IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

商標「投げ銭」「そだねー」「ワンチーム」[KM]

ドワンゴが「投げ銭」商標登録「独占する意図はない」

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/06/news137.html(引用元ITmedia NEWS)

投げ銭のイラスト(ギターケース)

ニコニコ動画で有名なドワンゴが「投げ銭」を令和2年7月に商標登録しました。「投げ銭」とは、元々は、大道芸やストリートミュージシャンのような、何らかのパフォーマンスをする人への称賛を兼ねた少額の金銭の投げ入れを行う行為の事であり、それが転じて、インターネット上におけるユーザーの任意の金銭(およびそれに該当するギフト)提供及びそのサービスの名称(ギフティング)となった言葉です(Wikipedia参照)。

引用元の記事によれば、今回の商標登録の目的は、「悪意のある第三者が商標を登録して単語の使用が制限されることを防ぐこと」だそうです。すなわち、ドワンゴ自体が「投げ銭」の商標を独占することを目的としたものではないようです。 

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似たような例として、平昌冬季五輪のカーリング女子(LS北見)が使用して流行語となった「そだねー」も以前に商標登録出願がされました。このときは、六花亭製菓株式会社や、LS北見と縁のある北見工業大学生活協同組合などを含めた複数の出願人から出願がありました。

なお、こちらの件については、いずれも商標登録はされませんでした。北見工業大学生活協同組合は、「特定企業による独占回避を目的」としていたことを公言しており、この結果(そだねーの商標権を有する者が存在しないこと)には満足しているとのコメントを出しています。上述したドワンゴと同様の考えで出願を行っていたことが分かりますね。一方、他の出願人は、どのような意図で出願をしていたかは定かではありませんが、世間からの批判が結構あったようです。

 ラグビー選手のイラスト(男性)

流行語といえば、最近ですと、「ワンチーム」という言葉もありましたね。こちらの商標登録出願の状況を調べてみると、17件の出願のうち7件が登録済み、10件が審査待ちの状態でした(2020年8月下旬時点)。登録済みの7件は、いずれもラグビーワールドカップ2019の開催前に登録されており、「悪意のある第三者」ではないようです。

なお、審査待ちのうちの1件は、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会によるもので、2019年11月22日に出願されています。ラグビーワールドカップ2019の決勝が2019年11月2日に終わっていることから、その後に同協会から出願されたのでしょうね。登録されるといいのですが、果たしてどうなるのか。

 

今回紹介した「投げ銭」(特定のコミュニティで使用される用語)、「そだねー」および「ワンチーム」(流行語)等の言葉は、悪意のある第三者に登録されると、その言葉を使用しにくくなる状況を作ってしまうことにつながりかねません(実際には、指定商品や指定役務が異なっていれば問題はないのですが)。なので、もし自分が流行語を作ってしまった場合、もしくは、自分が作った言葉がこれから流行語になってしまうと思った場合には、早めの商標登録をしておきましょう!…いらぬ心配ですね。