(ハ)右純粋美術に見られる感覚あるいは技法を画一的に大 量生産される実用品の製作に応用する場合等に細分化される
- 創作性には、独創性までは要求されない
- 美術においては、新しい材料で創作活動をした場合、表現が新しくあり、創作性が認められる方向に判断が変わりそう
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今週も知財の雑談を楽しみましょう。
今週は、美術の著作物について雑談するのはいかがでしょうか。

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