IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

弁理士「弁理士試験合格後の進路~とある研究員の場合~」[マータ]

弁理士試験の短答試験を受験された皆様、本当にお疲れ様でした。

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弁理士試験は、働きながら受験される方が多いみたいですね。中でも会社員と特許事務所勤務の方が大部分(7割以上)を占めるようですね。

 

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 私の受験仲間も、企業の知財部(法務部)や研究開発職の方が多かった印象です。弁理士試験合格後の進路としては、知財部の方は、そのままの部署で勤務を継続し、研究開発職の方はキャリアチェンジする人が多かったです。例えば、以下のようなパターンがありました。

 

①同じ企業の知財部に異動する

②他の企業の知財部に転職する

③特許事務所に転職する

④研究開発職を続ける

 

 多分、弁理士登録を考える人は①~③を選択する場合が多いかと思います。一方で、私は④を選択した研究員です。本日は、自分を例に挙げて弁理士試験合格後の進路~とある研究員の場合~」についてお話したいと思います。

 

脳の研究をしている科学者のイラスト

 

 1. 弁理士試験を受けたきっかけ

 理由の一つは、「あこがれの人が弁理士だったため」です。その方は、海外の某名門大学で博士号をとった研究のエキスパートでありながら弁理士資格も持っていました。研究室で生み出された成果に対して、知財保護の観点から色々と策を講じている姿になんとも言えないかっこよさを感じました。この体験から、「技術と法律がミックスされた世界」に魅力を感じるようになりました。また、弁理士が理系で最難関の資格であることを知り、せっかく理系にいるのなら是非挑戦しようと思いました。

 

2. 研究員を続けている理由

 一つは、「まだまだ研究が楽しいから」です。研究は、地道な作業が多いですし成果が出ないときはとても苦しいですが、実験がうまく進み始めた時や、他の研究者とのコラボでシナジー効果が得られた時論文が雑誌に掲載された時、自分の担当した製品が世に出たと時、などやりがいを感じるときもたくさんあります。十分な資金が確保されている企業で研究できる機会は非常に貴重なので、研究ができるうちは思い残すことがなくなるまでやりつくしたいと考えています。また、大変ありがたいことに今の会社が、私が研究員であるにも関わらず弁理士登録費用などを負担してくれていることも研究を続けている理由の一つです。

 

3. 研究員が知財の知識をもつメリット

 弁理士資格を登録していること自体のメリットはそこまで大きくないですが(弁理士資格が必要な代理人業務などを行うわけではないので)、個人レベルでいえば弁理士会主催の様々な研修会への参加」「社外の知財関係者との人脈形成」などが挙げられ、会社的には「それらを通じて得た知識や情報を会社に還元すること」などが挙げられると思います。

 あと、資格とは直接関係ありませんが、研究員に知財の素養があると、自社知財部員や特許事務所の先生と高いレベルでの打ち合わせが可能となります。また、特許を取得する観点で実験を行うことができるので、効率的なデータ取りが可能となります。特許の拒絶対応に関しても、引用文献についての理解スピードが早いため対応がスムーズになります。あと、自分や自部署の研究成果を適切に保護するにために、特許の色々な制度、例えば「早期審査」「分割出願」「優先権の主張」などの利用を考慮しながら日常の研究業務を進めることができる点も利点かと思います。他の研究員にとっても、身近に知財に詳しい人間がいると気軽に色々と聞きやすいようです。

 

4. デメリットについて

 上には、調子に乗っていろいろとメリットを挙げましたが、やはり研究と特許を両方担当することのデメリットもあります・・・・。仕事として研究と特許の権利化業務(特許出願、拒絶対応など)を行っているのでその業務にはある程度強くなりますが、弁理士としての専門技術分野は広がりにくいです(自分の専門技術分野ばかり扱うので)。また、権利化業務以外の「契約」「訴訟」などに関する知識やスキルもなかなか高める機会がありませんし、「商標」「意匠」「著作権」などの知識に関しては、弁理士試験合格後はどんどん抜けていってしまっています。これらの点は、研究をメインの業務にしている以上しかたないことかもしれませんが、「自分って中途半端だなー」と思うことがよくあります。

 

5. まとめ

 以上、色々と書いてみましたが、現在の自分の仕事内容には非常にやりがいを感じています。なんといっても自分の発明を自分で出願し、権利化していくというのは非常に面白いです(特許事務所の先生のお力はおおいに借りていますが!)。あと、個人的には、弁理士という資格のおかげで、社外の色々な先生と繋がれたことが自分の人生にとって非常によかったと感じています(一番のメリットかもしれません)。ということで、今回は以上になります。こういうキャリアを進んでいる人間もいるよということで記事を書かせて頂きました。

 機会があれば、私とはまったく専門や働き方が異なるMIさん、YOさん、KMさんにも弁理士という資格の魅力やキャリアについて、いつかお聞きしたいなーと思います。是非よろしくお願いします!