IP RIP ~チザイの雑談~

知的財産(Intellectual Property)の「かゆいところに手が届く(Reach the Itchy Place)」お話です。

著作権「ポケモンカードゲームからの知財あれこれ」【MI】

こんにちは。

突然ですが、「ポケモンカードゲーム」ご存じですか。外出自粛での巣ごもり需要で、とても流行っているようです。

www.pokemon-card.com

私も、まず息子(小4)がハマり「パパも対戦しよう!」というのでやってみたところ、見事にハマってしまいました。最近は、息子やその友達を蹴散らしては、嫌われています。

というわけで、今回はこの「ポケモンカードゲーム」から知財について考えてみたいと思います。

 

 

カードはコピーしてもいいの? ~カードは「著作物」~

対戦に勝つためには「強いカード」が欲しいところ。でも、そういうカードは単品で買おうにも高くなりがちです。例えば、コレ↓

ボスの指令(サカキ)

出典:ポケモンカードゲームHP(www.pokemon-card.com)

1枚700円くらいします(2021/3/31現在、@メルカリ)。子どもと私とで3枚ずつ買うと「700×3×2=4200円」!!私のお小遣いではキビシイ、、、

ということで、コピーカード(プロキシ)を作ってみました↓

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ポケモンカードゲーム「ボスの指令」より複製・引用

実物を少し縮小コピーして、不要なカードに貼り付けました。子どもと対戦する分にはコレで十分!

でもちょっと待てよ。カードは「著作物」(※)。となると、原則、複製(コピー)はNGでは。。。

(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

※少なくとも「絵柄自体」または「絵柄やテキスト等の配置含めたカード全体」として著作物性が認められます。

 

どんな場合にコピーOK? ~「私的使用」の範囲~

これに対して、著作権法では例外として、「私的使用」を目的とする場合の複製(コピー)をOKとしています。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

では、「カードの複製(コピー)」についてどこまでOKか、考えてみましょう。(いずれも、コピーカードを作る人(複製者)は「私(自分)」とします。)

(1)家で私が息子と対戦するため

 ⇒これはOKです。

(2)息子が友達と対戦するため

 ⇒使用者(息子)と複製者(私)が異なりますが、OKではないでしょうか(特に、息子が未成年者である場合)。ただ、息子がカードを使用する場所によってはNGとなる可能性があるかもしれません。例えば、友達の家で数人で対戦する程度ならOKですが、お店で不特定の人を相手にする場合はNGになり得ます。注意しましょう。

(3)息子の友達にプレゼントするため

 ⇒これはNGになる可能性が高いです。まず、使用者(息子の友達)と複製者(私)が明確に違います。また、その友達がどこで使うかも分かりません。友達のご両親に迷惑を掛けないためにも、欲しがられてもプレゼントするのは止めましょう。

(4)作成したカードを販売するため

 ⇒これは完全にNGですね。数回、メルカリでコピーカードを売っている方を見かけたことがあります。すぐに削除されていました。

 

参考:特許等との違い ~「業として」の要否~

上記のパターンで勘違いしやすいのが(3)のOK/NGの判断でしょうか。「(4)がNGなのは分かるけど、(3)はNGなの?」と。特に、特許法等を少し知っている人は勘違いしがちです。ちょっと特許法を見てみます。 

特許権の効力)
第六十八条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。

要するに、特許法では「業として」の実施でなければNGではありません。そうなると、息子の友達(少数)にプレゼントする程度(上記(3))はセーフになります。

ドラクエで例えると、上記(3)のパターンは、特許法的には「そもそも毒の沼地(特68条)に入っていないからセーフ」となり、著作権法的には「毒の沼地(著21条)にトラマナ使って入った(「私的使用」と思った)けど、切れちゃってアウト」みたいな感じでしょうか。(余計分かりにくい、、、)

 

他の人のデッキをマネしてもいいの?

ところで、ポケモンカードゲームでは60枚1セットのカード(デッキ)を使って対戦します。強いカードを入れるのも大切ですが、どんなカードを組み合わせるかが重要になります。

ネット上には、このようなカードの組み合わせ方(デッキレシピ)がたくさん公開されています。

www.pokemon-card.com

これらのデッキレシピをマネしてデッキを作るのはOKなのか?

結論からいえばOKです。そもそも、デッキレシピ(カードの組み合わせ情報)自体は著作物ではなく、その通りにデッキを作るのは問題ありません。

 

「デッキレシピ」を利用する場合の注意点

ただし、以下の場合はNGですので、注意が必要です。

(1)デッキレシピの紹介のための画像を複製等する
(2)デッキレシピの説明等の文章を複製等する

要するに、デッキレシピ(カードの組み合わせ情報)自体は著作物ではないですが、それを紹介等するために作成(創作)された画像や写真、文章は著作物なので、それらを複製等することはNGになります。デッキレシピをSNS等で紹介する場合は、自分で作成した画像や文章を使いましょう。

 

おわりに

トレーディングカードって思ったよりお金が掛かりますね。。。コピーカードについては、子どもは「偽物だ!」と言って嫌がるのですが、節約のため妻が発案しました。そういう意味では、お金のために安易に複製に走る我々大人が、まず著作権について勉強しないといけないと思います。

ちょっと面白いネタも見つかったので、次回も引き続き「ポケモンカードからの知財あれこれ」で、著作権&商標について書いてみたいと思います。よろしくお願いいたします。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!